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ツイートまとめ 異世界小話~異世界に召喚された普通の兄妹その他がチート無双する話・前篇~ 駆け抜けるハットマンズショー 他の小話は異世界小話タグで 2695 pv 4
帽子男 @alkali_acid
◆◆◆◆ 最強の冒険者集団「地獄の猟犬団」は、迷宮のある街の中心に集っていた。 全員ではない。だが十分と、意気は高かった。 すぐ目と鼻の先は、魔物が陣取る寺院の跡地。呼び出しの大釜という不思議な財宝があまた並ぶ場所。世界の異変をもたらした根源だ。 「来た来た来た来た来たぁ!」
帽子男 @alkali_acid
冒険者として最高位階、白金紋章を持つ青年、視目(みるめ)は、得物である鎖付きの鉄球を周囲に浮かばせながら、嬉しそうに叫ぶ。 「おっぱじまるぜお前等!」 対照となるように、白銀紋章の仲間二人はだるそうだ。 「なーんでそんな元気かな」 「ほんとになあ」
帽子男 @alkali_acid
しかし両脇を固める一対の巨漢、牛頭と馬頭もすでに準備は万端整えている。 「さっきの揺れ…」 「うん。いよいよって感じだなあ」 言葉を裏書きするように、魔物達があふれてくる。正面から。拍子抜けするほど小さな、ただし見た目よりずっと力のある羽耳鼠、それに翅が虹にきらめく蜻蛉鶯。
帽子男 @alkali_acid
いつもならずっと鈍い動きの屍食いくわがた、喧嘩っぱやい剃刀えい、気が立つと手をつけられない毒針むささび。魔物、魔物、魔物、魔物。 迷宮で出くわすありとあらゆる奇々怪々のやからが、続々と潮のごとく押し寄せてくる。
帽子男 @alkali_acid
「すげえ数だぞ!」 「視目!やんのか!」 「こっちにかかってこねえ雑魚はほっとけえ!相手するのはおまわりだの、ほかの冒険者ども…へ、そんなのが生き残ってりゃだが…俺達はほかがさばけねえ大物をやる!」 白金紋章の、一応のまとめ役らしい采配に、白銀の方はほっとしたようすだ。
帽子男 @alkali_acid
「視目。けっこうさまになってんじゃん」 「白金紋章はだてじゃないみたいだな」 「一皮むけたっていうか?」 「案外あの、タイとかいう美人の魔物のおかげだったりしてな」 「うしし」 鉄球使いは怒鳴りつける。 「たるんでんぞお前等!」
帽子男 @alkali_acid
魔物、迷宮上層から中層に住む有象無象は、地獄の猟犬団を格上と知ってか、まるで水の流れが巌にあたって分かれるがごとく左右に避けていく。 続いてあらわれたのは猪熊、飛蜥蜴、水晶亀といった鋼鉄紋章でも手を焼く化生の類。しかし視目はまだ手を出さない。じっと前方をにらみすえたままだ。
帽子男 @alkali_acid
「あいつらも行かせるのか?」 「おまわりどもじゃ手こずるぜ…」 「…せいぜい気張らしとけ」 迷宮の氾濫にはとめどがないようだった。 獰猛きわまる酸毒いか、血に飢えた引き裂き狒々、ほとんどの攻撃が通じない鎧蛇、三つ首獅子までもが登場する。 「うわ…三つ首獅子の群だぜ」 「初めて見らぁ」
帽子男 @alkali_acid
鎧蛇は迷宮下層でもかなり奥にいる敵だ。 鎌首をもたげ、いきなり先鋒の青年に噛みつこうとしたが、じぐざぐの軌道を描く飛び道具が鼻づらを叩くと、怒りの叫びを上げつつも奔流に戻っていった。 「ほんとにいいのかよ…あんなの…白銀紋章じゃなきゃ勝てねえんじゃ」 「おう…しかも数が数だ」
帽子男 @alkali_acid
「おまわりどもも数だけはいんだろ!…へ、どんくらい死にぞこなってるのか、逃げ出さずにいるのか知らねえけどな…さあ、そろそろだぜ」 視目の言葉通り、真打があらわれる。迷宮最深部の住民。 螺旋梟、大三脚、死黴雲、首吊り樹。 「俺達の相手だ…とりあえずな」
帽子男 @alkali_acid
「げー…冗談じゃねえよ」 「一番めんどくさいの選びやがって」 最深部の魔物は、地獄の猟犬団を認めるや否や、まったくためらわずに襲い掛かった。 螺旋梟が竜巻を起こすのと、鉄球が風を裂いて渦の中心にめり込むのは同時だ。 「おらあああ!!!」
