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イメージ画像は「ナチュラルなフリー素材」より引用 sozai-natural.seesaa.net pic.twitter.com/VutB2UPrCN
2018-02-13 06:57:33おばあさまのペットだった異種おねを、受け継いだショタが「おいき」と故郷の山に放ってあげるんだけど、 人間のペットとしての暮らしが長すぎて順応できず、同族に傷つけられて戻って来る。 なんだかせつなくてポロポロ泣いてしまうショタ。
2018-02-13 00:13:24一生懸命調べると、時間をかければ戻る訓練ができるようなことも書いてあるんだけど 肝心の異種おねがもう嫌がってしまって帰りたがる。ショタはおろおろしてしまって、結局おねの望む通り屋敷にもどる。 おばあさまの温室で異種おねはほっとしたようす。ショタはなんだかせつない。
2018-02-13 00:15:05おばあさまの莫大な財産はすべて異種おねが幸せに暮らせるように信託してあり その管理人としてあまり縁のないショタにお鉢が回ってきた。 一族は皆、変人の老女の屋敷に縛り付けられるなんて御免だった。
2018-02-13 00:16:05寄宿学校から戻って来たばかりのショタは温室の樹に巻き付いて、高らかに歌うおねの声に耳を傾けながら どうしたらいいのかなと思っている。
2018-02-13 00:16:52異種おねのようすを見る専門家の女獣医とかもやってくる。 「傷が化膿しています。注射を打っておきます。もう迂闊に外に出さないように」 「でも…」 「ここが、あれには一番幸せなのですよ。坊ちゃまはそれを守るために後を継がれたのですから」 「せめて…友達がいた方が」 「小鳥があれの友達」
2018-02-13 00:18:32熱帯の小鳥たちが異種おねの楽しい仲間。一緒によく分からないさえずりをしている。 でも小鳥の寿命は短く、死んでしまうと悲しむ。そのときの歌は胸が破れるほどつらく、ショタは気分が悪くなって倒れそうになる。
2018-02-13 00:19:22女獣医は言う。 「あれは坊ちゃまより長生きをします。貴重な種。生きた宝石のようなもの。大切になさい」 「それでいいのかな…」 「いいのです」
2018-02-13 00:20:21ショタは餌をやり、温室の掃除をし、技師が教えてくれた通りに機械の目盛りを確かめて記録をつけ 残り時間を学校の通信課程の自習にあてる。もともと友達はいないけど、人と会う機会が減ったのは少し寂しい。 寄宿学校の同室からときどきぶっきらぼうな手紙が届く。ご健勝ですか。程度の。
2018-02-13 00:22:19そういう種族なのだろう。気を紛らわそうと。温室の外でハモニカを吹く。 そんなに上手でもない。でもショタに上手なことはあまりない。勉強もできる方ではない。 なのに気づくと厚いガラスごしに異種おねがじっと見つめている。
2018-02-13 00:24:46ショタのハモニカに合わせて異種おねは歌う。楽しそうだった。いつのまにか小鳥たちも一緒に歌っている。 不思議だ。 ショタはやっとにっこりする。異種おねや小鳥たちの喜ぶことができた。管理人としてちゃんとやれた気がする。
2018-02-13 00:26:23寄宿学校の同室にまた手紙を書く。 「きれいな音楽にはなにがある?」 「あいまいすぎる」 と返事が来る。でも一応彼が思いついた曲のリストがついてくる。それを探して、どれもハモニカで吹くのは難しい。
2018-02-13 00:27:20レコードを買う。カタログを取り寄せて。蓄音機も。 流してみると、おねはなんとなくむずがゆそう。尾で打ち壊そうとする。 「ごめん」
2018-02-13 00:28:04レコードはだめみたいだ。生演奏でなければいけないのか。 演奏家を呼ぼうかと考えたが、あまりよその人間を入れないようにとも指示があった。 温室の整備をする技師と、ときどき家の掃除をしにくる業者。あとは獣医。
2018-02-13 00:29:04ハモニカを吹く。喜ぶ。小鳥と一緒に歌う。喜ぶ。小鳥が飛び交うのに合わせて踊る。喜ぶ。 レコード。だめ。映写機。だめ。よその人間。不機嫌。
2018-02-13 00:30:54異種おねの餌は果物。温室で採れるものや買って来たもの。なければ野菜でもいい。 牙があるのに。 「肉の味は覚えさせないように。血の味も」
2018-02-13 00:31:41「どうして?」 「坊ちゃまを食べてしまいます」 「えっ…」 「冗談です。ただ、さかりを迎えます」 「さかりって…あの…」 「攻撃性が増し、同族の雌と激しく争い、雄を襲う。危険です」 「…そんな」 「果物か…野菜を」 「うん」
2018-02-13 00:33:35でも、もし肉を食べることも異種おねの自然なありようならそうすべきではないだろうか。 ショタは悩む。でも故郷の山に放とうとしてしくじった。おばあさまの意向に反するあの行いを、皆が疎んでいる。 肉を与えてから逃がせばよかったのだろうか。
2018-02-13 00:34:49やがて嵐が来る。恐ろしい嵐。覆いをかけておいたのに、温室のガラスが砕ける。 ショタは電話をかけて技師に助けを呼んでから、雨風の中を走り回り、必死に異種おねを守ろうとする。
2018-02-13 00:36:14どうにか風雨は過ぎ去るが、一面に硝子が飛び散る。異種おねは無事だが、小鳥の多くが死に、樹々も倒れる。 「もとに戻すにはひとくろうですな。ひとまずはお屋敷に暖房をがんがん炊いて、そちでお嬢さんを置いておやりなさい」 「うん…」 「あの歌がはじまりなすった…今度は大変そうだ」
2018-02-13 00:37:28歌。嘆きの歌。友達の小鳥達が死んだ。 「やめて…」 頭がぐらぐらする。 「やめて…ごめん…僕が…ちゃんと…みんなを…だから…」 吐きそうになる。
2018-02-13 00:38:23