トラッキング(マルチトラック収録)時の録音レベルについて

録音時にデジタル・レコーダに入力する信号レベルはどの程度がベストなのでしょうか? 「ピークに届かない範囲で可能な限り高く…」という流儀も広く浸透していますが、コンバータの特性上、はたしてそれがベストなのでしょうか?
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Vocal-EDIT.com @VocalEdit_com

今回はマスターではなく、収録時(マルチトラックなど)の録音レベルの話です。 先日、ソースは失念してしまいましたが、A/Dは-20dBFS平均程度で入力されることを想定されており、無理にフルビット付近を狙ってもA/Dのアナログ回路内で歪みが増すという話を聞きました。

2018-02-15 21:45:45
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またしばらく前に紹介したPuremix.netのビデオにて、 「アウトボードに送る目的でD/Aから出力する際、受け側は+4dBu=0VUが想定されていることがほとんどなので、-18dBFS平均前後で出して送ってやるのが適切(DACの仕様によって±2dB程度上下する可能性あり)」という解説がありました

2018-02-15 21:45:45
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いずれにせよ、入出力ともに相当ヘッドルームを設けた方が、なにかと便利という考えです。あるいは、もう少し突っ込んだ意見になると、まともにレベル管理をしているスタジオならアナログ/コンバータともに機器間の接続は+4dBu=0VUとなるよう調整されているのが「当たり前」というのもありました。

2018-02-15 21:47:10
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一方、ヘッドルームは可能な限り最小とし、なるべくフルビット近くで入力する方がPCMの解像度を最大限に活用できるため、音質面においても有利という考え方も広く浸透しています。 ということで、2018年現在においてどちらがベストプラクティスなのかと思い検索してみました。

2018-02-15 21:47:10
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先に結論を言うと、決定打となる言説は見つけられませんでした。 ただ、調べる過程で相反する興味深い記事を見つけたので紹介します。

2018-02-15 21:47:56
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まずはこちら Massive Masteringというスタジオの中の人であるJohn Scripさんによる記事です。 prosoundweb.com/topics/studio/… なお、同スタジオの業務実績はこちら massivemastering.com/html/client-li…

2018-02-15 21:47:56
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John曰く、 ・プリアンプなどのアナログ機器、業務用DACの多くは、-18dBFS = 0VUで動作することを前提に設計されている。 ・それより過大なレベルを扱うと音が歪み始める。これはA/D, D/Aだけでなく、アウトボードやマイクプリも同じ

2018-02-15 21:48:55
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・それらがトラックの数だけ累積すると、歪みの総和は無視できないレベルになる ・ウチに持ち込まれるミックスを聞いていると、解っている上級者、あるいは小細工をしない初心者が入稿するミックスは余計な歪みもなく、マスタリング時のハードコンプへの耐性も高い。(続く

2018-02-15 21:48:55
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続き) なまじ中級者の方がトラッキング段階でフルビットを狙っているのか、全体としての歪みが多くマスタリングコンプで破綻しやすい。 ・結論:録音時になるべく高いレベルでA/Dに入力する…という流儀は2MIXのノイズを増やし、マスタリング時にコンプ耐性の低いミックスを作ることにつながる。

2018-02-15 21:48:55
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さて、ここまでは大方、私が最初に述べた「どこで聞いたか忘れた話」と変わりませんが、興味深いのはここから。 同じサイトに上記に対する反論が掲載されていました。 書かれたのはEthan Winerという方。 prosoundweb.com/channels/recor…

2018-02-15 21:49:39
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Ethan曰く、 ・業務機器の多くは、アナログ機器、コンバータを問わず、-20dBFS以上で特性が変化することはない(十分にリニアである)※ただしゲインステージに真空管やトランスを使用するものは例外

2018-02-15 21:49:39
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・上記は機器の公称スペックや検聴結果からも明らか。たとえばMackie 1402 VLZ mixerでさえ、1kH@+14dBuの歪み率は0.0007%程度。(原文では他にもいくつか例示) ・それどころか、Johnにコンタクトをとってそもそも検聴方法に問題があることを指摘

2018-02-15 21:49:39
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・よって「フルビット狙いは歪みが増える」「トラック数が増えるとその歪みが累積する」というのはまったくのデタラメ ・24ビットのコンバータが一般的になってから、トラッキングの録音レベルによる有意な差はない。なので、ヘッドルームを大きめにとってもOK とのことでした。

2018-02-15 21:49:40
Vocal-EDIT.com @VocalEdit_com

ちなみに反論記事が掲載されたのは2017年ですのでわりと最近の話ですね。 以上オチのない話でしたが、お二人の話を統合してもトラッキング時にフルビット付近を狙うメリットは無いという点においては共通しているように見受けられます。

2018-02-15 21:51:29
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これがFinal Answerかどうかは判断できませんが、あくまで興味深いと感じた一論(二論?)として、ご紹介まで

2018-02-15 21:51:29
serieril(せりえりる) @serieril

事実として、現代のAD/DAは-6dBFSあたりからTHDが悪くなり始めるというのがあるからフルビットを狙うのは良くないと思うけど、アウトボードについてはヘッドルームの考え方が各メーカーそれぞれだから、自分の持っている機材ぐらい、どのレベルから特性が変化するのか把握しましょうねー、みたいな。

2018-02-16 10:35:54
serieril(せりえりる) @serieril

アウトボードごとに最適な基準レベルが異なることも多々あるけど、そういう時は基準レベルが変えられるAD/DAを買いましょー。つまりLynx Hiloだな!

2018-02-16 10:40:07
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@serieril 正直、欧米系のエンジニアって日本よりはエンジニア然とスペックに気を遣い、また発言する印象があるのですが、そのわりに検査方法がザルだったりするんですよね… コンバータの入出力レベル差によるTHD変化(特に入力)の確実な測定方法をご存知でしたら教えていただけますか?

2018-02-16 10:57:59
serieril(せりえりる) @serieril

@VocalEdit_com 人間の特性として全世界共通で疑似相関を信じがちというか、何かあれ?と思って色々試した結果、相関関係が思わしきものを見つけたとき、それが原因だと信じてしまいますからね。レベルによるTHD変化については、1kHzをデジタルドメインでレベル変えながらDA->ADに送れば良く分かると思います。

2018-02-16 11:05:52
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@serieril ありがとうございます。その場合、DA側の変化なのか、AD側の変化なのか、どのように判断すればよろしいでしょうか?

2018-02-16 11:07:55
serieril(せりえりる) @serieril

@VocalEdit_com あー、確かにそうですね。ΔΣ型に由来する問題なので、DAでもADでも同じように変化するので見極めは難しいです。もし、ヘッドルームが広いHAなどお持ちでしたら、DA(-6dBFS)->HA(0~+6dB)->ADと送れば分かると思います。

2018-02-16 11:12:07
serieril(せりえりる) @serieril

@VocalEdit_com あとは、これはもうAD/DAのICレベルの話なので、データシートで、0dBFS付近のデータと、-6~dBFSのデータを見比べても分かります。唯一の例外がESSのICですね。

2018-02-16 11:21:33

ちなみに筆者個人としては、これまでしてきたように-20BFS平均を狙い続けようと思います。歪みが生じる可能性があることも一因ですが、なにより録音するときは進行係やディレクターを兼任することが多いので、ピークメータの監視から解放される分、音や演奏に専念しやすくなります