帽子男 @alkali_acid
大三脚が、四、五匹、長い肢を操って近づいてくる。三つの肢がつながる根元にある頭は伸縮する多面体で、触れるものをまっぷたつにする光線を乱射してくる。 馬頭がため息をついて進み出ると、たすきをかけた上半身をさらし、両腕をかかげる。うっすら輝く函が、味方を包み込む。
帽子男 @alkali_acid
あまり頑強そうでもない結界は、しかし多方向から斬りつけ、突き刺そうとする極細の耀う刃をすべて反射し、かえって敵をばらばらにしてしまう。 「もいっちょ」 もっと小さな函が、死の黴をまきちらそうとしていた気体状の魔物を閉じ込めて動けなくすると、そのまま首吊り樹の洞に叩き込む。
帽子男 @alkali_acid
「牛頭ぅ。お前も働けよぉ」 「分かってるよぉ」 巨漢の片割れが、持っていたふくべの栓を抜く。 「出ろぉ」 いきなり業火が、もがく巨大植物を包み込み、さらに広がってほかの魔物も飲み込み、焼き尽していく。 「あー出た出たすっきり」
帽子男 @alkali_acid
「やりすぎだろ?まだ敵はいっぱいくるんだぜ」 「えー、でもさあ。街中の火事をかたっぱしから吸い込んできたんだぜ。もう限界だよ…まあいいや…ほら、吸え」 後続の死黴雲の群が放つ瘴気を、ひょうたんはあっという間に吸引する。本体ごと。 「視目ぇ?まだ終わんないのぉ?」 「遅くねぇ?」
帽子男 @alkali_acid
「るっせええ!」 白金紋章は、疾風をかいくぐりながら、爆発する鉄球を縦横無尽に振るい、七枚の翼と多眼を持つ魔物を追い詰めていく。 「気が散んだよ!さっきの中じゃ、こいつが一番強ぇのは知ってんだろうが!ひまなら手伝え!」 「はいはい」 「素直にそういえばいいんだよ」
帽子男 @alkali_acid
螺旋梟の進路に小さな函が無数に飛んでいく。それらは風を操る魔物の勢いをそぎ、さらに消えると同時に黴を解き放った。 人間なら即死の猛毒をくらい、苦悶に無数の眼が血走る。 「おっるあああ!!」 鉄球が数発同時に命中し、炸裂が最深部の強敵を肉塊に変える。
帽子男 @alkali_acid
「手間どるなあ」 「ヒロがいれば一瞬で終わってたよ」 「あと嗅鼻」 「ついでに犬達」 「るせえ!ここは俺達がやるんだよ!次来た!次!」
帽子男 @alkali_acid
牛頭と馬頭がそれぞれ陰りを帯びた鉈と、かすかに麝香じみた匂いを放つ柄の短い刺叉(さすまた)を抜いて、巨躯からは想像もつかぬすばやさで敵をしとめる。視目は靴の踵にしこんだ霹靂を放つ石に尾を引かせながら、回し蹴りで数匹を一度に片づける。
帽子男 @alkali_acid
「お前等!何また強くなってんだよ。俺がかすむだろうが!」 「なってないよ」 「そうそう。最近は戦っても野盗ぐらい」 「嘘つけ!黄金紋章ぐれえにはなってるぞ!」 「えーなってないよなー」 「ねー」
帽子男 @alkali_acid
視目、牛頭、馬頭は互いの背を守る陣形でまた集まる。 魔物はさらに数を増している。見おぼえのないものもいる。 青い炎と赤い氷の巨人などだ。 「へ…まあよ。お前等とまたこうして戦えてうれしいぜ」 「あーそれヒロに言ってほしかったなー」 「視目じゃなあ」 「ったく!盛り上がらねえ!」
帽子男 @alkali_acid
◆◆◆◆ 寺院跡地からおおまかに西。街が動員できるだけの兵馬を指揮する仮本営では、騒ぎが広がっていた。 「連絡網がとだえただと」 最長老が白い眉をもたげて目を丸くする。 「は、さきほどの大地の揺れと前後して…急に…生きた鎧も動かず…」
帽子男 @alkali_acid
「迷宮からあれらの財宝をもたらした、地獄の猟犬団の…ヤマダサンの身に何かあったな…すると大釜も使えんか。まずいことになったな」 吟詩が武器であり楽器である竪琴をさすりながらつぶやくと、車椅子の中で羽耳鼠が不安げに鼻をうごめかす。 「問題ありません」 そばで火傷の衛士隊長が応じる。
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