カウンシル・フジミ #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:ヤクザニンジャ組織「過冬」の手によって、シルバーキーから引き離されたゾーイを救出すべく、ニンジャスレイヤーことマスラダ・カイはシトカの街に突入した。ゾーイの奪還に成功したニンジャスレイヤーだが、過冬の首領、シンウインターの超自然のジツがシトカを封鎖した)

2018-06-06 21:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ゾーイを連れ戻さねば、シルバーキーの肉体の維持は困難。命にかかわるだろう。よって、ニンジャスレイヤーはシンウインターを殺す為に行動を開始した。過冬とて指をくわえて見てはいない。動き出したのは「ワイズマン」の名を冠した恐るべき手練れのニンジャ達である)

2018-06-06 21:53:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャスレイヤー抹殺とゾーイの拉致がワイズマンの目的だ。しかし折しも、違法海賊ポータルを用いてシトカに潜入したソウカイ・シンジケートがデイリ行為を開始。エメツ採掘利権によって繁栄するシトカの夜は、今や銃声と悲鳴飛び交う戦場と化した)

2018-06-06 21:55:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(仇敵シンウインターを倒すべく、ニンジャスレイヤーに協力するのは、かつて相棒と弟分を惨たらしく殺されたニンジャ、スーサイド。彼はソウカイヤと過冬を相手に立ち回り、復讐のオーテ・ツミを狙う。そしてこのケオスの中に、更なるニンジャが降り立った。サツバツナイトことフジキド・ケンジだ)

2018-06-06 21:58:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(フジキドはマスラダに会わねばならなかった。ある性急な理由で。案内人として私立探偵シキベ・タカコがついて来たが、残念ながら彼女はフジキド・ケンジともどもシトカに閉じ込められてしまった。行きはよいよい、帰りは……ってやつだな。どうやら事態は軽く考えられるポイントを超えちまってる)

2018-06-06 22:01:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんなわけで、このフジミ・ストリートの宿、<筋>に、連中は集まって、どうもあんまり打ち解けない会議が始まろうとしてる……ッていう寸法だぜ」「ああ。そうだな」シルバーキーは片目を開けて大柄な男を見た。異様なことに男の背にはたたまれた黒いカラスの翼がある。「難儀だな。あンたも」

2018-06-06 22:04:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺の事はほっとけ。ヤバイのはお前さんだろ」タカギ・ガンドーはアグラするシルバーキーを指さした。シルバーキーの後ろには既に十数本の灯を消した四十九ロウソク。「ああ。これな。あンたの翼ぐらいイカスだろ」シルバーキーは笑った。「それより、あンた……何故この浜辺に居る」「出来るからだ」

2018-06-06 22:07:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そりゃ出来るからだろうけど」シルバーキーは空の黄金立方体を見た。ガンドーは頷いた。「得意なんでな。まあ何だ、感受性つうか」「現実じゃカラスなのか。戻る方法は?」「わからん」「……」シルバーキーが指を鳴らすと、ウェルカム・サケが二者の手に現れた。「仕方ねえ。見届けようぜ」「うむ」

2018-06-06 22:11:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私はオヌシのソウルがいかに危険か知っている」「……それがどうかしたか。そんな事をわざわざ伝えに?」「ナラク・ニンジャの力は強大だ。オヌシを助ける。望む力を与える。だが、邪悪な力だ。オヌシ自身のカラテを以て、その力に抗わねば、ナラクはオヌシを呑み込むだろう」 1

2018-06-06 22:17:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「かつて私は邪悪に呑まれ、憎悪の果てに、ただ殺戮の怪物として志半ばに消え果るところだった。ドラゴン=センセイの導きがなければ。私はセンセイのインストラクションを無駄にせぬため……」「もっと昔にそのインストラクションを持ってきたなら、役にも立ったろう」 2

2018-06-06 22:22:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウ……」「アンタの伝言は……そうだな……受け取った。あのシキベとかいう探偵から」「ナスカで何が起きた?」「……おれにはおれのやり方がある。この力で倒すべき相手がいる」「私にオヌシの是非を断ずる資格などない。だが責任がある。かつて……」「ナラクの歴史か。フジキド=サン」 3

