バスケ部響と園芸部暁

百合っていいよね
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たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

黄昏時の校舎は窓ガラスに反射して、私たちの眉をひそませる。 門に立つ体育教師はまるで羊飼いのように生徒を帰路に追いやる、その中で私は姉を待つ。 「なんだ響、まだ帰ってなかったのか」 「姉さんを待ってるんだ」

2018-06-01 08:17:45
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

あまり話したことのない体育教師は、何をしているんだと言いたそうに私を見つめる。 「ここで待っていては、ダメかな」 「一人で帰れるだろう、小学生じゃあるまいし」 「私と姉さんの、唯一の約束なんだ」 この人には何を話しても無駄だろうなと、そう思っていた。

2018-06-01 08:21:27
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「俺もさっさと帰りたいんだがな、お前の姉って確か園芸部だったか?迎えに行くぞ」 私にとって予想外だった。何を言っても帰れの一辺倒だと思っていたせいもある。 「ありがとう、先生」 「どこぞのチャラついたやつと違って、お前は真面目だからな、ほっといてもずって待ってるだろ」

2018-06-01 08:25:45
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

東棟三階、部室が集まるこの校舎の廊下の、燻んだ木のタイルを夕日が照らす。 「響はたしかバスケ部だよな」 「うん、もうすぐ新人戦だからみんなピリピリし始めてる」 「体育教師の俺が言うのもアレだが、スポーツ根性なんてなんの役にも立たないのによくみんな頑張れるな」

2018-06-01 08:31:07
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「座ってばかりの授業に飽き飽きして、あまりある若さをスポーツで発散させたいんだよ、みんな」 「そのストイックさを島風にも見習って欲しいもんだけどなぁ」 少なくとも、この人はみんなが噂する体育教師とは違う一面があるような気がした。あまりいい噂ではなかった気がする。

2018-06-01 08:34:06
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「園芸部の部室、ここだね」 「部室にいなかったら帰ったってことで帰ってくれな、今日は楽しみにしてる映画があるんだ」 「ふふ、わかった」 先生が部室の扉を開ける、日の差さない薄暗い部室には、シルクのような髪が寝息とともに揺れ動いていた。

2018-06-01 08:38:54
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「こいつは…」 呆れたように頭を掻きながら、ため息混じりに暁に寄り詰める。 暁の傍には、花の写真が写されている本が開かれていた。 「起きろー、下校時間だそー、おーい」 花言葉の辞典だった、開かれていたページにはリナリアという花が写っていた。

2018-06-01 08:46:07
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「っぴぁ!?」 「うおっ、変な声出して起きるなよ」 「おはよう、暁」 空が紅く染まる中、少し薄暗い部室で、少しだけ賑やかな時間が流れていった

2018-06-01 08:51:59
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「まったく、部室で寝るか?普通」 「もう!いいじゃない別に!」 「でも今日は園芸部の活動日じゃないよね」 「あー響までいじわるするー!」 「まあなんだっていいけどさっさと帰れ、俺も帰りたい」 「うわー職務怠慢ー」 「そう言う意味の言葉じゃないぞ、さっさと帰れ」

2018-06-01 08:56:06
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「はあー、すっかり日暮れになっちゃったわね」 「そうだね」 「今日の晩御飯何かな」 「お肉が食べたいね」 「…ねぇ、響」 「うん?」 ふと、暁が立ち止まる。その後ろ姿は、少し寂しげで、夕焼けの坂道に陰を落とす。

2018-06-01 09:11:53
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「なんでもないっ、早く帰ろ?」 「…うん」 口にしかけた言葉を、私は知っている。 部室にあった、リナリアの花言葉 「この恋に気づいて」

2018-06-01 09:14:03