日向倶楽部世界旅行編第41話「黒薔薇の騎士」

料理大会で料理の心を目の当たりにした日向達。一方その裏で、那珂の下を離れた野分は、長門と共に旅を始めていた…
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三隈グループ @Mikuma_company

「駆逐艦娘、野分です!」 「私の成す正義が新たな正義を作る」 「ば、バケツのお化け…」 「腕の立つ奴を知らないか?」 「怪物は森の奥だ!」 「この長門が手を貸そう」 「真の騎士を目指して旅をしている」 「自分が何に憧れたか、なりたかったか、分かりますか…?」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/XlH3u38Gs3

2018-04-03 20:47:15
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 上陸したタウイタウイ泊地にて日向が料理大会に出場し、なんと優勝しました。 賞金の他にトロフィーを頂いたので、トロフィーは艦橋に飾る事に、倒れないよう船の操縦も慎重にしなければなりませんね。 それはさておき、今回は私達のお話では無いようですね、こうい

2018-04-03 21:00:42
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第41話「黒薔薇の騎士」

2018-04-03 21:01:30
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〜〜 「駆逐艦娘、野分です!本日付けでトラック泊地に着任となりました、那珂さんの元でお役に立てるよう、精一杯頑張らせて頂きます!」 あの日の事は今でも覚えている。 初めて見てから憧れ続けていた人と、初めて顔を合わせたあの日、私にとっては、誕生日のように特別な日。

2018-04-03 21:02:30
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「野分ちゃん…だね、期待してるよ。」 あの時の那珂さんは優しく微笑んでいた、それがとても嬉しかったし、だから必死に頑張った。 私が着任した頃は、激戦も終わり、穏やかな空気が流れ始めていた頃だったから、必死に訓練する私は奇異の目で見られる事もあった、でも関係ない、私はやった。

2018-04-03 21:04:08
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そのおかげで、那珂さんの近くで働けるようになった、まだまだ遠くて、手の届かない人だったけれど、言葉を交わしながら働く日々はとても充実していた。 いつも微笑んでいて、優しくて、暖かい人、那珂さんは皆にとっても私にとっても、そういう人だった、女神様のような人だった。

2018-04-03 21:05:40
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だからあの日の夜 「なんとか、なんとか言ってくださいよ!」 那珂さんが、何も答えず立ち去ったあの夜、今まで見ていたものが、霧でもかかったようにボヤけた、私の中にあった那珂さんという大きな像に、ヒビが入った。

2018-04-03 21:07:03
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…結局、私は何も見ていなかったのかもしれない、ただ、那珂さんという夢を見ていた、幼稚な子供。 だから私は探したい、自分が何に憧れたのかを、何を目指したのかを、それを知ればきっと、またあの微笑みと、顔を合わせられる気がするから。 〜〜

2018-04-03 21:08:31
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〜〜 私はあの夜の出来事があった後、長い長い休暇で旅に出た。 一人ではない、あの日那珂さんに銃を向けたワタリ艦娘「長門」さんにくっついて行く形でだ。 旅の行き先は常に未定、ワタリ艦娘として引き受けた仕事の行き先が、その時点の目的地になる。

2018-04-03 21:09:32
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そして今日の目的地は、フィリピンのとある島、少し行けばタウイタウイ泊地がある所、小さな漁船などを護衛しつつ進んでいたら、巡り巡ってここに辿り着いた。 「ありがとうございます、ここらは何かと物騒だから助かりました。」 「気にしなくて良い、これも正義のためだ。」

2018-04-03 21:11:15
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目一杯感謝を表す漁師の人に、長門さんは軽く別れを告げて立ち去る。 この人は報酬をほとんど要求しない、正確には企業や法人などの大きな組織からは報酬を受け取るが、艦娘を雇うのが難しい小さな漁村や個人からは報酬を受け取らないのだ、受け取るにしても食べ物などの現物に限っている。

2018-04-03 21:12:36
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だからその腕前に対して、彼女の身なりはとても質素だった、大きな仕事をやると、周りの艦娘に比べて物が少ない事が一目で分かるほどに。 要するに、大きな仕事で日銭を稼ぎ、小さな仕事をタダでやる、そういうサイクルを長門さんは繰り返しているようだった。

2018-04-03 21:14:08
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「今日はこの村に泊めてもらえる事になった、ついて来い」 追いかけて来た漁師の人と話をしていた長門さんが言った、生活が生活だけに、こういう人の善意に恵まれる事もあるという。 私はコクリと頷き、自分の荷物を持って長門さんの後について行った。 〜〜

