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水門の廃屋 連載四日目(完結)

小学生時代の思い出に終止符が打たれ、新たな思い出の機会がもたらされたことで本作は完結です。皆様ご愛読ありがとうございました。 ・本作は一次創作です。 ・無断転掲載を固くお断りします。
文学 楽しいお話 書籍 小説 水門の廃屋
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ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:22:18
水門の廃屋 連載四日目(完結) 「そう言えば、二階があったよな」  顎の下に右手を当て、まるで大事な謎解きの手がかりがあるはずだと言わんばかりの佐藤。 「うん。あたしも掃除しながら確かめた」 「なにかあったの!?」  塩瀬はすっかり引き込まれていた。 「三人で行こう」
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:22:52
言うが早いか、末中は腰を上げた。塩瀬に次いで最後に腰を上げつつ、記憶にやすりをかけた。もちろん、小学生の時にも二階はあった。だが、確か大量の木箱が廊下を塞ぎ、余りに重いので諦めた。蓋が釘打ちされていて中身は分からない。 「箱は、大人なら一応持てる重さだったよ」
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:23:22
見透かしたように末中は説明し、先頭にたった。 「一つだけ、腐って中身が溢れていたのがあった。昔の雑誌だった」  階段を上がりながら末中は補った。  二階に上がると、なるほど木箱が廊下の脇によけてあり、色の褪せた雑誌も隅に寄せてあった。戦前のものらしいが、佐藤にはそれほど興味は
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:23:49
なかった。 「わっ、お洒落! ……一冊持ち帰っていいかな」  目を輝かせた塩瀬は、何故か末中に聞いた。 「いいと思うよ。……て言うか、どっちかというとくーちゃんのものなんじゃない?」 「そ、そうかなあ」  いそいそと塩瀬は一番傷みの少ない雑誌を選り分けてバッグに入れた。
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:24:20
「おいおい、随分古い趣味だな」 「なに言ってるの、戦前のお金持ちの服って凄く参考になることがあるんだよ」  いかにもプロの自尊心を挑発されたかのように塩瀬は言った。 「さ、開けるよ」  末中が、廊下と二階の部屋を区切る襖に手をかけた。佐藤も塩瀬も口を閉じ、息を飲んだ。
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:24:45
末中は襖を開けた。 「あっ!」  佐藤が仰天した。 「なに!?」  塩瀬は口をぽかんと開けた。  室内には、等身大の看板が据えられていた。いや、看板というより鉄製の画布だった。控え目だが上品な彫刻を施された椅子に座る一人の若い男性が描かれている。美青年というより男前と
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:25:08
表現したくなる雰囲気だった。髪はやや長めに伸ばした上で丁寧にセットされ、ゆったりした洋服を身につけていた。シャツは薄青色で、ズボンは緑色をしており、灰色の帽子が組んだ足の上に置かれた両手を隠している。『第十六代曽山家当主 曽山仁助 昭和10年3月5日』とあった。 「凄い……」
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:25:27
塩瀬は呟いたきり敷居の前で止まったままだ。 「看板屋がくーちゃんのご先祖様かな」  佐藤も塩瀬の隣で足を踏み出せないまま呟いた。 「くーちゃんのお家の人に伝える?」  末中もまた、二人に並んで聞いた。塩瀬ならずとも、少々複雑な問題だった。それを明るく無邪気に判断するには、三人とも
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:25:44
歳が過ぎ去りすぎていた。 「やめとくよ」  塩瀬は短く答えた。 「じゃあ、看板もこのお家と一緒にいなくなるね」  悲しそうでもなく、怒りをこめているのでもなく、淡々と末中は宣言した。 「破産したのか当主が死に絶えたのか知らんが、とにかく誰の目にも触れさせたくなかったのかなあ」
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:26:00
腕を組みながら佐藤は唸った。 「写真に撮っておこう。順番に記念撮影しよ」  末中の提案には、佐藤達に異存なかった。塩瀬と末中が自分の隣にいる写真を一枚ずつ送信してもらい、自分からは塩瀬と末中が並んだ写真を二人にそれぞれ送信し、三人の会合は終わった。
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:26:13
「なあ、この家が壊れてからも、たまには三人で集まらないか?」  階段を降りながら佐藤は持ちかけた。メールアドレスはさっきの写真で交換したので、それは問題なかった。 「あたしはいいよ。くーちゃんは?」 「うん、いいよ」  昔のように、とはいかないかもしれない。看板を確かめた時、
ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @hm1d6 2018-06-14 18:26:26
三人の小学生時代の話にはかたがついた。ただ、佐藤としては、看板に描かれた若者から丁重に勧められたような気分にはなった。そんな感傷もまた時ならぬ会合の思わぬ楽しみではあった。  廃屋を出て、三人は家路についた。夏はこれから始まるところだ。          終わり

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