四式戦闘機弁務官丙型さんによる「臨時軍事費特別会計」という本の感想
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「臨時軍事費特別会計」を読み返しているのだが、何度読んでも面白い本だ。この時代の通史として読んでも面白い。今回印象に残ったのは、斎藤隆夫の演説だ。彼は言う。「現実に即さない国策は空想であって真の国策ではない」「戦争が起きればもはや道義善悪の戦いではなく、徹頭徹尾力の戦いである」
2018-02-18 21:01:38「そうでないと言うものがあれば、それは偽善に過ぎない」「我々政治家は偽善を排して国際競争の真髄を掴まねばならない。その真髄とは何か。生存競争であり、優勝劣敗である」
2018-02-18 21:03:40「それなのにこの現実を無視し、聖戦の美名に隠れて雲をつかむがごとき美辞麗句を並べ立てて国家百年の計を誤るようであれば、政治家の罪は死してもなお償えるものではない」…この「聖戦」という言葉を「国際平和」とか「友愛」とかに言い換えれば、今も昔も何も変わってないとしか言いようがない。
2018-02-18 21:04:42で、この本、ここまで読み進むと毎回頭を抱える。戦前の日本はどう見たってアメリカに支えられていた国だったのだ。数字は明白に物語る。
2018-02-18 21:53:22どう考えても、アメリカとは絶対に戦ってはならなかった。そして実は、海軍も政府もそれはよくわかっていたし、陸軍ですら一部(田中新一が仕切っていた参謀本部)を除いてそれは分かっていた。だから最終局面で、必死になって戦争を回避しようとしたのだ。
2018-02-18 21:55:33しかし、返す返すも脱力するしか無いのが、この時期の三者(政府、陸軍、海軍)の態度である。政府(近衛)はどうにかして戦争を避けたい。で、海軍に協力を頼む。海軍(及川)は「対米戦争には自信なし」「戦争回避に協力する」とは言うのだが、「海軍がそういったことは伏せてくれ」とヘタれるのだ。
2018-02-18 21:58:16海軍の言い分はこうだ。政府が戦争回避に動くなら協力する。しかしそれは政府の決断であってほしい。海軍として、戦争に自信がないから戦争を回避しろとは言えない。「政治に口は出せないから」…ほら。ここで言い訳に使うわけだ。
2018-02-18 21:59:28一方陸軍も、対米戦争がやばいことは分かっていた。だからなんとかして避けたい。武藤軍務局長は戦争を回避できるならもういっそのこと中国から撤兵したっていいと思ってるし、東條陸相もそう思わなくもないところまでいっている。
2018-02-18 22:02:29この三者で最も力がないのは政府だろう。政府は一貫して戦争を避けたいのだが、軍部が突っ張ればどうしようもない。その軍部はというと、陸軍としても実は戦争はしたくないのだが、今まで中国で戦ってきたことを考えるとどうしても手を引く言い訳が必要だった。これもまあ、分かる。
2018-02-18 22:05:04で、海軍である。海軍には分かっていた。アメリカ相手に戦って勝てるわけがないと。そしてそれを政府には内密に伝えたし、それを陸軍も知っている。政府も陸軍も、心待ちにしていたのだ。海軍が「ごめん、無理」と言うのを。海軍がごめんなさいをすれば、戦争は回避できた可能性が高い。
2018-02-18 22:06:52しかし海軍は結局は体面を捨てられなかった。とかく批判されることが多い及川海相だが、少なくとも彼は「海軍としては無理だ」と非公式にでも発言することはできていた。もしも彼が海相を続けていれば、また話は違ったかもしれない。しかし彼は去り、替わって海相になったのは嶋繁だった。最悪だ。
2018-02-18 22:09:14及川ほど泣きっ面もできない、見栄っ張りな割に気の弱い嶋田が海相になった時点でもう詰んでいたとしか言いようがない。少なくとも陸軍側、端的にいうと武藤軍務局長は、海軍が手を上げれば大陸から兵を引いてもいいとの覚悟はできていた。その場合、自分は死ぬしか無いとまで。
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