ラスト・ガール・スタンディング #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ラスト・ガール・スタンディング #2」 #njslyr

2011-04-11 11:52:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(女子高生ヤモト・コキは転校まもなく繁華街で暴漢に襲われる。死の危険に際して、彼女の奥底に眠っていた名付きのニンジャソウル「シ・ニンジャ」が覚醒、暴漢を惨殺。二週間の入院を経て登校した彼女に待ち受けるものは何か?)

2011-04-11 11:56:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」窓の外で罵声。ヤモトは我にかえった。「シャッコラー!」「ナマッコラー!」「アッコラー!」ヤクザ・スラングとヤンク・スラングを織り交ぜた恫喝の文句だ。コワイ!授業中であるが、生徒は先を争って席を立ち、窓にかじりつく。

2011-04-11 12:25:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ!君たち!授業の途中ですよ!」「おい、見ろよ!」「誰だあいつ……」「あれだよ、転校生……」「抗争?」「髪型が……」「大丈夫なの?」口々にさえずり合う生徒たち。「君たち!席に戻って!」「だってセンセイ、他校の奴らですよ、いっぱいだよ」「アイエエエエ!?」

2011-04-11 12:29:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトはアサリの隣に立った。アサリはヤモトを見て、「ほら、あれ、朝の」校庭を指差した。ナムサン!他校の制服姿のヤンク三十人超が校門を突破、そして生徒の一人と対峙している。後ろ姿であるが、そのアフロヘアーはあまりにも特徴的だ。

2011-04-11 12:33:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤンクとは、反社会的な高校生が学校単位で組織する危険な武装自警クラン構成員の総称である。日本において、公教育制度の成立とともにその存在はあった。戦後混乱期が生徒に自衛を要請したのである。今となっては、見ての通り、社会秩序を乱すばかりの集団だ……。

2011-04-11 12:39:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダオラー!」「ナンオラー!」ヤンクはリベットを打った制服をてんでバラバラに着こなし、その半数が違法改造されたスクーターにまたがっていた。もう半数は、そのスクーターの後ろに乗って移動してきたのだ。違法な二人乗り行為である!

2011-04-11 13:03:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクーターにはサムライめいた巨大な旗が大量に設置されていて、丸みを帯びた書体でピンクの威圧的スローガンが書き込まれている。「毎日暇している」「負けぬ」「恐怖」「大漁」「勉強する変わりにケンカだ」「ホームラン」。頭目と思われるスモトリ級の巨漢が釘バットを振り上げた。「ダーラー!」

2011-04-11 13:08:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

お互いにアイサツは済ませたのだろうか?「とっとと始めるぜ。メシの時間だ」アフロヘアーは腰に手を当て、挑発した。「ザッケンナコラー!」頭目は釘バットをためらいなくアフロヘアーへ振り下ろす。ナムサン!だが、おお、見よ!彼の頭がトマトめいて潰れると誰もが予想したが、そうはならなかった!

2011-04-11 13:33:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」アフロヘアーは片手で釘バットを掴み、遮ったのである。ヤモトの首筋を、ざわざわした感触が駆けた。「ナンオラー?」「スッゾコラー?」ヤンク達はお互いに顔を見合わせ、あるいはわけもわからず叫んで威嚇した。頭目は釘バットを持ったままブルブルと震えている。

2011-04-11 13:38:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトは自分がバタフライナイフを止めた時の感触を思い出していた。頭目は釘バットを引くこともできないのだ。「お前ら、死ぬんだぞ」バットを掴んだまま、アフロヘアーが不敵に言う。校舎の会話が教室のヤモトの耳に入るのはなぜか。無論それはヤモトに備わったニンジャ聴力のためだ。

2011-04-11 13:42:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あいつ…!」「どうしたの?」アサリがヤモトを不安げに見つめる。あいつ、何かやるつもりなのか、ここで?ヤモトの胸騒ぎが強まる。あのアフロヘアーは自分の同類だ。ヤモトはこの正体不明の直感に疑問を持たなかった。実際その直感はアタリである。ヤモトは彼のニンジャソウルを知覚しているのだ。

2011-04-11 14:12:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾコラー!」取り巻きのヤンク軍団は興奮し、スクーターを空吹かしする。カミナリめいた騒音が教室の窓ガラスを震わせる!「ヘイヘイ!ヘイヘイ!」ヤンクのスクーターが数台、睨み合う頭目とアフロヘアーの周囲をグルグルと走行し始める。学校の管理者は見て見ぬ振りを決め込んだか、無反応!

