突発現パロSS、第五話

瑞鳳と多摩の出番
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鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「はいっこちらロォソン公園店......ちがった球磨カンパニーです!」 陽光溢れる、音の響きにくい部屋で緊張感溢れる第一声が発された。 大井は目を丸くする。 『......新しく入ったコかな?』 「あっ先日入社致しました鹿島と申します!」 『初々しくていいね。定時連絡、大丈夫かな』 「はい!」

2018-06-01 20:15:15
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『最上だよ、業務番号は921220。特に問題無いよ』 「えーと9212......」 『見つからない?たぶんいちばん上だよ』 「あ、ありました!ありがとうございます」 『じゃあ切るね。僕も頑張るから、君も頑張って』 雑音の後、通話が切れる。 「......ふっ......」 「わ、笑わないでくださいよぉ」

2018-06-01 20:14:33
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「そんなに緊張した?」 「だって電話なんて友達としかしないですもん」 「かけてくるやつら全員友達と思って大丈夫よ。それにしても貴女の慌てっぷり、香取が初めて電話とった時とそっくりだったわ」 動悸を宥めながら、香取姉、と呟く。 「香取も今日から出てるし、しばらく待てば連絡来るわね」

2018-06-01 20:22:00
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「私、今日ここで過ごすんですよね?」 「ええ、社長直々の御達しだし」 「私、香取姉とお話しして良いんですか?」 「うん、そういう業務だもの」 あまり長話はできないけど、と付け加える。 二週間以上会えないと思っていただけに、俄然鹿島の目が輝く。 「まず何を言おう」 「店名はやめなさいよ」

2018-06-01 20:34:21
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深呼吸をして鹿島は落ち着きを取り戻した。 タイムテーブルを見ると、二十四時間中一時間に一度は誰かから連絡が来るようになっている。 「あの、こんなに電話が掛かってくるのに、この部屋私たちが入るまで無人だったんですか?」 「ん?電話番なら居るわよ?」 そう言って大井は机を指し示した。

2018-06-01 20:40:23
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大井の示すまま視線を向けても壁しか見えず、椅子を立って机を覗き込んでみた。 そこには床に座り込んで椅子を枕にして寝息を立てている人物が居た。ご丁寧に脚の下には卵柄のハンカチを敷いている。 「ついでだし起こしてあげて」 頷き、鹿島は戸惑いながらも恐る恐る彼女の肩に触れた。

2018-06-01 20:45:21
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「んんー祥鳳......?」 起き抜けの甘い声を出しながら鹿島の方を向く。あどけなく浮かんだ笑顔が正気づいて徐々に微笑へと変わる。二人は視線を合わせたまま、ぎこちなく朝の挨拶を交わした。 「あなたが球磨ちゃんが言ってた鹿島さん?」 「はい、あなたは」 彼女は床から立ち上がり、足元をはらう。

2018-06-01 20:58:23
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「祥鳳型二番艦、瑞鳳です!」 「二番艦......?」 「次女って事、よく寝てたわね瑞鳳」 「おはよー大井、球磨ちゃんにね、金剛さんの連絡受けたらその次は交代寄越すから来るまで待っててって言われて」 「急な連絡とかスルーしてないでしょうね」 「大丈夫よ、基本皆出るまで鬼電してくるし」

2018-06-01 21:11:58
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「普段は瑞鳳さんがここで電話を取ってるんですか?」 「うん、たまに時間潰しにやってる。あ、呼び捨てでいいよ?私も鹿島って呼ぶから」 「ず、瑞鳳、さん......すみません、それは時間がかかりそうです」 「じゃあ時間かけていこうね!」 楽しげにいいながら、瑞鳳はてきぱきとその場を片付ける。

2018-06-01 21:27:30
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「じゃあ私祥鳳と約束あるから帰るね。鹿島、大井の事頼んだよっ!」 「えっ、わっ......ま、任せてください」 「お疲れ様」 瑞鳳は笑顔で部屋を出て行った。 「......それじゃあ私の事任せていいかしら?」 「あわわわすみませんついノリで」

2018-06-01 23:07:03
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「それはさておき、知らないヒトとばっかり話して疲れたでしょ?少し休憩しなさい」 「あ、ありがとうございます。飲み物買ってきます」 「自販機の場所は分かる?」 「はい、建物に入ってすぐの休憩所みたいな所ですよね」 「そこで20分くらい休んでていいわよ、その間は私が連絡受けるから」

2018-06-01 23:12:19
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妙に離席を勧める大井を不思議に思いながらも、言葉に甘えて財布を持って部屋を出る。 社内の自動販売機は値段設定が外のものより安いので、少し得をした気分になれる。 どれにしようか迷っていると、後ろに気配を感じた。 「決められないなら、新発売の透明なコーヒーがおすすめにゃ」

2018-06-01 23:16:55
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振り返るとソファに座ってお茶を啜る人物。 「初めまして鹿島、多摩だにゃ。球磨の妹で大井の姉」 鹿島の名前は本人の知らないところで把握されつつあるらしい。 「初めまして、よろしくお願いします多摩さん」 「うん、挨拶ができるのは素敵にゃ。流石接客業出身」

2018-06-01 23:20:51
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「あ、もしコーヒー苦手なんだったら横の透明なメロンソーダもおすすめにゃ」 「いえ、コーヒーは好きです」 多摩のすすめに従って、無色のボトルコーヒーを買ってみる。キャップを開けると缶コーヒーと同じ香りが漂った。 「飲んだ?飲んだにゃ?感想は?」 「......普通、ですね」 「普通かにゃ」

2018-06-01 23:26:49
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一口飲んでなんとなく立っていると、ソファにいる多摩が自分の横をぽんぽんと叩く。隣に来いという事のようだ。 「失礼します」 「多摩が呼んだのに失礼も何も無いにゃ......うん、やっぱり。鹿島、キミ昔どこかで多摩に会った事が」 ある。鹿島の心臓が跳ねる。 「確か、公園だったかにゃ......」

2018-06-01 23:38:39