【ルーシーとその謎】福間健二 #k2fact189
やっかいな星に悩まされた夜が明けて、くるみパンとコーヒーに黄金柑も。普通の、生活の汚れを拭きとり、少し落ち着いた。パラダイス・ロストの続き。辛抱づよいのは母たちだけではない。ルーシーとその謎が要求する、掘る作業。出てくるものに光を届ける。(ルーシーとその謎1)#k2fact189
2018-04-19 08:49:21昼は、タケノコの天ぷらなど。洗い物をしたあとは、どうしても気になる。使者を待つように、古風に、塀の上によじのぼって腰かけている複数の影。ボーイズ。夕方、西の空の三日月と金星にむかって自転車を飛ばす。それまでの、接着。はさまれた指が痛い。(ルーシーとその謎2)#k2fact189
2018-04-20 09:26:58父の死とセプテンバー9、どちらが先だったのか。解決策とは言えなくてもトレーニングにはなった出口。ぎりぎり間に合って、解放されたつもりの息子たちは洗濯バサミの拷問であっけなく陥落する。名前だけのアルカディア。きょうは金星が見えない。月も薄い。(ルーシーとその謎3)#k2fact189
2018-04-21 08:50:48人はミスをする。ひとつのミスはどうってことなくても、それがいくつも重なると大変なのだ。この谷間。シャツ一枚でいいか、それも脱いでしまいたくなるような陽気でも、寒い林。日付け、塩かげん、グレかげんをまちがえて、ルーシーによく似た影に何度も会う。(ルーシーとその謎4)#k2fact189
2018-04-22 10:09:46やはり西へ逃げる、古い言葉。グレる。それほど楽しいことではない。生活態度を注意してくれる人がいて、その部屋、そのゆっくりすぎる光の点滅を避けるために遠まわりして、溝を掘りそこなった。まずいなあと笑った。いつもちょっと遅れて。どの影も言う。(ルーシーとその謎5)#k2fact189
2018-04-23 09:09:41部分を失って機能しないもの。それを軽蔑するように小さな赤い虫が動きまわる。体長一ミリほど。それで全体。それが大量にいる。名前もわかった。ルーシーじゃない。ルーシーの夜、今夜は木星と半月が輝く。対決姿勢、と思わない程度にはおとなのルーシーだ。(ルーシーとその謎6)#k2fact189
2018-04-24 08:12:23タカラダニ。リーちゃんの息子の剛くんが調べてくれた。乾いたコンクリートの上が好きで水に弱い。苔や花粉を食べる。害はないけど潰さないほうがいい。なにかに似ている。最近また尾てい骨を打ったリーちゃんは言う。そんなやつも精いっぱい生きてんだね。(ルーシーとその謎7)#k2fact189
2018-04-25 10:41:52リーちゃんと亡くなった夫の物語。木星は来月が見ごろだってさ。リーちゃんと三人の息子の物語。赤くて小さなものは潰さないほうがいい。ルーシーの場合はどうなのか。代理人が議論してルーシーは黙っている。その持てるもの。その努力。ドアの外にだれかいる。(ルーシーとその謎8)#k2fact189
2018-04-26 09:05:40コンクリートの上。失楽園。雨があがって乾いて、虫たちとぼくが来るのを知っていたルーシーが先まわりして待っていた。父が亡くなり、それまでよりも自由になったぼくは疲れ切っていた。眠った。奇妙な部屋。大きな硬いベッドがあったことしかおぼえていない。(ルーシーとその謎9)#k2fact189
2018-04-27 08:48:37その謎よりもその普通さこそが怖いのかな。8までを読んだリーちゃんが連絡くれた。その尾骨(尾てい骨を彼女やぼくの妻はそう言う)をこれからルーシーと呼ぶことにしたそうだ。謎が一個解け、なお迷う夜も痛みも汚れも生きている証拠。リーちゃん、ありがとう。(ルーシーとその謎10)#k2fact189
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