2018年4月28日

映画『ラッカは静かに虐殺されている』感想 ~カメラ=万年筆=武器を手にしてるのは誰か~

シリアでイスラム国(IS)相手にスマホを武器として命がけで戦う秘密地下組織「ラッカは静かに虐殺されている」(RBSS)を描いた緊迫のドキュメンタリー映画『ラッカは静かに虐殺されている』(City of Ghosts)。 その感想ツイートをセルフでまとめました。 公式サイト:http://www.uplink.co.jp/raqqa/ amazon primeでも公開中:https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07BB3DCM1
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』鑑賞。 イスラム国支配下のシリア・ラッカ市で、命がけで極秘撮影したスマホ動画を国外へ発信する同名の地下組織(RBSS)に密着取材するドキュメンタリー。作中で関係者4人とその家族2人が虐殺・暗殺され、国外亡命した主役格も暗殺予告される、まれにみる超緊迫作品。 pic.twitter.com/pfHEjl0dEY

2018-04-21 21:50:29
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』、シリアの同名の地下抵抗組織(RBSS)は、ラッカ市内で撮影をする超極秘部隊の国内組と、その映像を受け取って発信する国外組がいて、映画は主に国外組の苦悩を描く。 全体的には「見つかれば殺されるかも?」映像に、「見つかれば即拷問→処刑」映像が混じる形。

2018-04-21 21:59:58
須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』、 「武器はスマホ。戦後最悪の内戦で勃発したニュータイプの戦争」「ドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分」が謳い文句。 これが実は曲者。スマホカメラを手にすることに意味がある映画ですが、劇中誰がカメラを手にしてるのか判別が難しい。その意味で超緊迫。

2018-04-21 22:07:12
須藤玲司 @LazyWorkz

あらゆるドキュメンタリー映像でいちばん大切なことは、「いまこの映像は、誰が撮ってるのか。スクリーンの手前で映らないカメラ側には何があるのか」ということです。 『ラッカは静かに虐殺されている』は、カメラを持った匿名市民を英雄とする思想上、特に気になりますが、その判別が非常に難しい。

2018-04-21 22:10:37
須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』(原題:CITY OF GHOSTS)は、シリア国内で映像を撮影する地下組織「ラッカは静かに虐殺されている」(RBSS)の映像を受け取り編集する国外班を、アメリカ人映画監督が撮影・編集した映像作品です。 この3重構造が、作品を鑑賞する側に予想外の緊迫を強いるのです。 pic.twitter.com/U85BlI7WFv

2018-04-21 22:18:23
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』の撮影は、 1:国内組の即死級命がけ超極秘映像 2:国外組の緩やかな命がけ映像 3:取材する職業監督の映像 4:イスラム国のプロパガンダ映像 5:その他ニュース映像 が入り乱れて編集されています。 素人のスマホ映像とプロのプロ機材映像で画質が違うのが手がかり。

2018-04-21 22:27:50
須藤玲司 @LazyWorkz

さらに、 3:取材する職業監督の映像 については、 a:本物の映像 b:おそらく再現映像 が予告なく混じります。 欧米のドキュメンタリーは、再現ヤラセ映像の取り扱い規準が意外なほどユルいことがあります。 なぜそこで別角度の映像があるのか。どうも『ラッカは静かに虐殺されている』は少しユルめ。

2018-04-21 22:32:02
須藤玲司 @LazyWorkz

たとえば、「ラッカは静かに虐殺されている」国外メンバーが秘密アジトで国内組から電話を受ける場面。タイミング良く撮影してたなーと思ってると、通話中に時間経過なく部屋の逆側から映したカットに切り替わります。その状態でもカメラマンの姿はない。 再現映像です。 その後に流す涙はなんだろう。

2018-04-21 22:43:26
須藤玲司 @LazyWorkz

そうかと思うと、「ラッカは静かに虐殺されている」のメンバーが語り合う場面、妙に画質が悪く素人くさい映像がだらだら流れます。 おそらく、映っていないメンバーの一人が、あとで何かに使うために、素人カメラを回してます。他のメンバーは、ある程度カメラを意識したうえで本気で語ります。

2018-04-21 22:48:03
須藤玲司 @LazyWorkz

「ラッカは静かに虐殺されている」メンバーの語りも、 a:仲間うちでアラビア語で話してる場面 b:組織(RBSS)の広報活動として英語で話す場面 c:映画(CoG)のカメラを意識して英語で話す場面 がけっこう入り乱れているような気がします。あれ?いまなぜか英語だったよね?とか。

2018-04-21 22:52:05
須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』 に頻出する 4:イスラム国のプロパガンダ映像 も、 a:引用映像として挿入されるロゴ入り映像 b:ふつうにパクってロゴを消した映像 があるようです。 序盤に映るイスラム国の旗が翻るラッカの空撮映像なんて、プロパガンダ映像をパクってしか入手できないでしょう。 pic.twitter.com/X5p0maYSLr

2018-04-21 22:55:07
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須藤玲司 @LazyWorkz

つまり、地下組織「ラッカは静かに虐殺されている」(RBSS)を追った映画『ラッカは静かに虐殺されている』(CoG)は、敵・味方・観察者・第三者が撮った本物・偽物(再現)映像が絶え間なく入り乱れ、製作者の意図とは少し違う、観客にとっての「ドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分」となるのです。 pic.twitter.com/6tnoHfanZo