2011-04-11 14:20:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトは衝動的に窓を蹴破って校舎へ飛び降りそうになった、そして思い留まった。そのときだ!「あれは!」「何だ?」「手品?」「コワイ!」生徒達がざわめいた。その時にはもう、全てが終わっていた……まさに一瞬の出来事だった。

2011-04-11 14:30:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは白いコロイド光だった。全てのヤンクの頭部、鼻や口から、白い光の筋がアフロヘアーのかざした左手へ向かってまっすぐに伸び、集束したのだ。クモ糸か何かのようなそれが見えたのは一秒にも満たない。直後、旋回していたバイクはコントロールを失い転倒、スピンしながら地面を滑った。

2011-04-11 14:33:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

がくり、がくり、がくりがくりがくり!ヤンク達は主を失ったジョルリ人形めいて、くずおれ、倒れ、スクーターから滑り落ち、倒れ伏した!頭目とて例外ではない!30人のヤンクが横たわる中、アフロヘアーただ一人が立っていた。「ヘッ!」彼が侮蔑的な笑いを吐き捨てたのをヤモトは聞き取った。

2011-04-11 14:40:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

校門の外、数台の装甲ビークルがサイレンを鳴らしながらドリフトし、停止した。学校管理者の通報を受けたマッポが到着したのだ。「あー君!そのまま、そのまま!動くと私たちは君を撃つかもしれない!そのままだぞ!」拡声器から轟く警告。ジュッテや鎮圧銃を手に手に構えたマッポが次々に降りてくる。

2011-04-11 14:50:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトは教室を飛び出していた。「ヤモト=サン!?」「気分が悪いの」アサリに短く答え、階段を駆け下り、廊下を走る。上履きのまま玄関を走り出ると、校庭では大人しくマッポに囲まれたアフロヘアーが今まさに連行されようとしていた。地面には倒れて動かないヤンク達……

2011-04-11 15:20:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「殺したの!?」ヤモトは叫んだ。アフロヘアーはヤモトを見返した。口元のニヒリスト的な笑みが一瞬だけ消えた。「さあ歩け!」チョウチンを持ったマッポがアフロヘアーの背中をどやしつけた。「痛え、被害者ですよ俺は」アフロヘアーはのんびりと答える。「チッ、話は署で聞く!歩け」「ハイ、ハイ」

2011-04-11 15:28:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイッ!ショーゴー・マグチ!」スチール・ショウジ戸の覗き穴が開き、ドスのきいた声が呼びかけた。ショーゴーは1ユニットしかないタタミの上で膝を折って寝ていた。隣にはカワヤ式の便座がある。「ショーゴー!聞こえねえか!お迎えだぞ!一生そこにいてえのか!」

2011-04-12 16:08:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まだここに来たばっかりじゃん」ショーゴーはアフロヘアーをいじりながら起き上がった。「まあいいや。だから俺は無実だって言ったろ、勝手にあいつらが心臓発作でさ」「黙れ!」「お迎えって、誰だよ」「……」ショウジ戸の向こうが沈黙する。

2011-04-12 16:12:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

返答の代わりにスチール・ショウジ戸が開いて、照明の光が留置室に入ってきた。室外へ出ると、廊下では看守ともう一人、スーツ姿の男が待っていた。「ドーモ。ショーゴー=サン」スーツ姿の男がショーゴーにオジギした。「私の名はウミノです。探すのにちょっと難儀しました。お会いできて嬉しいです」

2011-04-12 16:33:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「誰よアンタ」ショーゴーはアイサツを返さず、アフロヘアーをいじりながら態度悪く言った。現代的退廃高校生態度!一瞬の気まずい沈黙があったが、ウミノはにっこり笑った。「君の身元引受人ですよ。まあ、君が望むならあのまま大量殺人事件の容疑者になるのもいいが」

2011-04-12 16:42:44