MMD用データの扱いに関する考察

前のやつ(https://togetter.com/li/1226486)からさらにしっかり考えようとしてまとめたけどツイートするのが精神的に重すぎる内容なのでテキストで投げておくだけ。
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(2018年5月20日6時前)
ツイートで記載した方が投稿記録として残っていいのだろうけど面倒なのでテキストで挿入。
※テキストなので必要に応じて編集する可能性があることについて留意しておいていただけるといいかと。

MMD用データの扱いに関する考察と注意について

1>3Dモデルデータとして使われるpmd,pmx形式は特に"MikuMikuDance(以下MMDと略す)"での利用を主目的として製作されたプログラムのデータ形式である。pmd,pmx形式はMMDやその互換システム以外での利用には概ねデータの編集翻訳を必要とし、MMDなど専用のデータであると認識できるものである。

2>3Dモデルの制作者はpmd,pmx専用ソフトなどを用いMMD上で動作可能な3Dモデルデータを作成することができ、そのデータは一般的に「MMD用の3Dモデルデータ」として第三者にもMMD上で利用できるように公開されているが、これは特別な記載が無い限りMMD上での利用のみを想定していると十分考えられる。

3>通常3Dモデルデータは利用範囲が広く、使い方によってはゲームへ利用したり立体物として出力したり、あるいは他の予想外方法もありえるだろうが、MMDの機能上の利用方法は通常画像・映像としての出力に限定される。つまりMMD用データは画像・映像作品を作る為に作られたデータだと考えられる。

4>しかしMMD用データを公開する多くの人が個人で、しかも契約に関して素人な場合もよくあり、特に規約の内容が不十分または不適格、あるいは規約自体が無いことまであるなど「利用における一般的な契約」が正常になされているとは言えず、また使用については原則"使用者の自己責任"と言われる。

5>MMD本体は"一般的なファン活動の一環"として製作・公開されたものである。そしてMMD関係の利用も(当初は概ね)商用など正式な契約を必要とするような利用ではなく、(基本的に商用ではない)一般的なファン活動の一環に利用されてきたため、そうした契約の状態でも改善されてこなかった背景がある。

6>しかしMMD用データを配布した著作者の権利について利用者の間では、規約内容が不十分でも"一切が放棄されているもの"と認識されているわけではなく「作者の要望があった場合それに応じることが望ましい」とされている。つまり"作者の意思を尊重することがマナーとしても存在している"。

7>勿論契約内容が不適格であったり明確でないという点は度々問題とされてきた他、そもそも素材を公開している人のほとんどが個人で問題が起きた際に正式な、あるいは法的な対応を取るという事が難しく、現実として規約違反・マナー違反の行為を含め多くが放置されてしまっているという実情もある。

8>また法的な扱いについては(※筆者は専門家ではないため実用は自己責任で詳細についても各自で調べてほしいが)どう扱われるのか目立った判例が無く、人によって解釈が異なる事も多いため実際に、つまり裁判などでどのように扱われるかは"不明"だと言った方がいいかもしれない。

9>ただ主なMMDの利用者には"モラル"として作者を尊重することが前提として存在し「作者の意に反する行為は即ち不当なものだ」という共通認識が存在し利用者同士の"自治"によってそれを非難するという状態である。というより現実として「それしかできない状態である」というのが実情だが。

A>MMDの利用において作者を尊重する最大の理由は「"MMD用データを公開する"ことは通常"データ作者の厚意"」だという点にある。公開されるMMD用データの多くは無償で、「作者を尊重しなければデータが公開されずMMDの環境が成立しない」と考えられている。そのため尊重しているのだと言える。

B>また一般的に「素材を配布する」という行為には"素材を作成できる"以外に大きく2つの要素が必要だと考えられる。一つは動機「なぜ公開するのか?」であり、有償であれば金銭の見返り、無償でも使用されることで知名度を上げること(また知名度を利用した将来的な収益)が一般的と言えるだろう。

C>MMDへ素材を配布する動機はそうした現実的な動機である場合もあるが、MMDにおいては「MMDで使用されること」そのものが動機となりうる。厳密には"何かのファン作品が欲しい"という趣味的な欲求があり「MMDで使用されファン作品が生産される」ことでその欲求を満たすという動機の場合があるのだ。

