junsugawaraさんによる「今朝のウイグル語」まとめ

junsugawaraさん(東京外国語大学で「現代ウイグル語」の授業をされている方のようです)がツイートしている「今朝のウイグル語」をまとめました。
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Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のひとことウイグル語。ot-kawapは「火とケバーブ」の意味だが、「火とケバーブになるot-kawap bolmaq」は主に「熱烈に愛し恋焦がれること」を意味する。彼我の文化の違いが垣間見える興味深い、印象的な表現ですね。日本語で食べ物を使った同様の表現はあるのでしょうか。

2011-03-08 04:29:48
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のひとことウイグル語。ottura(中)の派生語otturanchiは「2番目の」の意味で、主にotturanchi bala=2番目の子供(次男、次女)のように用いられる。ただotturanchi bowaは2番目の祖父、ではなく曽祖父。

2011-03-09 05:48:12
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語。otun yarghan palta ishikning sirtida qaptu.「薪割りを終えた斧を戸外に忘れる」ある目的を達すると、お世話になった人のことは忘れがち。漢語の「过河拆桥」に相当。これ、正直、会議やイベントをオーガナイズするたびに感じるなあ。

2011-03-10 10:33:25
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:oqは「矢」とか「弾」を意味するほかに、遺産相続やワクフ収益の分配率を示す単位としても用いられる。財産を複数のoqに分かち、何某にX oq、何某にX oq....のように文書には記されます。まあ西方イスラーム世界文書のsahmの引き写しと理解されるのかな。

2011-03-11 08:00:12
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:oylimaq(oyla-)は「思う、考える」という意味の動詞。『維漢大詞典』によればこの意味のほかに「方言」では「逃げる」という意味もあるらしい。でもどの辺の方言なのか記載なし。あの辞書は時々こういうことがあります。大きい辞書なのにね。

2011-03-16 06:42:11
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:諺rozini men tutsam, héytni bashqilar oynaptu.「断食をするのは自分、断食明けの祭りをするのは他人」。成果は横取りされがちってなことでしょうか。ありがちなこと。でも人のご苦労に向ける「まなざし」を忘れずにいたいものです。

2011-03-17 07:27:52
Jun SUGAWARA @junsugawara

先般の諺。直訳は「おらが断食したら、祭りを他人が祝ってら」てな感じです。

2011-03-17 07:31:58
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:oyundin chinggha chiqmaq「冗談が争いに発展すること」そういえば19世紀中葉のホタン反乱も、ホタン人の酔っ払いが同じホタン人の通訳の辮髪を笑いものにしてからかったことが一因との説(Muhammad A'lam)がありました。

2011-03-18 06:33:33
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ördekは「あひる」。この単語、以前はödekとつづっていたが現行の正書法では"r"が入り、かつそれは発音しないことになっている。こういう改変は意味があるのであろうか。なおördektumshuq(lit.アヒルくちばし)は「カモノハシ」の意。

2011-03-19 03:39:16
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(補遺):カモノハシやフランス語のじゃがいも(地面りんご)のような成り立ちの単語としてつくづく思い出されるのはカメ(tashpaqa)。字義通りに訳すと「石蛙(tash+paqa)」の意。私目には「蛙が甲羅を背負っている」ようにはゼッタイに見えないのだけど。

2011-03-19 03:45:55
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ögünは「あさって」の意味だけれども、あくまで個人的な印象としては、この形よりは名詞・形容詞化接尾辞を付したögünlükの方をより多く耳にするような気がする。実のところ「より多く」ではなくてögün単体で最近まったく聞いていないような。

2011-03-20 07:14:31
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(補遺):ついでながら「今日」はbügün、「明日」はete、「昨日」はtünügün、「おととい」はülüshkün(まれにburnakün)となります。

2011-03-20 07:24:38
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(補足!): よくよく体験に照らし考えてみたら「あさって」は"ögün"よりも、"ögünlük"よりも、"ögünlükke"(さらに与格接辞がついた形?)のほうがはるかに多く用いられているような気がする。なお、3つとも『维汉大词典』に立項されています。

