ディナーにて
はじめに
#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグへお願いします。
2018-03-17 22:53:50本編
「ようモグリ」 「ようカタメ」 ある日の夕方、兵頭は長瀬に呼び出されて待ち合わせをしていた。長瀬の隣には赤毛の少女がいた。いつぞやの研修会だったかですれ違う程度に会った艦娘だ。 「兵頭大佐ですね。以前お目にかかりました、嵐です」#落ちぬい二次
2018-03-17 22:55:24「久しぶりだな。プライベートだから畏まらなくていい」 嵐はぺこりと礼をすると、背筋を伸ばして気を付けの姿勢を取る。長瀬がその肩を軽く叩くと、ようやく力を抜いてリラックスしたようだ。#落ちぬい二次
2018-03-17 22:57:08「んで、昼飯抜いて財布持って来いって、どういう用だよ?」 「いいステーキハウスを見つけたんだが、一人で行くのもどうかと思ってさ。そんな事を嵐に言ったらタカられちまって、仕方ねえからお前も誘って割り勘しようと思って」#落ちぬい二次
2018-03-17 22:57:52「俺は財布か」 「あと俺と嵐の二人っきりだと、なんか誤解されそうじゃん? そこにどう見てもモテないお前がいれば、まあ、そういう事」 「モテるわ!ある程度モテるわ!」 「嘘乙。ほらさっさと行くぞ、乗れ」#落ちぬい二次
2018-03-17 22:59:17長瀬はスポーツカーの運転席に、嵐は助手席に収まり、兵頭は狭い後部座席に身体をねじ込んだ。 嵐はというと、助手席に行儀よく座っているばかりだ。先程の様子を見る限り、長瀬と二人きりなら砕けた会話もありそうなものだが、兵頭の手前、遠慮していると見える。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:00:49「どこまで行くんだ?」 かれこれ三十分ほどは走っただろうか。景色は大分寂れてきている。神奈川というと大都市の横浜や港町の三崎などが有名ではあるが、実際は未開発の内陸部の方が広く、鉄道網が行き届いていない地域も多い。今向かっているのもそういった所なのだろう。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:01:59「隠れ家的な店だから、もうちょいもうちょい」 長瀬はそう言って、鼻歌混じりにハンドルを握っていた。 車内に会話もなく、風が暖かかったので、兵頭はいつの間にか眠っていた。 「着いたぞ」#落ちぬい二次
2018-03-17 23:03:05長瀬に小突かれて目を覚ますと、既に日が落ちていた。見回すと、レストランだと言われなければただのボロ小屋として見逃してしまいそうなログハウス調の店の、辛うじて三台が停められるかどうかという狭い駐車場だった。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:04:50「ん、もう夜じゃねえか」 「まあな。ディナーを予約してあるんだ。割り勘だから財布忘れんなよ」 店に看板はなく、扉に店名が書かれているだけだったが、その文字さえ掠れていて判然としない。 扉を開けると、小さなエプロンを着けたウェイトレスが迎えた。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:06:56「いらっしゃいませ。三名様ですね」 「予約してた長瀬っす」 「お待ちしてました。禁煙席でお間違いなかったですね」 「そっす」 「こちらへどうぞ」#落ちぬい二次
2018-03-17 23:09:00通されたのは一番奥のボックス席だった。喫煙室の近くでは微かに紫煙が香ったが、喫煙室の付近では換気がしっかりしているのだろう、煙草の匂いはしなかった。薄暗くさほど広くはない店内には、兵頭たちの他に二組か三組しかいなかった。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:10:26「お食事はご予約を承っております。お飲み物はいかがいたしましょう?」 「肉には赤かビールだけどなあ」 長瀬がメニューとにらめっこして呟く。 「なんだったら帰りは俺が運転するから、飲めよ」#落ちぬい二次
2018-03-17 23:11:08「お前に愛車のハンドルを握らせるくらいなら代行呼ぶわ。お前も飲めよ」 「んじゃ遠慮なく。赤ワイン、ボトルで適当なの見繕って」 「俺も」 「俺、もとい私も」 「お前はオレンジジュース」 「ちぇ」 「赤ワインをボトルでお二つと、オレンジジュースですね。かしこまりました」#落ちぬい二次
2018-03-17 23:12:26ウェイトレスが下がる。改めて店内を見渡すと、なかなか良い雰囲気である。古びているが手入れが行き届いており、調度も落ち着きのあるアンティークの様だった。 安いステーキハウスにありがちなぎとぎとした脂の匂いではなく、燻された木のチップの香りが微かに漂う。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:13:48長瀬は任務で頻繁に海外に行く関係で美食に強い。イタリアンやフレンチといった美食の代名詞から南米の伝統料理、さらには実家が寺であるため和食にも滅法詳しい。この店もそういった美食関係の人脈に紹介されたのだろう。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:15:54対して兵頭はと言えば、確かにいい店は知ってはいるのだが、ほとんどがラーメン店や小料理屋で、高級店を積極的に開拓するよりは勝手知ったる店に足繁く通う性質だった。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:18:09間も無く料理が運ばれてくる。 分厚い肉が皿の上で芳香をあげていた。微かにスモーキーな香りがするところを見ると、仕上げに煙で香り付けしているらしい。 肉が焼ける香りとワインのフルーティな香りが、たまらなく食欲をそそる。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:20:21早速肉を切り分ける。分厚いにもかかわらず、ほとんど力を入れずにナイフが入っていく。良い肉、丁寧な下拵え、絶妙な焼き加減の全てが揃った一皿だ。 大きめに切り分けたそれをフォークに刺し、口に運ぼうとした時、兵頭のポケットの中でスマートフォンが鳴った。#落ちぬい二次
2018-03-17 23:23:49「わり、電話だ」 名残惜しくもフォークを置き、席を立つ。長瀬と嵐は先に食べ始めていた。 「冷めないうちに戻れよ」 「あいよ」#落ちぬい二次
2018-03-17 23:26:08