2018-04-21 22:58:12
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』の製作側が意図していない危うさは、配給がつけた「戦後最悪の内戦で勃発したニュータイプの戦争」というキャッチコピーにも現れています。 「戦後」ってどの戦争でしょう。 「最悪」ってほんとですか。 これはシリアを長年無視してきた欧米史観の言葉です。 pic.twitter.com/FYKBjnJcBI

2018-04-21 23:06:00
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』は、キャッチコピーのとおり「ニュータイプの戦争」です。映画の製作・上映そのものが、ひとつの勢力の戦闘なのです。 観た時点で戦争に巻き込まれていることを、観客としては自覚しなければなりません。 パンフで解説される、映画後の西側ラッカ空爆の惨劇も必読。 pic.twitter.com/VbaLjT5nYp

2018-04-21 23:11:01
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』、ぼくが少し批判的なトーンなのは、おそらく演出つき再現撮影と思われるできすぎ場面が、注釈なしにけっこう頻出するんですよね…。 そのおかげで、亡命した地下組織メンバーが祖国を憂う表情、仲間の死に涙する涙を、どう観るべきかとても難しくなっています。 pic.twitter.com/3ovPHzCblP

2018-04-21 23:49:12
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』トークショー moviche.com/contents/news/… 「私にとっては、今日は特別な日ではない。虐殺はずっと続いている。なぜトランプ政権が攻撃したときしか取材しないのか?」 ほんとこれ。 ぼくも、なぜシリアを今このタイミングで気にしてるのか。何に気にさせられてるのか。

2018-04-22 08:30:39
須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』、最初の殉職者が壮絶。イスラム国の検問に捕まり、その後は拷問のすえ虐殺されるのですが、捕まって連行される瞬間がすべて撮影されています。 そんな映像がこの世に残っていることが奇跡です。あるいは最期の執念。 ただこれ、映画ではなく、地下組織の手柄です。 pic.twitter.com/EoJfz6qW0r

2018-04-22 15:20:12
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』、もっとも悲惨なのが、主要メンバーの一人。中盤で故郷の父親がISに捕まります。 父親は地下組織で活動する息子への恨みつらみをカメラの前で言った(言わされた)あと、ISお得意のマルチカメラ超ドラマチック処刑で虐殺され、その映像が公開されてしまいます。 pic.twitter.com/lks6oxMYdN

2018-04-22 15:22:11
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須藤玲司 @LazyWorkz

父親がIS演出で無駄にかっこよく虐殺される瞬間を見せつけられる「ラッカは静かに虐殺されている」メンバー。複雑きわまりない顔で「だが俺は戦い続ける」的なことを言います。 しかしこの場面自体が、映画監督がセッティングした一種の「肉親虐殺映像鑑賞会」。それがより状況を複雑にしています。

2018-04-22 15:22:47
須藤玲司 @LazyWorkz

「『父親が自分を恨んで虐殺される瞬間』を見せつけられる顔」を撮影される、凄惨な状況。 映像を武器とする「ラッカは静かに虐殺されている」メンバーならば、肉親がどんな撮影で命を弄ばれ人生を編集されたかも想像つくでしょう。 映画はその心を拾いません。おそらく意図的・政治的に無視してます。

2018-04-22 15:25:31
須藤玲司 @LazyWorkz

疲れきったリーダーが力なく語り尽くしたあと、ふとシリア国旗を見上げる。その横顔から、殉職した仲間の写真にフォーカスが移る。疲れて眠り込み、その手からスマホが滑り落ちる。 『ラッカは静かに虐殺されている』のかっこいいラストシーンですが、ちょっと問題です。 かっこよすぎるのです。

2018-04-22 15:27:12
須藤玲司 @LazyWorkz

スマホを手に戦う組織「ラッカは静かに虐殺されている」リーダーが、疲れて眠り込み、スマホが手から滑り落ちる。象徴的な映像です。 「こいつ寝ちゃったよ…あっ、スマホ落としそう。よし急いでカメラセット!まだかなまだかな…落とした!やった撮れたラッキー!」 撮影現場はたぶんこうでしょう。

2018-04-22 15:28:41
須藤玲司 @LazyWorkz

多少の演出はふつうなら許容範囲内ですが、『ラッカは静かに虐殺されている』では気になります。市井の民がカメラを武器として戦うことがテーマだからです。 つまり、IS・地下組織・映画監督のそれぞれが、武器を手に戦争をする、武装勢力そのものなのです。それぞれに戦略的な思惑があるわけです。 pic.twitter.com/mwaWQknDJo

2018-04-22 15:30:43
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須藤玲司 @LazyWorkz

宿敵ISは、人類史上最高にかっこいい演出の残虐行為映像をバラまく、極悪なプロです。 対する「ラッカは静かに虐殺されている」(RBSS)は、スマホで真実の生映像を撮る素人です。 映画『ラッカは~』(CoG)の監督は、映像演出の腕があるプロであるぶん、両者の間で危ういバランスに揺れていますpic.twitter.com/BTNV969Sqo

2018-04-22 15:32:03
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須藤玲司 @LazyWorkz

『ラッカは静かに虐殺されている』の監督インタビューを、映画専門サイトで見つけました。テクニカルでたいへん興味深い内容です。 indiewire.com/2017/07/city-o…

2018-04-22 15:36:06
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コメント

九十九 @hakqq 2018年4月29日
常に銃後(たとい前線が発生していなくとも)の士気・世論を常に狙う総力戦時代においては、真に銃後などという安全地帯はないということである
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