D>「作品を作る」という行為には一般的にそれなりの時間や技術を必要とする。MMDというソフトにおいてはMMD用の素材などを揃えることで時間さえあれば技術が乏しくとも作品にすることも可能ではあるが時間や機材などのコストはかかり例え金銭的には無料でも「価値のある作品」が生産されうる。

E>つまり「素材を公開することで(金銭を必要とせず)価値のあるファン作品をさらに生産してもらいうる」のである。これはあらゆる素材において言えることだが、特にMMDにおいては「映像・画像作品を作ること」がソフトの主目的であるため、そうした見返りへの期待が当然として存在すると言える。

F>なお勿論、素材配布の動機としては金銭収益を目的とした現実的な理由でもファン作品が目的でもなく、「素材を配布することで人に喜んでもらいたい」と言った奉仕の精神にあふれる動機であったり、あるいはそれ以外の動機も考えられることを一応補足しておく。時には害意を含む場合もありえる。

G>「素材を配布する」ことに必要な大きな要素のもう一つは『信用』、「素材を配布しても良いだろうという信用」だ。言い換えるなら"配布することへの安心感"であり、例え素材があって動機が十分にあったとしても、その『信用』がなければ「配布するのが怖いので配布しない」という事になり得る。

H>現実の話としてMMDの関係では「一度公開されていた素材が、使用者の規約違反などを理由に公開を停止した」という例が散見される。これは「信用」からくる問題であり、信用が無く『公開した場合に好ましくない使われ方をすると判断された場合は公開が取り止められる』のである。心情の問題である。

I>そしてMMDにおける信用とは「MMDのデータ形式は多くがMMD専用に設計されているデータである」点があると考えられる。前提として(特別な記載が無ければ)意識的にしろ無意識的にしろ「MMD用データはMMDでしか使われない(であろう)」という認識で、そう信じた上で公開されているものだろうと。

J>もっと正確に言えば『特別な記載や本人による明言がない限り(または特別な約束をしない限り)「MMD用のデータはあくまでMMDの基本的な利用範囲である画像または映像の制作などにしか使われないことを信じている」ということを前提として利用する』ことがMMDにおけるモラルとして扱われている。

K>そうした流れから「MMD用のデータは(形式変換編集の有無に関わらず)映像・画像以外の利用方法をする場合は作者へ別途確認と許諾をとってから扱うべきである」といういわば"暗黙のルール"が主なMMDの利用者で共有されている。しかしMMDの性質、状況を知らない人からは分かりにくいのも確かだ。

L>また実の所『MMDの環境が「MMD用のデータが規約を守ってMMDでの創作にのみ使われる」とは言い難い』。MMDでの使用でもモラルに欠けた利用をされることは多く、MMD以外に至ってはMMDが通常MMD用の素材であることを理解されないまま他方面へも流用されているといった問題もよく発生している。

M>しかし、そうした"想定されていない状態や想定されていない範囲での利用"と言った「作者の意に反する利用方法」については、「"作者を尊重する"と考えるのであればそれを認めるべきではない」と言われる。ただしだからと言って実際に問題のある利用に対処できているとは言い難いのが実情だ。


N>(※筆者は専門家ではない)なお著作者の権利については"法的な扱い"も重要だが、まず著作人格権において制限されることが明記されているのは【利用の為にやむを得ない場合を除く】"変更、切除その他の改変"(著作権法第二十条)や"名誉声望を害する方法"(同第百十三条6項)だけである。ただし…(続)

O>※筆者は専門家ではないので注意※著作権には他にも公衆送信権(著作権法第二十三条)『公衆送信する権利を"著作者がその権利を専有する"』権利があり。この権利は同第六十三条にて「著作物の利用の許諾」があれば『その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内』で使用できる、と書かれている。

P>※筆者は専門家ではないので注意※「素材として公開したデータ」が実際の法的にどう扱われるのかは実際の判例が無ければ(あるならそれを見つけなければ)不明だが「許諾されていない範囲で他者の著作物をネット上へアップロードした場合、著作権法の違反を疑える」と考えることができると思われる。

