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新しく公開しました #14 「進」~冬装備と祓いの加護 - フォビドゥンフォレスト - カクヨム kakuyomu.jp/works/11773540…
2018-02-01 02:35:54(前回のあらすじ:一連の騒動の影にいた敵組織の名は『ケイローンの弓』、不老不死を求めて非合法な人体実験を繰り返している組織である。僚勇会の隊長級会議で彼らの詳細が明らかにされていく。彼らは半年前にノルウェーでの戦いでも使用した寄生虫型魔獣により妖怪を操っていたのだ)
2018-02-04 22:54:52(その彼らは今、古民家が変じた妖怪『迷い家』を操って移動拠点として森の奥に潜伏している。彼らへの対策を立てるべく、ノルウェーで彼らと交戦経験のある少女、リリア・リースが紹介された。彼女は偶然にも今回事前に調査のために英国から派遣されていたのだった)
2018-02-04 22:59:155話までのあらすじ - Togetter togetter.com/li/1186476 前回: 6話「フォビドゥンフレイム」#4「森に潜む悪意」 togetter.com/li/1194245
2018-02-04 23:02:27リリア・リース。片桐たちと同じ高校一年生である。厳密に言えば、もうすぐ二年になる片桐たちと去年の秋に一年になったばかりの彼女では半年ほどズレているのだが、ともかくその若さで既にウォーロックハンターとして熟練の域に達しており、国家転覆も可能な規模の組織を単独で潰したこともある。 1
2018-02-04 23:08:10身長はイギリスの同年代でも高めの170cm近く、明るい金髪を後ろで二本に束ねている。整った容姿にモデルのような体型からは一見、高い戦闘力を持つようには見えない。それでも見る者が見れば、少なくともスポーツか格闘技を嗜んでいるのだろうと伺える程度には鍛えた様子が見て取れる。 2
2018-02-04 23:20:43物腰も堂々としており、異国の大人たちの前でも緊張した様子はなく、むしろ楽しげに見える。このような大人慣れした態度は片桐たち風科の若手も同じだが、このような会議の間に外国の少女を招くのは、隊長たちにとっても異例のことで、むしろ彼らのほうが緊張していたかも知れない。 3
2018-02-04 23:20:55そのリリアは確かに優れたハンターではあるが、僚勇会は意図して彼女を呼んだわけではない。そもそもクロスロード大学から帰国する望の護衛兼監視には僚勇会から人を出す予定だったが、そこで起きたのが二週間前のバケグモ騒ぎだった。次々と事件が起こり、海外に迎えを出す余裕が無くなった。 4
2018-02-04 23:24:29同時に、調査のためウォーロック退治の専門家も必要となった。当初から人の関与を疑っていたのだ。だが更に国内の魔術組織には既に常ならぬ支援を受けている。彼らへの借りを増やさない為に、英国にあるクロスロードに望の件と合わせて人材の紹介を依頼したところ……リリアが来たのだった。 5
2018-02-04 23:29:33OBか非常勤講師辺りを派遣して貰えると思っていたところに、現役生徒が来たのは予想外ではあったが、若手ハンターで常に五指に入る戦績の彼女が在籍しているのなら確かに適任ではある。彼女は空港で望を(彼の知らぬまま)引き渡した後の一週間、日本国内を調査してくれていた。 6
2018-02-04 23:35:41「ケイローンの前にまずその調査の結果ですが、少なくとも日本の大組織が今回の件に関わっている形跡はないですね」 「でも、結構な広範囲から人を攫って森に放り込んだみたいだぜ。土地勘のない外国の組織だけでやれたのか……ですか?」 立森は言い直した。相手は年下とはいえ、外部の人間だ。 7
