日向倶楽部世界旅行編第49話「集う者達」

闘技大会エントリー終了まで残り一週間、ブルネイ泊地には多くの猛者が集い始めていた。そんな中、あきつ丸は三隈に厳しい指導を受けていた・・・
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三隈グループ @Mikuma_company

「お久しぶり、日向」 「貴女は私に勝った」 「勝てるはずよ、何にだって…」 「綺麗な髪ね」 「私の事をよく見て下さってるのね」 「だから私は貴女が好き」 「誰かを大切に想う気持ちは、数式にも文字にも出来ないのだから」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/XP7dkL8zCn

2018-06-05 20:44:56
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 私の長身は目立ってしまうのか、パーティーでは色々な人が私を二度見します、少々複雑ですね、那智や日向も結構高いんですよ? それはさておき、闘技大会の開催が近くなって来ました、初霜さんは大事を取って出ないので、私はあの娘と一緒に応援ですね、何か道

2018-06-05 21:01:03
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【前回の日向倶楽部その2】 立食パーティー、日向達は懐かしの人々と交流し、親睦を深める。あきつ丸もウェワクで出会った戦艦娘、ヤマトと再会するが、彼女はあきつ丸を覚えていなかった。 そんな出来事がありつつも、平和に過ぎゆくブルネイの時、だがそこには、不穏も集い始めていた…

2018-06-05 21:02:14
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第49話「集う者達」

2018-06-05 21:03:42
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〜〜 ブルネイ泊地、立食パーティーが終わってから、五時間ほどが経った深夜二時。 「ふあぁ…飲み過ぎとぁ…眠くて仕方ないぞ…」 一人の女…航空戦艦娘日向は、酔いと眠気に振り回されながら、ブルネイ泊地を歩いていた。 那智大佐と飲んで別れた彼女は今、宿泊施設へと向かっているのだ。

2018-06-05 21:04:52
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(昔はこれっぽっちも酔わなかったのに、今じゃこんなんだ…変わるもんだな…) 酔ってる割に冷静な独白、煌々とした月とぼんやり光る街灯が照らす道を、日向はふらふらと歩いて行く。 そんな時、眠い彼女の視界に、何者かの影が映った。こんな夜中に人、同じ飲兵衛だろうかと日向は歩き続ける。

2018-06-05 21:06:14
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だが、彼女ははたと気付き、足を止めた。 今、自分が向かっている方向には宿泊施設がある、その人影は、そこに背を向けている。つまり、こちらへ向かおうとしている。 (この夜更けに、宿泊施設を出てきたのか…?) 酔いの回っていた頭が冴え始める、鋭い勘が、目の前の人影を訝しむ。

2018-06-05 21:07:27
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すると、人影はゆらゆらとこちらへと歩き出した。それは偶然ではない、明らかに意思を持ち、向かって来る。 日向の酔いが完全に醒めた、彼女は五感を研ぎ澄ませ、人影の正体を探る。 そんな彼女に対し、人影は、聞き覚えのある女の声を発した。

2018-06-05 21:08:43
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「お久しぶり、日向。…元気してた?」 「お前は…!」 〜〜

2018-06-05 21:09:38
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〜〜 一週間後 闘技大会のエントリー終了まで残り一週間となった日、ブルネイ泊地の演習場では、多くの者達が訓練に励んでいた。 だが皆、大きな動きは見せない。射撃や回避、各々全力は出さず、基本的な動きに終始する。理由は簡単だ、これから戦うであろう者達に、手の内を明かしたくないのだ。

2018-06-05 21:10:51
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「はぁぁぁぁっ!」 しかしその中で、誰よりも気合の入った訓練をする者がいた。実力を隠そうなどという気はさらさらない、自分の全力を出す、他の参加者には最も愚かに映る、そんな者がいた。 「丸ちゃん、それでは甘いわよ!」 その者の相手をする艦娘は、砲撃を避けながら叱咤する

2018-06-05 21:12:02
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そして自身も主砲を放つ、演習用のペイント弾が、その者の艤装に当たる。 「もっと相手の動きを見て、狙いを読みなさい!」 インクまみれになったその者に、艦娘は強い怒号を飛ばす。艦娘の名は三隈、一週間前は、ドレスを着て立食パーティーで微笑んでいた、お淑やかな女性である。

2018-06-05 21:13:09
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だが今、彼女は艤装を着け、厳しい声を張り上げている。その姿は、紛れもなく艦娘であった。 そんな彼女に向け、その者…全身カラーインク塗れの艦娘が叫ぶ。 「ぐっ…もう一度、お願いしますッ!」 その艦娘の名はあきつ丸、三隈に比べると、様々な面で未熟な人間である。

