陰謀論ねぇ。有名なものを挙げると、たとえば「MKウルトラ計画」に関して、映画「陰謀のセオリー」で描かれているように、秘密でもなんでもなくアメリカでは冷戦の名残として様々な物語にオマージュされている(ex.American Ultra、CHUCKなど)。 pic.twitter.com/cIOoIKrR2L
2018-05-31 16:13:41自由と民主主義の国アメリカでは、わりと頻繁に国民の人権をふみにじるような実験が繰り返されている。ネプツニウムの発見で名高いマクミランとアベルソンはともにカリフォルニア大学バークレイ校で研究を続けていたが、同研究所にはかのロバート・オッペンハイマーが在籍していた。 pic.twitter.com/3QEt8Dcd88
2018-05-31 16:16:48ロバート・オッペンハイマーは言うまでもなくロスアラモス研究所所長であり、俗に「原爆の父」とも呼ばれている。彼はそれ以前にケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所に在籍しており、この研究所にはネプツニウムの共同発見者であるフェザーとブレッチャーらがいた。 pic.twitter.com/kbl6UW85ZE
2018-05-31 16:20:44自然界にありふれた放射性物質、ウラン238は中性子を捕獲しやすいという性質がある。このため、逆に中性子を当ててあげるとウラン239という物質になる(質量数が増えるので238+1=239というわけ)。では、ウラン239に中性子を当てるとどうなるのか。ネプツニウム239になる。 pic.twitter.com/4t2X7gOH1i
2018-05-31 16:22:47ネプツニウムに中性子を当てるとプルトニウム239になる。プルトニウムの毒性やら危険性に関してはぼくが説明するまでもないので、ここでは割愛する。
2018-05-31 16:24:01一体なにが言いたいのかというと、プルトニウムはオッペンハイマーを中継してキャベンディッシュ研究所とカリフォルニア大学バークレイ校が発見したわけなのだ。
2018-05-31 16:24:23余談ながら、ロスアラモス国立研究所の設計にはネプツニウムの発見で名高い、マクミラン(エドウィン・マクミラン)が深く関わっている。 pic.twitter.com/bODealNVnZ
2018-05-31 16:26:24ところで、マンハッタン計画によってもたらされたプルトニウムは長崎への原爆投下に先立って、アメリカ国民に投与されている。主だった関係者には放射線科医師のロバート・ストーンなどがおり、最初に放射性物質を患者へ投与したのは1936年の出来事だった。 pic.twitter.com/3B0WKIxk6b
2018-05-31 16:28:21マクミランの話に戻すと、彼は1951年に超ウラン元素発見によりノーベル化学賞を受賞している。同時受賞者にはグレン・シーボーグが選ばれた。彼は受賞に先立つこと1941年、プルトニウム239(ネプツニウムに中性子を照射して、単離させたもの)を発見している。 pic.twitter.com/PTHOph3ETD
2018-05-31 16:30:30シーボーグは1944年、プルトニウムの危険性をこう著している。 「プルトニウムは元素であれ化合物であれ、その危険性は極めて高い。長期間にわたってα線を放射することから、体内被曝に関しては1mgか、あるいはさらに微量の10μg程度でも致命的な恐れがある」と。 pic.twitter.com/yNaE4o2gt1
2018-05-31 16:32:08ストーンとシーボーグは純粋に、科学的見地から人体における許容線量の把握に努めていた。これが後には軍学協同というシナリオに結びつくのだが、この辺りはアイリーン・ウェルサム「プルトニウムファイル」に詳しい。 pic.twitter.com/kIB27ODMr3
2018-05-31 16:33:31あとはプルトニウムファイルにお任せしよう。カリフォルニアで始まった原子力研究は、やがてプルトニウムの人体投与という狂気の沙汰に発展する。障害児の給食(オートミール粥)に放射性同位体を混入させてみたり、脳下垂体の治療でプルトニウムを注射してみたり、妊婦に放射性物質を飲ませてみたり。 pic.twitter.com/XUcVgZyXPg
2018-05-31 16:41:23MKウルトラ計画など屁みたいなものである。映画「ジェイソン・ボーン」も、こうした史実に着想を得ているけれど、さすがにプルトニウム実験は題材にするのも憚られるからか、あまりフィクションの世界でも触れられていない。
2018-05-31 16:45:22長い前置きになってしまった。 きょうの一冊:アイリーン・ウェルサム「プルトニウムファイル」 amazon.co.jp/dp/4798130885/
2018-05-31 16:45:46ウェルサムは94年のピューリッツァー賞を受賞している。当時に在籍していた、アルバカーキトリビューン紙での取材によって、国家による人権侵害のなかでも異様な狂気さえ感じさせる本件を明らかにしたことが評価された。その年、日本でも翻訳版「プルトニウムエクスペリエンス」が刊行されている。 pic.twitter.com/2JCI2eujFl
2018-05-31 16:47:21実はこの94年版(邦題はセンスのかけらもない「マンハッタン計画」)を古本で読んだことがある。翻訳が広瀬隆でもあり、やや作為的なものを感じてしまったのは若気の至りだろうか。のち、2000年にウェルサムの手によって上梓された「プルトニウムファイル」だが、たいしてウケなかった。
2018-05-31 16:48:14東日本大震災と福島第一原発事故を経て、脱原発運動に便乗した出版社からこの新装版が出たわけだが、ウェルサム自身は原発問題については何らイデオロギーを持ち合わせてはいない。どちらかと言えば医療系ジャーナリストなので、度を越した政治利用は公平性の観点からも、控えていただきたいなと思う。
2018-05-31 16:50:43動画であれば本人が自らの言葉で語っているし、問題を適度に矮小化することでわかりやすくなっているので、英語を解するひとは動画でどうぞ。 youtu.be/WT6wCfiOZxg
2018-05-31 16:52:33芸人の関暁夫が語る「信じるか、信じないかはあなた次第」といった作り話には罪がないけれど、ウェルサムは身命を賭して危険な取材に取り組んでいた。映画になった「スポットライト:世紀のスクープ」などもヴァチカンと教会における児童の性的虐待を取り上げているけれど、世が世ならば命がけである。
2018-05-31 16:53:38陰謀論を真に受けるひとは、ナイーヴでおめでたいものである。世界には我々の知らない恐ろしい出来事が、数えきれないほど埋もれているのだ。いずれまた、別の機会にでもそうした出来事を掘り起こしてゆこう。 (このまとめは2016年10月の投稿に画像を添付して、新たにまとめました)
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