連作小話「教会で出会った女」

読み返してみたら、結末、唐突感なきにしもあらず。自己愛ジコチュー小話の宿命かもしれぬと弁解するのはカッコ悪いぞ。
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  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-25 07:34:30
    #twnovel 「いつも見えてますね。音楽、お好きなんですか?」。女が話しかけてきた。神田の教会月例パイプオルガンコンサート、そこで顔見知りになった女が今日、初めて話しかけてきたのだ。いくぶんほっそりした顔立ちだが眼が大きく印象的。知的に見えるので俺は少し気になっていたんだ。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-26 05:27:33
    #twnovel 「いやあ、音楽はそれほどでも。ところで、ここで長話もなんですからお茶でもいかがですか」 女はにっこり頷いた。外に出たら喫茶ルノワールが目についたので(ここならゆっくり話ができる)少し歩きながら「あなたもよくお越しになってますね」「ええ、私好きなんです」と話した。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-27 07:52:11
    #twnovel 実は俺、音楽浸りの毎日なんです。BSクラシック番組全部録画、ヘッドホンでテレビ聴楽。外では図書館から借り出したCDをケータイに仕込んだのを聴楽。つまり、家の内外、どこに居るときも音楽。マーラー、ショスタコの脂濃いのが中心でバッハで気分転換なんていうとキザですが。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-28 08:28:00
    #twnovel 「お好きなんですねえ」女は嬉しそうだ。「だって、教会でも開演待ちの時間もイヤホンで何か聴いてらっしゃる。よっぽどお好きと思ってたんですよ。でも、そんなに音楽浸りで奥様、何かおっしゃいません?」女は俺を覗き込むようにして言った。来た来た、俺の期待通りの質問だ。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-29 08:13:25
    #twnovel 家内は三年前に亡くしました。子供が無いので天涯孤独、自由気ままな身です。コンビニやスーパーで弁当を買って来て食べてます。野菜も摂らないといけないのでカットサラダを食べてます。メタボ大敵、一日2時間聴楽しながら歩いてます。他人様のお世話にならないで死にたいです。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-30 08:05:16
    #twnovel 喋りながら俺は女を仔細に観察した。三十代ということはないだろう、四十ちょい過ぎか。それにしては小皺が無いな。「それでお淋しくありません?」「いやあ、そんなことは」おっと観察に気をとられすぎた。これも期待範囲内質問だからここはしっかりと答えねば。「実は私、他人が」
  • 土曜日 @doyoubi 2011-03-31 07:34:19
    #twnovel もともと他人が嫌いなんです。鬱陶しいでしょ。嫌な奴もいますよね。ベートーベンなんかエゴで偏屈で付き合い切れないですよね。だけど人間は好きなんです。興味深いんです。他人は嫌い、人間大好きが私のモットーなんです。だから天涯孤独一人暮らしも苦になりません。快適です。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-01 07:12:46
    #twnovel 「ほほほ、面白い方ですね。では、他人は嫌いだから女もお嫌いなんでしょ」おっと、これは想定外質問だったな。なかなか切れるぞ、この女。「いや、それが違うんです。キリスト教の保育園に通わさせられたものですからマリア崇拝をすりこまれました。他人の中でもマリアは別格です」
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-02 06:57:47
    #twnovel 俺の女好きの理由をマリア崇拝の刷り込みのせいにしたけど、満更嘘でもない。母親の俺に対する溺愛とか祖父の内妻も俺のことを可愛がってくれたとか、とにかく俺の周囲には俺をおだてる女が多かった。俺のこの女好き、甘い性格は家庭環境に起因するものなんだ。マリアよ、リベラ・メ
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-03 07:06:20
    #twnovel 「なんか変だけど面白い理屈。マリアは別格だから嫌いな他人のうちでも女は別格なんて」。俺の屁理屈を見透かしたように女は言った。話題を変えねばいかんな、俺は慌てて「ところで、あなたは神を信じていますか」と女に投げかけた。「ふふふ。神って何ですか」女は切返してきた。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-04 07:13:10
    #twnovel いい質問です。最近「敬愛なるベートーベン」なる映画を観ていてこんな神だったら信じてもいいかなあと思いつきました。神=運命+沈黙。例えば、私が私であること(この時代のこの国のあの父母の下に生まれ育ったことその他)は運命、そして運命の理由について神は何も語りません。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-05 04:38:34
    #twnovel 私が私であることを恨んだり憎んだりしても始まりませんからねえ。そして、この私にもいつか終わりが来る。世の中に絶対は唯一つ、人はいつか死ぬということです。そう考えると私の運命(生と死)だけは信じよう、その理由を語らぬ神もついでに信じてあげようという気になりました。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-06 05:17:22
    #twnovel 「なるほどねえ。でも悪いけど何かご自分を好きな理由を必死に求めているだけのような気が」女は悪戯っぽく笑った。俺が返答する間もなく「あら、もうこんな時間。あんまりお話が面白かったもので長居してしまいました」女はさっと立ち上がった。俺には声をかける暇も無かった。
  • 土曜日 @doyoubi 2011-04-07 04:40:45
    #twnovel あれ以来、女は教会に来なくなった。何だったのだ。ひょっとして彼女は俺の妄想キャラだったのか。俺の「神=運命+沈黙」理論を自己愛理由にすぎないと言いやがったな。よーし、理論修正→神=運命+沈黙+愛。愛とは何かわからぬままに(想像力かも)俺はカップ麺を啜った。 了

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