艦隊これくしょん Re:World's End 第六話 罪と罰
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艦隊これくしょん Re:World's End 第六話 罪と罰 すこしづつ、すこしづつ その時は迫っていた。 ぼくたちはそのことに 気づきもしなかったけれど ――天叢雲剣 #艦これReWE pic.twitter.com/En0rvAAKh7
2018-06-03 00:05:20「潮の香りがするのです」 私の真横に座る電が呟く。強風は去ったのか、病室に吹き込んでくる風が緩んできた。再びゆっくりと窓にかかってゆく雲色のカーテンの向こうには、赤い海が見える。ミルク色の病室と――まるで溶いたような赤の海。その色彩が眼に痛くて、私は少し目を細めた。 #艦これReWE
2018-06-03 00:06:30――この赤い海を、彼岸花と呼ぶ。 人間の血が混じった海は、いつも通りそこにあった。 #艦これReWE
2018-06-03 00:06:40私と同じベッドの中で、電はそう呟いた。今、私たちは寝具上で、背面を起こした状態である。季節は春も始まろうとしているばかりで、気温は上昇傾向なれども風は身を切りまだまだ冷たいまま。よって私たちは足を布団に、肩にはストールをかけ、なけなしの暖を取るしかないのである。 #艦これReWE
2018-06-03 00:07:34むろん二人でシェアしている状態なので、お互いの体温で思ったよりも暖かかった。目の前にはポラリスのウィンドウが開いている。表示されているのは一枚の建築図面。ことの始まりはといえば、先日見舞いに訪れたダリアの一言である。 #艦これReWE
2018-06-03 00:07:46『ラビット・ガーデンね。手ひどくやられたから、この際、全面改装することにしたの。リフォームしてほしいところがあれば受け付けるわ。ポラリスに建築図面を入れておいたから、欲しい部屋や家具なんかをみんな書き込んでくれると反映するわよ』 #艦これReWE
2018-06-03 00:08:00業者の都合があるから早めにね。我らが提督は、そんなことを言って帰って行ったのだ。 #艦これReWE
2018-06-03 00:08:13ポラリスの該当ファイルには写真も同梱されており、映っていたのはラビット・ガーデン。それも内装は焼け焦げ、外観は度重なる爆発により散々な有様だった。なるほど、これは確かに建て直すしかないだろう。 #艦これReWE
2018-06-03 00:08:23「欲しい部屋、欲しいものと言ってもね」 言われて考えはしたものの――はっきり言って、私にはぱっと思いつくものはなかった。これまでのラビット・ガーデンの生活に、不便はなかったのだ。 #艦これReWE
2018-06-03 00:08:34「酒蔵」 「それは自分で申請しなさいよ」 ちなみに欲しがったのは隼鷹で、そんなもの作ったって本人以外まともに使わないのは目に見えている。ダリアが司令室にいくつか酒を飾ってはいたが、開封さられたのはものは一本もなかった。よくあるインテリアとしてのリキュールボトルであろう。 #艦これReWE
2018-06-03 00:09:40「俺とまるゆの」 「だから自分で言いなさいな」 今のはむろん木曾である。俺とまるゆの、なんだったんだろう。ろくでもないものなのは分かりきっているので無理矢理会話を打ち切った。 #艦これReWE
2018-06-03 00:10:02そのまま、意見具申、木曾とまるゆはもう相部屋でいいのではないでしょうか。とウィンドウの要望欄にコメントを入力する。 #艦これReWE
2018-06-03 00:10:15「中庭! お茶会のできそうなテーブルが欲しいデース!」 「それならまあ……」 今度は金剛である。そして私がそんな金剛の希望を受け入れる姿勢を見せたため、皆が口々に新入り逆差別だ優遇だ、と文句を言い始めた。とても面倒である。あと、さすがに中庭は厳しいかもしれない。 #艦これReWE
2018-06-03 00:10:56「お外に花壇とかも欲しいのです」 あと、今まであまりにも自然に話をしていて気づかなかったのだけど、どうしてヨコスカ162番鎮守府ラビット・ガーデンの内装に、161番鎮守府ストロベリー・クォーツ所属の電が口を出しているのだろう。 #艦これReWE
2018-06-03 00:11:06……まあ、別にいいか。電なら。 そんなことをつらつらと考えていると、口を開く者があった。 #艦これReWE
2018-06-03 00:11:17「ところで木曾さん、まるゆさん。そういえば青葉、お二方にお話があったのすっかり忘れていました。そして、今の話題で思い出しました」 「へ?」 「なんだよ?」 #艦これReWE
2018-06-03 00:11:27青葉である。唐突に切り出されたため、まるゆと木曾がきょとんとして応答する。用件が想像もつかない――そんな顔だ。そんな二人に、青葉は笑顔のままで。 ――あくまで、笑顔を崩さないままで。 #艦これReWE
2018-06-03 00:11:36「青葉の大切な、本当に本当に大切なキッチンをあろうことか爆破したと聞いたのですが――事実でしょうか?」 ――その瞬間、部屋の温度が3度は下がった。よくよく見れば、眼がまったく笑っていない。青葉の手元のウィンドウにはまっくろに焦げた部屋が映っている。 #艦これReWE
2018-06-03 00:11:51ああ、つまりはあれが現在のラビット・ガーデンのキッチン。正確にはその惨状なのだろう。 #艦これReWE
2018-06-03 00:12:05「あ、アオバ? か、顔が怖いデース。その、スプリガンみたいネー……?」 幸いにも、私と電の位置からは青葉の顔は見えない。よって、金剛の顔がぐんぐん青くなっていく原因を直視しないで済んでいる。不幸中の幸いという奴だろう。金剛にはご愁傷様と言うしかない。 #艦これReWE
2018-06-03 00:12:39「ヤバい! 逃げるぞまるゆ!」 それを見た木曾がそう叫んで、まるゆの首根っこをつかんだ。しかしその言葉を聞いた青葉は、既に病室の入り口へ走っている。木曾とまるゆを逃さないつもりだろう。だが――。 #艦これReWE
2018-06-03 00:12:51「木曾さん! あっちです!」 言いながら、まるゆが部屋の一点を指さした。木曾はそれに応え、まるゆを抱えて青葉の反対側へ。――反対側? 一般的な病室の、入り口の反対側にあるもの。そこに目を向けて、私は二人の狙いを理解した。 #艦これReWE
2018-06-03 00:13:17