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洲央 @laurassuoh
選ばれた理由が明確ではないとしても選ばれた事実は変わらない。すると、ルックスが良くて明るく、運動もできてフルートの腕もかなり上手い、という傘木希美は多くの場面で選ばれる側だったし、「見つめられる側」だった。それは鎧塚みぞれとの関係性でもあった。みぞれにとって希美は特別でも、
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希美にとってみぞれはその他大勢の中のひとりだった。この「見つめる側」(=みぞれ)「見つめられる側」(=希美)というのが、「リズ」(=みぞれ)「青い鳥」(=希美)の関係性でもあった。しかし、新山先生がみぞれに音大を勧め、希美には勧めなかったことがきっかけで希美は(もしかしたら)初め
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て「見つめる側」になった。希美自身は最後になるまで半ば無自覚のまま、みぞれと同じ音大を受けると言い、自分が「見つめられる側」(もかぺさんの言を借りるなら選ばれる側)にいたいと執着した。希美は自分の中の感情を上手く理解できないまま、部長副部長と狭い部屋で話をした。
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一方でみぞれは自分がずっとリズの立場に感情移入しようとしてきたことを新山先生に明かす。そこで、試しに青い鳥の方に移入してはどうかと言われ、気付きを得る。その後のソロの掛け合いの演奏で覚醒したみぞれ。希美はその音色によってみぞれとの間にある音楽的な才能の隔たりと、自分のこれまでの
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行動の醜さを自覚してしまった。生物室的なあの部屋に希美は逃げた。希美が善人なのはみぞれに「みぞれに負けたくなくて音大受けるって言った」と素直に明かせたことであり、「私、普通だから」「私、みぞれが思ってるほど特別な人間じゃないよ」と言えたところ。そして、実はみぞれにとっては希美の
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音楽的才能はそれほど重要ではない。希美が自身を特別じゃないと思っていても、みぞれにとっては「ぜんぶ特別」なのが希美。みぞれのこうした肯定は希美がようやく向き合った希美自身の邪悪さえも包んでしまう類の無垢な赦しで、しかし希美は強い人なので「ずるいよ」「それ、よく覚えてないんだ」と
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みぞれをあくまで突き放そうとする。みぞれの無垢な愛を受け入れられるほど自分ができた人間ではない、特別なみぞれと特別ではない自分では釣り合わない、そういう類のことをまだ希美は考えている。「大好きのハグ」「希美はすごい」「みぞれは努力家だよ」ここで「努力家」と希美がみぞれの才能を評し
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たことは、これまでも希美がみぞれの努力を見ていたという意味で、けれどもそのことに希美は今まで無自覚だったことを示す。すなわち「見つめられる側」だった頃の希美も、みぞれを視界の端に捉えていた可能性を示唆する。けれど同時に、希美自身も努力をしているので、それでもみぞれのようになれなか
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った悔しさもにじんでいる。「希美の声が好き。話し方が好き。足音が好き。希美の髪が好き。希美の――」「みぞれのオーボエが好き」音楽とは関係ない部分でのみぞれからの「好き」をたくさんもらった希美が半ば無意識に漏らしたのは「音楽」の好きだった。ここにおいて、希美からみぞれへの矢印は音楽を
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介してであったことが示され、希美自身もそれを認める。と同時に、自分の才能がみぞれに及ばないこと=敗北を受け入れ、笑う。あの笑いは多様な意味が含まれ、音楽で負けたくなくてみぞれによそよそしく当たっていた自分の愚かさや、みぞれの無垢さや、事態を乗り切った爽快感がそこにある。
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「ありがとう。ありがとう、みぞれ。ありがとう」とみぞれに言える希美はやはり善人で、みぞれの気持ちに対するありがとうでもあり、自分の醜さに気付かせてくれたことへのありがとうでもあった。ここにおいて、「見つめる/見つめられる」の一方通行だった矢印は取り払われる。音楽という要素を介さな
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い関係性にようやくたどり着く。そして、希美は図書館(=一般大学の受験)へ通い、みぞれは音楽室(=音大受験)へ通う。けれども放課後には二人で帰るようになる。この時、光の中に出るのはみぞれが先だ。「ありがとう?」「なんで疑問形なの」帰り道、最初よりも距離が縮まった二人。
