ポパーと寛容のパラドックス、その誤用について

ある種の主張に対する表現の自由を否定する際に、『哲学者、カール・ポパーの寛容のパラドックス』と題した画像が持ち出されることがある。それについての青識亜論氏による指摘を記録する。
寛容のパラドックス ヘイトスピーチ 表現の自由 政治 自由主義 民主主義 カール・ポパー 青識亜論
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青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
『自由社会の哲学とその論敵』からの抜粋ですね。しかしポッパーは同じ部分で、合理的な論議で反論できる限りにおいて、不寛容な哲学を口にすることを法で禁止することはきわめて愚かしいものであるとも述べています。 twitter.com/PachelbelCanon…
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
「たとえばわれわれは不寛容な哲学を口に上せることをいつも禁止すべきであるという意味を含ませはしない。われわれはそうした哲学を合理的な論議で打ち返し世論によって掣肘をすることができる限り、禁止は確かにきわめて愚かしいことであろう」と。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
ポッパーは不寛容な人々が「拳固やピストル」で自らの教説を押し付け、反対者の自由を禁じようとしたときについて、「不寛容なものたちを寛容しない『権利』を要求するべきである」と述べるものです。そしてまた、ポッパーは民主主義の完成がそうした逆説を克服するとも予言しています。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
ポッパーの哲学の寛容なところは、自由な批判の応酬によって、人は正しい道へと少しずつ近づいていけるのだと示したことです。「自分が間違っていてあなたが正しいのかもしれない。そして努力すればわれわれは真理にもっと近づけるであろう」という標語とともに。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
ポッパーはこうも述べています。「自由の敵たちはいつのときも自由の擁護者に破壊の罪名で非難してきた。」ポッパーは民主主義に多大な信頼をよせた哲学者の一人であり、彼の言っていることは、まず対話を行うということです。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
というか、該当する箇所がどこかわからず、この分厚い本を最初からずっと読み通すはめになりました……まさか注釈の抜粋とは……。 pic.twitter.com/bgiGyvW2Rg
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青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
ちなみにいちおう付言しておきますと、当該書でポッパーが自由の敵として批判しているのは、ヘイトスピーチというよりもマルクス主義です。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
自由主義をあれほど愛したポッパーを援用して、あたかも表現規制を肯定したかのように述べるのは絶対許せないので、何度でも反論しますよ。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
前にも書きましたが、ポッパーが想定した「不寛容」の中身は、マルクス主義による共産党独裁が想定されています。したがって、当該部分を援用して言えるのは、暴力革命を引き起こすような思想に対する不寛容であって、ヘイトスピーチのことではありません。
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
いいえ。そうは思いません。革命を説くような思想であろうと、表現の自由は認められるべきです。ポパーの場合、東西冷戦の真っただ中で、共産主義革命の脅威が身近なものとしてあったため、「注釈」を付けざるをえなかったのでしょうが、私は余計な付け足しだったように思います。 twitter.com/fi6qfZdzIfMK1m…
青識亜論(せいしき・あろん) @dokuninjin_blue
もちろん、これは歴史を知る者の傲慢で、後知恵にすぎません。私は持てる思想的な力のすべてを注ぎ込んで自由を擁護した哲学者・ポパーに、心の底から敬意を払いたいと思います。

