ユーラシアカワウソの日本への導入に関する学位論文の紹介

日本ではカワウソは絶滅したが、対馬でユーラシアカワウソと遺伝的に推測される糞が確認された。紹介する論文は糞の発見以前である2015年に公表されているが、野生復帰を考える参考になると思う。
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韓国のユーラシアカワウソの日本への導入に関する論文を紹介する。

今井長兵衛 @medanjin

金(2015):日本へのカワウソ再導入可能性検討 韓国におけるカワウソ生息状況から (学位論文)PDF文書 という論文が検索できた。既に皆さんご存知だと思うが。

2018-05-31 19:21:12
今井長兵衛 @medanjin

この研究の指導者 東京農業大学野生動物室の安藤さんは、朝鮮半島のカワウソの日本への導入が論外の怪しからんことだとは考えられていないようだ。やはり、いろんな人の考えを訊いてみるべきだよな。生物の多様性の前に考えの多様性・・・

2018-05-31 21:11:21
今井長兵衛 @medanjin

上記の金さんの学位論文は、PDF文書で158頁(博士論文として普通のボリューム)ある。まずは、151頁からの総合考察を紹介してみる。

2018-06-01 19:25:33
今井長兵衛 @medanjin

著者およびその指導者は、一度絶滅したカワウソを野生復帰させるには、個体群の導入しか方法はないと考えているようだ。ただ、野生復帰の是非については、論じていない。結論を先に紹介しておくと、技術的・環境的には朝鮮半島のカワウソの日本への導入は可能ということだ。

2018-06-01 20:05:41
今井長兵衛 @medanjin

韓国のユーラシアカワウソは地理的に近い 日本のカワウソと生態学相違はないと著者は考えている。韓国南部の海岸・河川・ダム湖などでは、1990年代前半より2010年には河川で個体数が増加しているというデータから、日本での野生復帰は環境的には可能と考えている。

2018-06-01 21:39:43
今井長兵衛 @medanjin

しかし、 再導入 の前には最小存続可能個体数の研究(推定)が課題とて残る。カワウソの生息適地として抽出された環境は、韓国では、草地と森林が点在する傾斜の緩やかな場所であり、日本にも同様の環境が存在するとしている。

2018-06-01 21:50:39
今井長兵衛 @medanjin

日本においてカワ ウソの野生復帰事業を行うには、導入個体分類学的問題の解決、人馴れ防止、獣害問題の対策が優先されるべきと考えている。事業を開始する前に、住民の啓発、教育が重要 と指摘している。

2018-06-01 21:56:48
今井長兵衛 @medanjin

韓国においてカワウソの生息地でよく見つかる食肉目動物としてはベ ンガルヤマネコが知られるが、競争に関する報告はないという。但し、本種の導入により影響が懸念される希少種 が生息している場所には導入すべきでないとしている。

2018-06-01 22:05:45
今井長兵衛 @medanjin

安藤 (200 7)は、ニホンカワウソ が独立種であるとすれば、本州以南への海外産カワウソの導入は外来生物法上も問題があると指摘している。2013 年改正 IUCNの再導入ガイドブックでは、「本来個体群と遺伝的に近似で、類似した生態的特徴を持たなければならない」としているが。

2018-06-01 22:28:32
今井長兵衛 @medanjin

放獣後の死亡要因としては、ロードキル、漁網による溺死などがあり、日本で再導入を行う場合にはさまざまな研究と対策が必要としている。また、保護区の設定や水産業被害補償制度などの法的整備が必要としている。

2018-06-02 08:38:57