P-PingOZ広報 第3話『黄金(きん)を剥がして』

いつかどこかの物語、第02特区、通称OZに暮らす人々の生活を覗き見する番組のTwitter配信アーカイブです 今回の主人公:お金持ちの未亡人(40歳、女性)・出張ホスト(22歳・男性) 前:https://togetter.com/li/1228692 次:https://togetter.com/li/1233883 続きを読む
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いつかのどこかのお話です。 あるところに、第02特区という島がありました。 みんなはこの島をオズと呼び毎日を暮らしています。 この島では、住民の皆が主人公。 そんな彼らの様々な営みを、ひととき、覗いてみましょう。
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アンナ・ウェルフェア夫人。亡夫の莫大な遺産を相続したご婦人が亡くなったという報せは、すぐに葦の歌う【ゴシップとして話題になる】ところとなりました。人生を三度遊んで暮らせると言われていた財産は三分の一に減っていて、しかも、亡くなる直前まで出張花売りの男が出入りしていた、と言う噂。
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ご遺族、特に夫人のお姉様がそれはそれはお怒りで、血眼でその花売りを捜そうとしましたけれど、男性はまだ見つかっていないそうです。今日の主人公は、そのアンナさんと花売りの男。二人の秘密が始まった瞬間を、覗き見です。
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P-PingOZ第3話 『黄金(きん)を剥がして』
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ましろ地区、午後3時の某キャッスルマンション【富裕層向け超高層複合マンション】。白と淡い橙色の上品な寝室で、車椅子の女性と若い男性が向き合っています。なんだか、険悪な雰囲気です。車椅子の女性が、アンナ・ウェルフェアさん(40)。険しい表情のお相手は、誓(ちかう)さん(22)。1
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アンナさんは長らく彫像病【全身の筋肉が徐々に衰弱し、動けなくなってしまう病気】を患っており、旦那様に先立たれたばかり。そんな彼女を慰めるため、アンナさんの姉に雇われたのが、派遣型花売りの誓さんです。彼女たちに、一体何があったのでしょう? きっかけは、アンナさんの頼み事でした。2
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「今日は日差しが柔らかくて、いいお日和ね」アンナさん、双眼鏡から目を離して誓さんを振り返りました。これで覗く眼下の世界について、誓さんにあれこれ尋ねるのが二人の楽しいお喋りの時間です。ですが、今日のアンナさんは、あまり元気がない様子。「貴方、こちらご覧になって」3
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いつものように、誓さんに手渡される双眼鏡。「下の道路に、子どもたちが見えまして?」「……ええ。男の子と女の子? 来た時にもいたけど、良い服だったね」「お隣(の家)の子ども達なんです」「ああー……確か、仲良くしてるって」「まあ。よく覚えてらしたわね」4
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「アンナさんの事なら何でも覚えているよ。それで?」「お父様が亡くなられたんです。その……ご自分で、お命を……」アンナさんは、整ったブロンドを指にからめます。「それは、驚かれたでしょう」誓さんの慰めに、アンナさんは目を伏せます。5
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「それも悲しいことだけれど、お父様の財産がお勤め先だったヘイゼル社に差し押さえられて、あの子らへ渡らず、家にも……」「帰れないんだね」オズに本社を構える企業の社則は、時に法よりも強く従業員を呪います。お隣は、出した損失を金銭以外で賄うケースだったようですね。6
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「わたくし、何かしてあげたくて」アンナさん、膝掛けの下から革袋【使い捨てクレジットカード】を取り出します。「これを、あの子達に渡して欲しいの。金貨が100枚入っています」うつぶし地区の平均年収くらいの金額です。誓さんはそれを聞いて、難しい顔になりました。7
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「質問、いいかな」「ええ」「お金を彼らに渡して、その後は?」首を傾げるアンナさん。「ここから出たことのない子が、大金を持っているのはとても危ない」「公的機関で保護してくださるのではなくて?」「貴女が期待しているものは、錆びたブリキと同じだ。分からないのも無理はないけれど」8
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キャッスルマンションには、必要な施設がほぼ揃っています。アンナさんのように、ほぼ一生、ここから出なくても良いぐらい。彼女は、マンションの外に、知らない種類の悪意があると知らずにいるのです。「公営の施設で引き取られて……結局、ヘイゼル社が身元をおさえて、損失補填に使われる」9
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誓さんの苛立ちも、無理のないことです。今話したことは誓さん自身の過去のこと。彼は親の損失補填のため、会員制違法花売りを強制されていました。そのせいか、どうしても厳しい事を言ってしまうのです。こんな風に。「……そんな中途半端な手助けなら、しない方がまだ良い」10
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――こうして、番組冒頭のシーンへ戻って来ました。11
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アンナさんは、誓さんを穏やかな顔で見上げました。「だから、貴方にお願いするんです。貴方なら、わたくしより、使い道を知ってらっしゃるはずだもの」アンナさん、誓さんの手を握りました。12
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「わたくし、とても幸せな人生でしてよ。病気との付き合いは大変だったけれど、満ち足りて、良い夫(ひと)にも出会えたもの。まさか私より早くいなくなるなんて、思わなかったけれど」アンナさんは、写真立ての旦那様に微笑みました。13
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それから、至る所に取り付けられた防犯カメラを眺めます。「あれは、他の家族が置いていった目と耳です。……貴方もそうでしょう?」誓さんはそっと手をほどくと、アンナさんの膝掛けを直します。「この半年、ただお喋りだけで過ごしたのは、思うところがあったからではなくって? 」14
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「……」「夫と出会っていなくて、もう少しお嬢さんだったら、わたくしも分からなかったでしょうね。お顔立ちも王子様みたいなんだもの」「貴女だって美人さんじゃないか」「いやだわ、皆様にそうおっしゃってるんでしょう?」これには誓さんも、根負けの苦笑い。15
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「……最近、手の指も痺れて動かなくなるんです」うつむいたアンナさん、穏やかに語ります。「もう数ヶ月で、わたくし、動けなくなってしまいます。そうなる前に、本当に困っている方の為に、お金を使ってしまいたいの」「……」誓さん、大きなため息をつきました。16
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CM≫ 大切な日を暖かいスープとオーガニック料理で飾ります。四年連続五つ星、満足のホスピタリティ。ミドヴィエーチホテル45階展望ラウンジにて、お客様のお越しをお待ちしております。
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CM≫【ヘイゼル社・サンドリヨン無償交換修理のお知らせ】弊社掃除人形のサンドリヨンについて、セキュリティ上の不具合と、それに伴う動作不良が発生しております。無償修理と交換を行いますので、下記アドレスか電話番号へご一報ください。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
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