コメント

サイチュウ @eseyuusya 2018年2月12日
不寛容に対して寛容であってはならない、といわれるとポルノや萌え絵等に対して実に不寛容な方々が思い浮かぶのだが、その理屈が自分たちに跳ね返ってくることは考えていないのだろうな。
富 ユタカ @lkj777 2018年2月12日
そうするとこのマンガを描いた奴は元の注釈が何かを知っていたということになる。つまりヘイトスピーチ規制、表現規制とは実は共産主義弾圧に転用するための罠だということになるね。
とら @wkwktkwk 2018年2月12日
不寛容に対して寛容であってはならない。ただし何が不寛容かはこっちが決める。
コーリー(贋) @boguscorey 2018年2月12日
青識氏の引用と解釈が正しいならば、漫画にはポパーの真意に対して悪意ある歪曲が含まれる事になりますね。 翻る旗は鍵十字ではなく、赤旗であるべきでしょう。
9さん @930_jp 2018年2月12日
日本語イラスト(かなりjpg劣化している)の原版に近いと思しき英語画像を発見(pictonline.comにはログインせず)。https://www.reddit.com/r/Images/comments/6u1nxi/the_paradox_of_tolerance_should_a_tolerant/dlpp4bk/ https://i.redd.it/tlyoidfqe3gz.png
9さん @930_jp 2018年2月12日
paradox(逆説)を矛盾と訳していたり、outside of the law(違法)を犯罪と訳していたり、日本語訳者はあまり術語の訳に慣れていないのではないかと思います。そもそもの英語版も、そのまま青識氏の批判がヒットする、不正確で杜撰な劣化ミームですが。
筐ヶ瀬 巻飴 @KATAMIGASE_Mai 2018年2月12日
自分が不寛容である権利を主張することは、他者があなたに不寛容である権利も同様に主張することである。
gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2018年2月13日
実際の話として「不寛容に対して不寛容を」という話を進めると、「共産主義にはどうする?」という問いが不可避になるわな
gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2018年2月13日
エストニアではソ連の象徴「鎌とハンマー」のシンボル禁止 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070123p4 /「旭日旗」や「日章旗」が仮にダメだと仮定して…「赤旗(共産主義のシンボル)」はPC的に許されるか? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140519/p3  またヘイト本を売るなとか運動の対象になる書店で普通に中核派機関紙「前進」が売ってたりする。
木犀劇場 @former_TY 2018年2月13日
棍棒はこうして作られるのね
ぺんぎん @specialcat0 2018年4月9日
ポッパーは「表現の自由を破壊する者に表現の自由を与えるのは、矛盾している」と言っていますね。 「Popper asserted that to allow freedom of speech to those who would use it to eliminate the very principle upon which they rely is paradoxical」
ぺんぎん @specialcat0 2018年4月9日
なぜかこれを省いちゃったんだね: ポッパー・寛容のパラドックス「我々はどのような不寛容をも宣伝するムーブメントは法外だと断言すべきであり、我々は不寛容と迫害の煽動を、殺人の煽動、誘拐や奴隷貿易の復活の煽動と同じく犯罪だと考えるべきである」
ぺんぎん @specialcat0 2018年4月10日
eseyuusya それは女性に対する不寛容だ、と気づいていないか?
サイチュウ @eseyuusya 2018年7月29日
specialcat0 通知がないので、コメントされていたのに気づかなかったわ。「あなたの感想ですよね。」そういう風に公平とも中立とも思えない立場から、恣意的にあるヒト、モノに不寛容のレッテルを貼り付け、迫害する運用がされているから賛同できないんだね。何が女性に対する不寛容なんだ?それは万人が共有せねばならない価値観か?
ポン介@無用者階級 @ume_pon 2018年7月30日
以前この話を #ネトウヨ春のBAN祭り を正当化する理由として振られた時、なんか違和感があった。その理由がこれでわかった。なんらかの言論を「拳固やピストル」という実力行使で阻止しようとする不寛容に対して寛容を示す必要はない、ということだったんだね。それなら納得。
ポン介@無用者階級 @ume_pon 2018年7月30日
言葉によって述べられた内容に対してはそれがヘイトスピーチであろうが、あくまでも言葉で応じるべきで、発言権自体を奪ってよろしいというBAN祭りのようなものを、このパラドックスを持ち出して正当化してはならないというのがわかったのは、とても良かった。
ジャパリパークに居候するスシ @Nek_ssd 2018年9月26日
ところでこの漫画を描いたのは誰なんだろう。やたら広まっているが
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