2018-06-05 21:14:12
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彼女は今、闘技大会に向けて訓練に明け暮れていた。三隈という指導者の下、食事と睡眠以外、全ての時間をそこに割いている。 「また同じミスをする!さっきもこういう風に、当てられたのでしょう!」 あきつ丸のワンパターンな回避運動に、三隈の弾丸、そして厳しい言葉が突き刺さる。

2018-06-05 21:15:29
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普段、三隈はこのような言葉をあきつ丸にかける事はない。彼女はあきつ丸をとても気にかけているし、友人としてとても優しく接していた。 「も、申し訳ありません…」 「言葉はいりません!謝る暇があるのなら、考えなさい!」 そんな彼女が、ここまで厳しく言葉をかける

2018-06-05 21:17:06
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これは豹変ではない、友人としてあきつ丸の気合いに応える、彼女の形を変えた優しさであった。 「さあもう一度、行きますわよ!」 「はいッ!お願いします!」 二人はまた訓練を再開する、これで48セット目、朝の八時からひたすらに続く、激しい訓練である…

2018-06-05 21:18:06
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そんな訓練を、彼女の仲間が遠目に見る。 「あの二人、気合入ってますねぇ」 軽い射撃練習をしていた短髪の艦娘、最上は、隣で艤装の調整を行う長髪の艦娘、足柄に言う。 「貴女は良いの?そんな軽くて」 試射しつつ細かい調整を行う足柄は、随分と肩の力を抜いている最上に問う。

2018-06-05 21:19:31
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「もう基本っていうか、戦い方は決まってますからね。あとは当てるときにきちんと当てて、避けるときに避けられれば、まあ。」 手持ちの主砲を下ろし、最上はぼんやりと言う。これが戦闘の時は随分激しくなるのだから、人というものは分からない。彼女の言葉を、足柄はそんな風に捉えていた。

2018-06-05 21:20:52
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そして、今度は足柄が最上に言う 「でもまさか、日向が貴女と組まないなんてね、返事の早さには随分驚いたわ」 「それはボクもですよ、突然でしたからね…」 そう、何故この二人が同じ場所で、こんな風にトレーニングしているかといえば、闘技大会で二人は組む事となったからなのだ。

2018-06-05 21:21:46
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時は立食パーティーの翌日、最上は日向に、闘技大会で組まないという旨を告げられた。最上は当然理由を尋ねたが、返って来たのは 「組む相手がいる」 という事だけ、それ以上は語らなかった。 「日向さんの事だから理由があるんだろうけど、組む相手って一体誰なんだろう…」

2018-06-05 21:22:43
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最上はそう呟きつつ、また射撃を始める、命中率は上々だ。 そして、今度は最上が訊ねる 「でも足柄さん、組む相手がボクなんかで良かったんですか?」 足柄程の艦娘なら他に相手もいるだろう、何せ彼女はトラック泊地の古株、そしてエースなのだ。だがその問いを愚問と断ずるように、足柄は微笑む

2018-06-05 21:23:54
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「馬鹿ね、巡洋艦杯であの日、貴女は私に勝った、それで十分よ」 ハッキリとした答えに、最上は思わず苦笑いする 「まあ、確かに勝ちましたけど…」 彼女がそう言うと、足柄は艤装を調整していた手をピタッと止めた。 「…私に勝った事、マグレだって言いたいの?」

2018-06-05 21:25:15
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トーンの低い声が響く、最上が取り繕う言葉を探していると、彼女は白い手袋に包まれた指先を見つめ、静かに言った。 「……マグレで負ける様な奴はね、それが無くたって負けるのよ、必ず」 ピタッと時が止まるように、彼女の言葉が辺りを支配する。それに、最上は気まずく頭をかいた。

2018-06-05 21:26:12
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「すいません、そういうつもりじゃ…」 最上は謝罪しつつ、取り繕う言葉を探す、すると足柄は、明るい声で揶揄う様に笑った。 「…なーんて、冗談よ。次戦ったら私が勝つわ、貴女にもね。」 彼女はそう言うと、また艤装を弄り始める、最上は内心ホッとした。

2018-06-05 21:27:28
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そしてまた、射撃の確認などを再開する。時刻はもうすぐ正午、昼食を取る為、演習場を離れ始めるものもポツポツと現れ始めた。 ざわめく演習場、その中で足柄は、揺れる水面を見つめる。 (…私にまだ勝利者の資格があるなら…勝てるはずよ、何にだって…) 彼女は奥歯を噛み締め、拳を強く握った。

2018-06-05 21:28:33