Q>※筆者は専門家ではないので注意※ただし規約などの状態よって法的に"許可していると認識できる"と判断されればそう扱われうる点も留意すべきだが。そも現行法では想定外であろう3Dモデルデータなどが"本当に法的に著作物と判断されるのか"といった根本的な問題まである。どこから著作物か。

R>※筆者は専門家ではないので注意※まあいくら考えたとしても実際の法的な扱いについては実際の法の判断、つまり裁判官次第でありそれを説得する弁護士次第でも左右されうる。勿論状況や規約の文言などによってもケースバイケースで判断が分かれるだろうし、詳しいことなんて私では何とも言えない。

S>※筆者は専門家ではないので注意※ちなみに国内においては国内法が適応されるが、国外では当然として適応される法律が異なり、法律上の扱いについてもさらに分からなくなってくる。…極論"扱いに信頼できる相手だけに渡す"ことが配布しつつも最大限制御しやすい方法だと言わざるを得ない。

T>反対に、もし法的にも心配のない利用がしたいのなら「著作者へ直接、明示的な、許諾に関する正式な契約を交わした方がいい」とは言えるだろう。なお【明示的に】なのは、明示されていないと第三者から契約を確認・検証できず、正当でも"不当ではないか?"という疑いを払拭できない点への配慮だ。


U>なお実情としてインターネットには「使っていいか分からないけど使ってしまう」という事が当然として行われている面がある。それは単純に「違法な利用の横行」という事に限らず"事後的に承認される"とか"黙認される"事もあり、権利者の利益や心情を損なわない範囲では容認されている部分もある。

V>しかし"権利者が認知してない"や"対応が困難"などで対処できていない場合は「認められないものがネット上に残ってしまっている」場合も往々にしてある。なので"既にある・残っているから大丈夫だろう"という考え方は危険。権利が不明な物の使用は自身の責任が負う危険もよく考えて使うべきだ。


W>「MMD用のデータは特別な記載がない限りMMDの範囲での利用に限るべきだ」と強く言われるのは勿論"MMDの信用を損ねないために"という面も強いが、好意的に翻訳をするなら『許諾が不透明なまま使った場合、著作権法違反の可能性を疑われあなたの信用が損なわれますよ』とも意訳できるだろう。

X>またよく言われる「書かれていないのは大丈夫」という論理は(権利者軽視の)倫理的な問題があるだけでなく"無許諾な利用"とされる恐れや、『不可であると明確に書かれている所を見落としてしまっている』危険性も存在する。後者は権利者が複数となる"二次創作"などでは特に注意が必要である。

Y>ただ現実として著作物に対する違反行為の全てへ完璧に対応することは現実的とは言い難い。個人ともなればなおさら。しかしだからと言って「著作者なんて関係ない」などと権利者をないがしろにすれば"ルールなどを軽視する人間だ"として信用を損なう事となるのはごく当然のこと。不信感を抱かれる。

Z>厳格な法的な話ではなく倫理の話として「倫理に反する行為は信用を損なうもの」である。ただもちろん人間はその欲求や衝動によって倫理観を失ったり、あるいは正義の感覚の違いによって異なる倫理観を持っていることも珍しくはない。しかしそれは倫理の裁量が決して個人ものではないという証左だ。


〆1>マナーやモラルは一見不合理に見えたとしても何かしら理由があって形成されていることもある。どうしても変えなければならないようなものだとするならば、変えるに足る理由と正当性を示し説得して見せるしかない。そしてその考えに十二分な正当性がないと思われればそれを変えることはできない。

〆2>マナーやモラルは一見して分からないことが多い。明文化されていない"暗黙の了解"は第三者からは理解されにくく決して良い状態とは言えない。時には"暗黙の了解が存在することの喧伝"さえも必要である。…MMDに関しては「想定していない」ことを配慮して出来てしまった不文律だが…。

〆3>繰り返しになるが「当たり前のように使われている」からと言ってそれが本当に正当なものであるとは限らない。勿論マナー・モラルについてもそうだが、"配布素材の利用"という行為でさえリスクが無いとも言えない問題もある。利用者はよくよく考えた上で、基本自己責任で扱わなければいけない。