羽生結弦選手への国民栄誉賞授与の是非をめぐる議論にみられる同賞の性格の変容について

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生命情報保存研究所 @rodan670

ピョンチャン冬季オリンピックで二大会連続の金メダリストに輝いた羽生結弦選手への国民栄誉賞授与が確実視されるなかで、同賞のありかたに関する議論が沸き起こっている。羽生選手の業績や国内人気を考えれば妥当とする向きもある一方、あまりにも短期間に賞を出しすぎという声もある。

2018-03-06 08:02:21
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国民栄誉賞は1977年から2000年までの23年間に14の人物に授与されているのに対し、2000年から2018年の18年間ではすでに12の人物および団体に与えられ、今回羽生選手が授与されるとなるとその数は13に伸びる。さらにこれを第二次安倍政権の発足後に限定すると

2018-03-07 07:55:33
生命情報保存研究所 @rodan670

そのペースは2012年から2018年の6年間で6人(7人)とさらに加速していることがわかる。20世紀の段階では、同賞は該当人物の没後に与えられることが多く、「死ななければもらえない賞」として知られたが、近年はその傾向も大幅に緩和されてきている。

2018-03-07 07:58:33
生命情報保存研究所 @rodan670

国民栄誉賞の性質の転換点は、2000年のシドニーオリンピックマラソン競技の金メダリストに輝き、同年受賞となった高橋尚子選手の事例に遡ることができる。

2018-03-07 08:00:58
生命情報保存研究所 @rodan670

高橋尚子選手の受賞以前において国民栄誉賞は、巨人のV9時代を支えた王貞治選手、昭和歌謡の象徴美空ひばり氏、サザエさんの作者長谷川町子氏、男はつらいよシリーズで寅さんを演じた渥美清氏と、いずれも数十年に及ぶ時間的スパンにおいて国民を鼓舞し続けた人間に与えられている。

2018-03-12 07:14:50
生命情報保存研究所 @rodan670

さらに、上記において美空ひばり氏、長谷川町子氏、渥美清氏に関しては、いずれもその没後に同賞は授けられている。長年にわたって人々の心の中にあり続けたがゆえに、その状態が当然のように錯覚され、いざこの存在を失って初めてそのありがたみを再認識し、賞の授与にいたるパターンである。

2018-03-12 07:17:54
生命情報保存研究所 @rodan670

高橋尚子選手以前に同賞を与えられた14人のうち、存命中に受容できたのはわずか5人にすぎない。対して、高橋尚子選手以降に同賞を与えられた12の個人、団体のうち、没後受賞のケースは逆に3件に留まる。賞のリアルタイム性は間違いなく顕著になっている。

2018-03-12 07:23:16
生命情報保存研究所 @rodan670

国民栄誉賞のリアルタイム化を象徴するケースは、他でもなく高橋尚子選手の事例である。高橋選手は2000年のシドニーオリンピック女子マラソンにおいて金メダリストになり、これは同時に日本人女性がオリンピックの陸上競技で金メダルを得る最初のケースとなった。高橋選手に同賞が与えられたのも

2018-03-12 07:28:32
生命情報保存研究所 @rodan670

この偉業を称えてのものである。しかしその業績がいかに素晴らしかろうと、それは時間的に見て「スポット的」な出来事であったという点において、それまでの「線的」長時間において国民を鼓舞し続けた人物に与えられた、同賞の事例とは大きく性格を異にする。

2018-03-12 07:34:04
生命情報保存研究所 @rodan670

ある人物がオリンピックの競技で金メダルを得る、これは時間的に見て一瞬の出来事である。ただ一瞬であっても国民の多くを鼓舞したのであれば同賞は相応しいという前例がここに生まれる。一瞬の出来事に対しての賞は当然その出来事が起きた直後に与えられなければならない。

2018-03-12 07:37:52
生命情報保存研究所 @rodan670

高橋選手が同賞を受賞したのはシドニーオリンピックと同年の2000年である。瞬間的な出来事により発動する国民栄誉賞は必然的にリアルタイム性をも高める。

2018-03-12 07:42:30
生命情報保存研究所 @rodan670

同様のケースは女子サッカーのなでしこジャパン(2011年)、レスリングの吉田沙保里選手(2012年)および伊調馨選手(2016年)にも見出すことができ、今回羽生選手が受賞すればやはりこの一例という事になる。瞬間的な出来事に与えられる国民栄誉賞は国際大会を伴うスポーツと親和性が高い

2018-03-12 07:44:19
生命情報保存研究所 @rodan670

国民栄誉賞のこのような変容の背景には、テレビの多チャンネル化やネットの登場に伴う、一人当たりの人間が摂取できる情報量の激増がある。このような環境化においては、「男はつらいよシリーズ」の寅さんのように、数十年スパンで国民の共通理解であり続けるような最大公約数的スターは成立しづらい。

2018-03-20 07:20:43
生命情報保存研究所 @rodan670

最大公約数的スターはその存立を限定された短期間において許されやすくなる。逆に、ネットが有する情報拡散力により、一度生まれたスターはわずかな期間のみ爆発的に認知され、しばらくすると新たに突発的に出現した別なスターへと置き換えられていく。

2018-03-20 07:35:52
生命情報保存研究所 @rodan670

こうして同賞の候補となる国民的スターは長期間において持続的に認識され続ける面型から、リアルタイムにおいて瞬発的に認知されるスポット型へと移り変わっていく。

2018-03-20 07:43:40