2011-03-20 09:41:41
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ömüchükは蜘蛛(くも)の意。ömüchük toriは「蜘蛛の巣」。蜘蛛の巣にtor(網)が用いられているのはなかなか合理的。でも、これは「ネット」と「ウェブ」を訳し分けないということ?まあ不都合はないけどね(良く考えたら日本語でもあんま区別してない…)。

2011-03-21 07:01:47
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:chong「おおきい」。私、ウズベク人と話すときにはkattaと言い換えますが、chongとはまったく言わないんですかね~?ほかのチュルク諸語ではクルグズもchong派ですね。こういうネタの参考文献は:http://amzn.to/i9jb8N 面白い本です

2011-03-22 01:01:22
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:örkeshは(1)波(syn.dolqun)、(2)ラクダのこぶ(syn.lokka)の意。また男性の名前でもあり、天安門事件で名を馳せたかの「ウーアルカイシ」はこのオルケシュに他ならない。Dolqunさんも同様だが、日本風に言えば「波平さん」と言ったところ?

2011-03-23 03:45:47
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ösümlükは一般に「植物」の意だが、他方、ösüm(利息)の派生語として、属性の具備を示す接辞-lükを付し「有利子の、利息のある」という意味もある。ちなみに「無利子の」は欠性辞-sizを付してösümsiz。

2011-03-24 06:13:55
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ötmek(通る、過ぎる、通用するetc.)は大変意味の範疇が広く有用な動詞です。前に置かれる目的語は奪格(-din/-tin)を要求するので、日本語から直訳すると若干違和感があることもあります。なおötüp ketken exmekは「全くの馬鹿」の意。

2011-03-25 06:42:35
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(おまけ):薪はotun。英語ではfirewood.

2011-03-25 06:52:13
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ötekは「遊牧の際の一時的な住まい」のこと。他に方言では「羊の糞」。古い意味として「天涯孤独な人」など。前の正書法では「義務」という意味でエントリーされていたが現行でその語は「古語」のötegとされ区別される。でも古語のg-kの区別ってどう判断したんだろう。

2011-03-26 03:53:08
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:toqquzは「9」だが、ウイグル人にとってはめでたい秘数。たとえば伝統家屋の天井には9本の梁を渡したり、贈り物も9つそろえて贈ることがあったという(Sayramiの『ハミード史』にもそういう場面が出てくる)。最近はこれを知らない人が増えているのがチトさびしい。

2011-03-27 07:57:09
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(補遺):9つながりで。なお「突厥」は世界史用語集などでは「とっけつ」あるいは「とっくつ」と二通りで読まれるが、碩学宮崎市定はかつて「トルコ語の母音調和の原則に適っているからとっくつのほうがよい。トルコ語の9にも通じるしー」とか(多分冗談で?)書いておいででした。

2011-03-27 08:02:52
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:ötrükは古語の形容詞で(1)「嘘の、偽りの」、(2)「変幻自在の、変わりやすい」の意。『维汉大词典』は古代ウイグル語の語彙を多数エントリーすることに意を用いているという印象があります。あくまで個人的な印象だけど。あの辞書の「古語」の具体的採録方針が知りたい。

2011-03-29 07:06:10
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語:elgek, ghelwir, ötkemeはいずれも「ふるい」とか「ざる」のように物をより分けるのに用いられる道具。elgekが粉などをふるうのに対し、ghelwir, ötkemeはより大きなムギとかトウモロコシをふるうのに用いられる。

2011-03-31 06:27:24
Jun SUGAWARA @junsugawara

今朝のウイグル語(補遺1):なおghelwirとötkemeは、「ötkemeを通ったのにghelwirでつっかえた(ötkemdin ötüp, ghelwirde toxtaptu)」という諺からすると多分ghelwirのほうが穴が小さいのかな。

2011-03-31 06:31:54