2018-06-06 22:30:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……既に、見たか」「それがどうかしたか。もう一度言う。自制しろと伝えるためにシトカまで来たのか。ならば、間に合っている」「今は安定している。よく御している。だが」「ナラクの危険を甘く見ていると?……この力でおれが既にどれだけ苦しんだか、アンタは知らないだろう」 4

2018-06-06 22:35:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「知ってほしいとも思わない。十分だ。おれは、おれのやり方でやる」「ケイトー・ニンジャを知っているか」「ケイトー……?」「それに類する名のニンジャと接触を持ったことは」「……いや。ない」「そうか」「それがどうした?」「平安時代を生きた邪悪なリアルニンジャだ」 5

2018-06-06 22:40:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(……知っているか。ナラク)(((当然だ。ケイトーはカラテと緋のジツをよく操り、騙しと策略を好む卑劣漢。その悪名は世界に轟いておったが)))「ケイトー・ニンジャはこの時代に蘇り、策略を巡らせている。奴の狙いは、恐らくオヌシだ。オヌシの中のナラク・ニンジャだ」 6

2018-06-06 22:46:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((……くだらぬ……)))ナラク・ニンジャの声はゴボゴボというノイズに変わり、再びマスラダのニューロンの奥底に沈んでいった。……マスラダはフジキドに問う。「そのケイトーが、おれの命を取りに来ると?」「ただ殺す為に動くようなニンジャではない」フジキドは首を振った。 7

2018-06-06 22:50:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「はっきりしない話だ」マスラダは顔をしかめた。フジキドは眉根を寄せて、言った。「奴の狙いが明らかになったわけではない。あくまで憶測だが、それが成れば致命的な事態を呼ぶ。奴は……ナラク・ニンジャのソウルに含まれる、ある要素を奪取しようとしている。俺はそう憶測している」「要素?」8

2018-06-06 22:57:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「過去の夢を見たならば、ナラクを貫いたヤリを覚えているな」「……ああ」「あのヤリの穂先だ」「……フーッ」マスラダは長い息を吐いた。「平安時代の邪悪なニンジャが魂を奪いに来る?発狂マニアックの戯言だ。……あの夢を見ているのでなければそう言いもしただろうが」「信じるか」「まあな」 9

2018-06-06 23:02:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうか。ならば……」「アンタはケイトーからおれを護る為にシトカに来た、成る程」その声のトーンはやや険しかった。「おれはこのシトカでシンウインターに用がある。お前はその間、そうやってワケ知り顔で、おれの後をついてまわるつもりか?」「ヌウ……」フジキドは少し言葉に詰まった。 10

2018-06-06 23:07:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ」スーサイドが階段を上がってきて、廊下の二人を呼んだ。「準備できたぜ。腹も減ってンだろ」「……」マスラダはフジキドを一瞥し、スーサイドと共に階段を降りた。フジキドは沈思黙考の後、そのあとに続いた。 11

2018-06-06 23:13:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドとマスラダは長卓についた。卓を囲むのは彼らの他に、スーサイド、コトブキ、ゾーイ、シキベ。明け方まで営業する筈の店にはシャッターが下ろされ、臨時休業の札がかかっていた。店主のスージーがテーブルまで歩いてきて、熱々のピザをドスンと置いた。「アイヨ、オマチ」 12

2018-06-06 23:16:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まあ!すごい!すごいです!」コトブキは明るい笑顔を見せた。「本当においしそう!」スージーは満足そうに彼女の肩に手を置いた。「嬉しいね!なんてカワイイ娘なんだろうねえ!」旨そうな香りの湯気を立てる巨大なマルゲリータ・ピザを前に、ゾーイも少し笑顔になった。 13

2018-06-06 23:19:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ね。食べましょう。取ってあげます」「大丈夫。自分でやるよ。先に取っていいよ」ゾーイはポケットに手を当て、その表情を曇らせた。「ガガピー」柱の横の深海潜水服じみたUNIXロボが起動音を響かせ、震動し、手がハサミになった腕を上下させた。頭部ブラウン管モニタが砂嵐を映した。 14

2018-06-06 23:23:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ガガピー……ザリザリ……オイ、なんだそりゃ?ピザか?」モニタには薄汚い金髪の男の顔が表示された。タキだ。ネオサイタマからのIRC接続が確立された。「ピザを食うのか?」ロボットは卓に近づいた。マスラダはピザを大きく取り、無言で齧りついた。食べながら、さらに大きく取った。 15

2018-06-06 23:26:21