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「私、みぞれのソロ、完璧に支えるから。今は、ちょっと待ってて」と希美が言う。前半部は音楽的にみぞれに及ばないことを認めつつ、足を引っ張らないと宣言する希美のプライドの話である。もちろん希美は、完璧に支えるから安心して全力で吹いて、という激励の意図でみぞれに言ったつもりでもある。
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後半部は、何を「ちょっと待ってて」なのかが難しい。音楽的な意味で追いつくから、という希美の負けん気にも思える。気持ちの整理がつくまで待ってて、という希美の半ば告白的なものにも思える。でも多分、この台詞を受けたみぞれが「私、私もオーボエ続ける」と答えたことから、同じ高さに立てなくて
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ても希美自身フルートを続けるから、みぞれもオーボエを続けてね、という意味が一番近いのではないかと思う。そういう意味だとすれば、希美が楽器をやってるから楽器をやっているみぞれに、希美とは関係なく楽器をやってほしいという意図がある。同時に、希美が楽器を止めたらみぞれも止める、と思って
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いるようにも受け取れる微妙なところ。しかしいずれにせよ、みぞれはオーボエを続けるといったので、希美の意図がどうであれ(将来希美が楽器を止めたとしても)みぞれはオーボエを続けるのだろう。これは、原作の第二楽章後半の最後の方や、外伝でも示されていた。けれど希美は負けず嫌いな部分もある
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のでそう簡単に楽器を止めるとは思えない。みぞれと希美の関係性はかなり歪なものだったが、それが音楽を介さなくなることで健全なものになりつつある。みぞれは希美に出会わなければ何もなかった。しかし、希美もみぞれに出会わなければ醜さを自覚しないまま井の中の蛙的な「選ばれ方」で満足して、
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それなりの人生を送っていたであろう。希美はみぞれに出会ってしまったことで「小鳥たちの囀り」の中心にいながら、一羽で高く飛ぶ鷹の孤高を目にしてしまった。(作中、小鳥たちの囀りと評されるシーンがある。また、鷹と言っているが恐らく鳶らしき茶色い鳥が一羽で飛んでいるシーンがある)
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「「本番がんばろう」」「は、ハッピーアイスクリーム!」「なにぃ、みぞれ、アイスが食べたかったの?」と、ここで会話は終わる。希美が振り向き、みぞれに何かを言う。観客には何を言ったのか分からない。しかし、それはもう、外野の視線が必要ないことの示唆でもある。
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みぞれ、普通にピアノ弾ける(家にピアノあるだろう)し、オーボエもマイ楽器なので家がかなり金持ちで音楽的素養は小さい頃から自然と身に着いていますよね
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『リズと青い鳥』で一番見ててしんどいシーンは、みぞれを希美が誘うシーンの希美側の反応の変化だと思っている。新山先生に声をかけられて以来、希美からみぞれを誘うようになる。初期は誰も他に誘う人がいないみぞれを見てほっとしたような優越感に浸る希美だったが、プールに後輩を誘っていいか尋ね
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られた時は表情が一瞬だけ曇ったし、あがた祭にも希美から誘った。「選ばれる側の私が選んでやっている」という意識が垣間見えるし、そういう関係性でみぞれを見ている所に優子と夏紀は感づいているのでとても胃が痛い。しかも希美のみぞれに対する気持ちは、これまでは無意識の優越感で、次は嫉妬から
洲央 @laurassuoh
生まれた独占欲なので性質が悪すぎる。しかし傘木希美の本質が人間のクズではなく善人なのは、それでもみぞれのオーボエを聞いた時に「今まで私のレベルに合わせてくれてたんだよね」「みぞれに負けたくなくて音大行くって言った」「私、そんな特別な人間じゃないよ」と罪悪感まみれで言えたこと。
洲央 @laurassuoh
音楽というフィルターを介さず付き合えるようになって、ようやく放課後一緒にかき氷などを食べに行く仲の良さになった。というか、希美からみぞれに向かう目線の性質が変化した。今でもみぞれに「ぜんぶ特別」と言われたことに対する優越感はあるかもしれないけれど、それだけじゃないことが重要だ。
洲央 @laurassuoh
むしろ、希美にとってもみぞれは複雑な意味で「特別」になったのだと思う。あるは、一般的に見ればその「特別」は「普通の友情」なのかもしれない。けれど希美にとって、「選ぶ/選ばれる」「見つめる/見つめられる」だけじゃない関係性、というのはやはり特別なのだろうと思います。
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