2018-02-04 23:43:42リリアは微笑んで両腕を組んだ。胸が持ち上がる。 「今は便利なものがありますから、無作為に人を攫うだけなら土地勘はあまり要らないと思いますよ」 「あ、そうか。ネットの地図があったか!……どうも若者文化は苦手ですま……すみませんね」 立森は頭を掻く。 8
2018-02-04 23:48:17「若者は関係ないでしょう?」 「あ……はい」 紹子に指摘された立森がしょんぼりと座る。彼女の夫がネット関連の仕事をしていて、立森はそれを思い出したのだ。周りから静かに笑いが起きる。 「すみません。身内ばかりの組織なもので、どうにもノリの緩い部分があって」 9
2018-02-04 23:59:31紹子は面白そうに見ていたリリアに謝る。 「あ、いえいえ。むしろお静かな方ですよ。それにしても……明るいところで見るとますますお美しいですね」 「あら、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」 「とんでもない。人妻でなければお茶にお誘いしたかったですわ」 リリアがうっとりと微笑む。 10
2018-02-05 00:05:17「えっと……」 「あー……良いですか?」 反応に困る紹子への助け舟を兼ねて幸川が手を揺らし気味に大きく上げる。 「あら、どうぞ」 「どうも。失礼ですが、調査というのはどのように?」 「……?」 リリアは首を傾げた。 「基本、聞き込みと殴り込みです」 「へぇ……殴り込み!?」 11
2018-02-05 00:10:44一同は驚いたが、リリアは平然と話を続けた。世界中のウォーロックを倒して賞金を稼ぐ彼女には、日本国内にも知り合いは多い。まずは同業者や僚勇会同様の各地の魔術組織に聞き込みをして、ウォーロックの動向を探り、その上で最後は殴り込んだというのだ。 12
2018-02-05 00:15:05流石に無秩序に犯罪組織のアジトに突撃した訳ではない。表の世界のマフィアなどと同様、迂闊に大物を突くと一般人を巻き込んだり、倒した後でその地域に、より凶暴な別の組織が流れてくることもありうる。元々彼女たちハンター向けに討伐依頼が出ている組織を狙って殴り込みに行ったのだ。 13
2018-02-05 00:20:04「それで成田からこの辺りまでいくつか行きましたけど、やっぱり風科周辺で動いた国内の大組織はなさそう、という結論になりました」 その『殴り込み』で百人弱を捕獲もしくは殺害し、大組織の支部や小組織丸ごとを複数壊滅させたことはわざわざ触れずに、リリアは結論だけを改めて告げた。 14
2018-02-05 00:26:20「なるほど……分かりました」 こちらも『では、小組織の関与の可能性はないのか?』とは聞かない。ウォーロックは常人のテロ組織とは違い、数人規模でも脅威となりうる。そういった小組織な組織が多いのだ。その全てを把握しろというのは、同じウォーロックだろうと無理な話だ。 15
2018-02-05 00:33:45「それじゃあ、ケイローンの弓だかの単独犯行ってことか?」 「ああ、それも少し怪しいんです。敵の死体なんですが……映像出ます?」 リリアは紹子と横にいる衛守を見た。隊長たちは身構えた。仕事柄、妖怪の犠牲者の遺体を見ることは年に何度かあるが、慣れるものでもなければ見たくもない。 16
2018-02-05 00:41:46空気を察した紹子は首を振った。 「いえ、遺体そのものは映しませんのでご安心を。問題は遺留品です」 部屋の照明が落とされ、再びスライドが映る。ペンダント型のアミュレットが複数映し出された。 「なるほど、コイツは……」 雷牙が唸る。 「ケイローン以外も関わっているか」 17
2018-02-05 00:54:05「えっ?」 若い隊長が雷牙のほうに顔を向けた後、再び画面を見直す。よく見ればアミュレットには複数の種類がある。かと言って全員が違うわけでもない。同じ作りらしきものもある。 「ウォーロックに限りませんが、同じ魔術組織は同系統のデザインの装備を使うことが多い傾向にあります」 18
2018-02-05 00:58:50