2018-04-03 21:15:35
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〜〜 翌朝、私と長門さんは村の人達に別れを告げ、漁村を後にした。 「これが正義だ、分かるか?正しきを行うものは正しきに救われるんだ」 手を振る村の人達に見送られながら長門さんは言った。 この人は正義が口癖だった、そして行動もそれに倣っていた、物凄く真面目で、方正な人だ。

2018-04-03 21:17:35
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初めて見たあの日は、出鱈目を言う危険な人だと私は思った。でも共に行動をして、近くで見ていると、嘘をつく人ではないとも思えた。 なら那珂さんは本当に…? いや、そんなはずはない、あの日那珂さんが黙っていたのは、きっと何か訳があるのだ、それが分かれば、長門さんも納得してくれるはずだ。

2018-04-03 21:18:31
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そんな事を考えている間に、私達はタウイタウイ泊地へと辿り着いた。 「今日は市街地へ出るぞ、着いて来い」 「仕事を探すんですか?それなら泊地の中の方が…」 泊地などの拠点は相談所のようなものでもあり、企業などからの求人情報なども多い、仕事探しにはうってつけだ。

2018-04-03 21:20:29
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だが長門さんは否定した 「このタウイタウイ州は貧しい者も多い、泊地の外には助けが不足しているだろう、だから行く。」 「なるほど」 「私の成す正義が新たな正義を作る、その貧しさや過酷さで正義を見失わぬよう、手を差し伸べる事が必要なのだ、分かるな?」

2018-04-03 21:21:35
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真剣な表情で語る長門さんに私は頷く、昔学校でヒロイズムって言葉を習ったけど、こういう事なのかな…正直、言っている事にはイマイチ慣れなかった。 ただ、那珂さんも目の前に助けを求める人がいたら手を差し伸べるだろうし、人を助けようとする長門さんの行いが、間違ってるとは思わなかった。

2018-04-03 21:22:34
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こうして私達はタウイタウイ泊地外の市街地に出た、街は人が多く行き交い、活気に溢れていた。 露天に書かれた数字を見ると、どれも泊地の中より安い、買い物をするなら外に出た方が良いのかな…?私は旅とかそういうものと無縁の人生を送っていたから、目に映るものはどれも新鮮だった。

2018-04-03 21:24:30
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と、その時、私の手を誰かが掴んだ。 「えっ、何?」 見ると、私より年下くらいの少年が、私の手を握って何かを訴えていた。 英語ではない、聞いた事のない言葉、ただ、困っている様子なのは表情からすぐに分かった。 長門さんを呼ぼうと思ったが、彼女は既に人混みの先へ行っていた

2018-04-03 21:25:31
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私は困り果てたが、手を引く少年は助けを求めている。 「えっと、OK、OK…」 OKという言葉は分かったのか、少年は笑顔で頷いた、困っている人は助ける…一人だが、やってみようと思った。 私は助けを求める少年に手を引かれ、彼と共に路地へと向かった。 〜〜

2018-04-03 21:26:31
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〜〜 手を引かれるまま進んで行くと、私はいつしか路地裏の奥へ奥へと連れていかれていた。 「どこまで行くの…?」 日本語と英語で少年に訊ねるが、彼は何も言わずに私の手を引いて行く、この先に彼の求める「助け」があるのかな…そう思う間にも、私のまだ新しいジーンズは土埃で汚れていく。

2018-04-03 21:28:31
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どれくらい歩いたか、表通りの賑やかな声が聞こえなくなった頃、手を引いていた少年は足を止めた。 そこは路地の行き止まり、静かで汚い場所だった。 「…ここは?ねえ、私にどうして欲しいの?」 無駄だと分かっていたが、私は少年に訊ねてみる、予想通り少年は無言のまま、私の手を握っていた。

2018-04-03 21:29:39
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その時だった、私の身体が、腕を掴んだ少年によって大きく捻られたのは。 「痛いっ!な、何するの!」 私は振り解こうと身体を動かす、すると今度は、別の手が私の身体を掴んで羽交い締めにした。 「ちょっと!離して!どういう事!」 羽交い締めにしたのは大柄な少年、力が強い。

2018-04-03 21:31:28
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気が付くと私は何人もの少年少女に囲まれ、動きを封じられていた。 彼等は私の身体を雁字搦めにし、ポケットを漁り、服を脱がそうとする。 「まさか、この子達…!」 そこまでされて私はやっと気が付いた、嵌められたのだ、彼らは私の身ぐるみを剥ぐ気だ。 遅過ぎる気付き、私は逃れようともがく

2018-04-03 21:32:32
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