11年前（2007年）の冬の、モスクワの警察署の留置場（女子房）での体験

レイ / あゆみ @bougainvilleae

ノルウェーの地方都市に夜遅くに着いて、ドミトリー行ったらもうフロントのスタッフが退勤してて、郵便受けにわたし宛の封筒があって鍵が入ってるんだけど、ものの見事に Ms. レイになってて、当然自分の寝床は女子部屋っていう、どうしようもない状況になったことあったな

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昨日、自分の名前のせいでノルウェーのホステルで女子部屋行きになったって話したけど、よく考えたらホステルで女子部屋行きになったどころか、ロシアの留置場では女子房行きになったんだった。

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ノルウェーのホステルでは結局どうしたかと言うと、しかたなく女子部屋に入り、一番手前に寝てるお姉さんを起こし、かくかくしかじかなんだけどどうしたらいいかなと相談。お姉さんいわく「気にしなくていいんじゃない？あなたがレイなら。ここでは普通のことだから」。

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（続）ここでは普通、と言われ肩をポンってされて、そうなのか普通なのか… ノルウェーもけっこういい加減なのね、と思いつつなんとなく落ち着かないもののそのまま女子部屋の二段ベッド上段で寝た。しかし翌朝、また違う誤解がここで発生していたことが発覚。

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（続）強行軍で疲れてたし、周りの西欧人女子たちは寝るのも早く起きるのも早いのでわたしが部屋で一番最後まで寝ていた。起きたら向かいのベッドの子が何も気にせずブラもしないままスマホをいじっていた。そして顔を上げてわたしにおはようと言う。女子部屋に男が寝てて、半裸でおはよう！？

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（続）わたしが若干気圧されつつ、おはようと返すと、その子は「昨日遅く来たんだってね。女子用シャワーはドアを出て左よ」と教えてくれた。わたしに女子用シャワー？と思いながらもありがとうと答えて、シャワーを浴びるべく支度をしてドアを出たら、男子部屋から来たオッサンにおはようと言われ、

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（続）オッサンからも同様に「女子用シャワーはあっちだよ」と言われる。女子部屋から出て来ておいて「いえ男です」とも言えず、ありがとうと答える。そこに昨日のお姉さんが来て、今度はわたしに「だいじょうぶよ、心配しないで」と言う。ここでわたしはやっと気づいたのだった。

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（続）昨日お姉さんが「気にしなくていい、こっちでは普通」というのは、性別取り違えで男女混ざるのが普通、という意味ではなく、「トランスジェンダーが性自認に従ってそれぞれの施設を使うのは普通のことだから」という意味だったのだ。

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ロシアの留置場のツイートしたらまたいろいろ思い出してしまった

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あの冬の日にモスクワの警察著の留置場で、ひと晩を同じ檻の中で過ごしたあの女の子たちは、今どんな暮らしをしてるんだろう。

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児童買春オヤジに薬盛って財布抜く常習犯マーシャ、両親ともに蒸発しちゃって覚醒剤売りながら15歳上の彼氏と暮らしていたナースチャ（だったと思う）、男めぐってケンカして相手の女を刺し殺したカーチャ（だったと思う）、金属泥棒無免許運転常習犯ターニャ（だったと思う）、みんなどうしてるかな…

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牢名主の常習犯マーシャは当時15歳だったはずなので、今どこかで元気で暮らしていれば26歳。さすがロシア女子、15歳ですごい色気。オレンジ色の髪で下着？姿で捕まっていた。房の中で彼女がくれたタバコがめっちゃキツくて、むせたら「お嬢ちゃんにはまだ早かったかな？」と笑われたわたし、当時22歳。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

あの日、牢を共にしたマーシャ、ナースチャ、カーチャ、ターニャ、リューバ、ヴェーラ、あと名前が出てこないもう一人、元気でいますか。再犯してムショ入りしてますか。生きてますか。中国の麻薬姫レーナ（わたし）は、あなたの国のケツの穴から出た何かのような位置と形をしている日本で生きてます。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

22歳日本人留学生男子でモスクワのアングラな世界のことなんか何も知らないうぶなわたしに、ロシア裏社会のことを丁寧に教えてくれた上に、しかたがないけど日本人の男だと言っても信じてくれず、麻薬密売中国マフィアのエキセントリックなお嬢様扱いしてくれた極悪美少女マーシャ、いつか再会したい。

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まじめな話、モスクワ裏社会で生きている彼女らにとって、牢屋で日本人に会うなんてあり得ない話で、そもそもたいていの場合彼女らは日本と中国の区別なんかついちゃいない。女子牢で出会う東洋人といえば、カザフ人、キルギス人、タジク人、中国人。信じられなくて無理はない。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

この顔と体つき（東アジア顔で色白で華奢で腕っ節が弱い）、メガネをかけて身ぎれいで、「自分は男だと思ってるエキセントリックな女の子」なら、中国人マフィアのドンのお嬢様か。中国マフィアと言えば麻薬。こいつは中国の麻薬姫に違いない、となる。ロシア裏社会の少女としては的確な推論だと思う。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

モスクワの留置場の女子房での一日で、法的な問題はどうあれ、みんなつよくしぶとく生きてるんだな、ほんとうにえらいな、と思った。わたしは今でも彼女らをとても尊敬してる。カラダ売ろうが財布抜こうが覚醒剤売ろうが人を刺そうが銅線盗んで無免許運転しようが、「法より生だ」と言われた気がした。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

いや、彼女らは絶対そんな哲学で犯行に及んでいるわけないんだけど。教育を受けられず大人から見放され、最低限の保護すら与えられない彼女たちは、無知で無謀だけど自立して生き抜いていたと思う（無謀は「お前が言うな」かもしれない）無知だけど彼女らにはそれぞれ何か人生哲学があるようだった。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

マーシャの印象が強烈なのは、牢で下着姿で署員にすら色仕掛けするのに、壁に向かって祈っていたこと、わたしを中国の麻薬姫と決めつけながら、「中国のおばあちゃんが悲しむわ、クスリはやめたほうがいい」と説教すること、（続）

レイ / あゆみ @bougainvilleae

絶えずわたしや他の子たちを心配して、しきりに寒がるわたしを抱いてあたためたり（マーシャのほうがよっぽど寒そうな格好してるのに）、反対側の房のロシア語のできないモンゴル人が苦しがっているのを見て医者を呼べと要求したり、隣の房のパキスタン人？のためにわたしに通訳を頼んだり（続）

レイ / あゆみ @bougainvilleae

常習犯で牢名主というだけでは説明がつかないくらい献身的な子でもあったから。単なる児童売春の美少女、ではなくて、どこか冷めているのに敬虔で、人を傷つけながら人の痛みに寄り添う姿があまりにも印象的だった。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

隣の房のパキスタン人？というのは、廊下を挟んで向かいの房は見えるけど、壁を隔てて隣の房は見えないので声しかきこえず、姿を見ていないので本当にそうかどうかわからないから。たしか名前はアリナだったかな…、英語が少しとウルドゥ語しかできないから何もわからずパニックになっていた。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

だめだ、なんか、一旦思いだしたら、どんどんどんどん記憶が呼び覚まされてくる。想い出語りをしてしまってすみません。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

一応、締めに、（前にもツイートしたことがありますが）わたしがなぜ捕まったのかを書いておきます。それを書かないとフェアじゃないんで。

レイ / あゆみ @bougainvilleae

モスクワの寮、冬の夜、私は酒に溺れていました。日によっては18時くらいから飲み始めて午前6時まで飲んでたりしました。ある夜、十分酩酊しているにもかかわらず（純アルコール換算300cc以上飲んでいる状態）まだ飲みたくてお酒が足りなくなり、（続）