東方科学考察クラスタDieさんによるたれ語り―幻想郷における香料についての一考察―

お空の原子炉工学本で知られるDieさんが、人類と香料との歴史をひもときつつ幻想郷における香料の利用について考察してみたまとめ
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Die @die3035

突如始まる考察TL。今回のテーマは「香水、香り」について。最近少し話題になった東方香水プロジェクトなるものに興味がわいたもので。え、染色の話?ああ、そんなものもあったね。…ちゃんとやるよ。来月までにはねー

2011-04-14 20:12:58
Die @die3035

「香り」というものは有史のはるか以前から常に人間の隣にあった。肉を焼くと出てくる香り、果物の香りなどなど食に関する物は特にそうである

2011-04-14 20:14:12
Die @die3035

これら生活に必須な香りとは別な、ある種「特別なもの」としての香りの始まりは、約15万年前、ネアンデルタール人の時代にまでさかのぼる。この時代の遺跡から、死者を埋葬するときに香りのよい木々を焚いた跡が発見されている

2011-04-14 20:15:43
Die @die3035

このように、原始社会においては神などに感謝や願いを託す際に、木々を燃やして香りを捧げるという行為を行っていた。香水や香料などをさす「perfume」という英単語が、ラテン語の「per fumun(煙を通して)」が基になっているのは、まさにこれである

2011-04-14 20:17:36
Die @die3035

また、この時代から、ただ木々を燃やすだけでなく、この木を燃やしたりすればよい香りがする、あれは火持ちが良い、など人々は色々と考えてモノを燃やし始めることになる。さらに、木を燻したり、燃えにくいものと混ぜてゆっくりと燃焼させると香りが非常に長持ちする事も知られ始めた

2011-04-14 20:19:02
Die @die3035

これらの香りに関する文化は、古代オリエントの世界に引き継がれてゆく。たとえばエジプトでは神殿などで日に三回香が焚かれ、防腐剤の意味もこめてミイラにも使用された。またバビロニアでは薬用には芳香性の植物が有効である事から薬としても発達した

2011-04-14 20:20:51
@zenteki

煙を通すことで、目に見えないはずの太陽の光が可視化されるんだよね。 焚き上げることで、神の具現化が行われた。

2011-04-14 20:21:17
シェルン @Shrn1009

@die3035 燻製か…、やはり古くからある調理法なのか

2011-04-14 20:21:21
Die @die3035

なお、ミイラの語源は、最も歴史のある香木の一種であり、ミイラの防腐剤としても使用された「没薬」を意味する「Myrrh(ミルラ)」から生まれたものとされている

2011-04-14 20:22:21
Die @die3035

@Shrn1009 煙で燻す、なんてのはもう遥か昔から人類の大切な技術の一つとなっていたりします

2011-04-14 20:23:36
Die @die3035

このように香りは、ある時は宗教的儀式に使うものとして、ある時は薬剤から漂うものとして、ある時は生活を彩るものとして、「文化」という形で人間の生活に非常に深く根付いたのである

2011-04-14 20:24:16
Die @die3035

この時代の香りの製品としては、火をつけて直接匂いを発生させるお香や、香料を粉末状にした香料粉末、香りの付いた油である香油、温めれば液状になるが、常温では個体になるような香膏などがある

2011-04-14 20:26:33
Die @die3035

これらのウチ、香油や香膏などは化粧品の原型ともいえ、当初は貴重さゆえに神事などにしか使えなかったが、紀元前1000年頃に比較的安定供給可能な状態になると王侯貴族や裕福な人間の間で非常に人気があった

2011-04-14 20:28:42
Die @die3035

たとえば有名なクレオパトラなどは、バラの香油であるローズオイルだけでなく、動物性香料であるムスク・シベット・アンバーグリース、特にシベットをふんだんに全身に使い、非常に妖艶で周りを陶酔させるような香りを放っていたらしい

2011-04-14 20:30:17
Die @die3035

これら香りの文化的な側面は各地で非常に発達していったが、技術的な側面もまた着実に進歩していったのである

2011-04-14 20:32:17
Die @die3035

当初、花や木などから香りを取り出す方法としては、砕いて粉末状にし直接塗る、燻る、纏めて絞る、水や油につける、などなど非常に原始的な方法がメインであった

2011-04-14 20:33:07
Die @die3035

その後、紀元前二世紀ごろのギリシャにおいて蒸留器を用いた香りの抽出方法が生まれ、花びらを水蒸気蒸留することで香りを凝縮した非常に濃厚な香りを持つ「花精油」を取り出していた

2011-04-14 20:35:26
Die @die3035

しかし、この技術を一区切りとして、一旦は香りに関する技術的な側面は停滞し、文化的な面のみが進歩してゆくことになる

2011-04-14 20:36:31
Die @die3035

近代香料産業の誕生は、十世紀頃にアラビアにおいて効率の良い蒸留器が発明され、アルコールの蒸留法が確立した事に端を発する

2011-04-14 20:37:22
Die @die3035

この技術はヨーロッパの各地に流れ、それを用いたワインの蒸留によるアルコールの精製が始まり、得られたアルコールは人の寿命を延ばす(と信じられた)妙薬「アクアピューラ(生命の水)」とも、また引火する水「アクアアーデンス(燃える水)」とも呼ばれ、重宝された

2011-04-14 20:40:33
Die @die3035

そして、この珍しい水として重宝されたアルコールの利用法も研究されることになり、その成果の一つとして近代の「香水」が誕生した。アルコールには香り(の元になる分子)を良く溶かす性質があり、また自身の消毒・殺菌作用から保存も効き、化粧品として良質な香水を得る事が出来たのである

2011-04-14 20:42:57
Die @die3035

アルコールを利用した香水の元祖は、十四世紀末にハンガリーのエリザベート女王によって調合された「ハンガリー・ウォーター」となる。これを始まりとして近代香水の時代が幕を開ける。なお、アルコールの蒸留及び香水の製造には儀式用にワインや薬草を製造していた修道院が主に行ったとされている

2011-04-14 20:45:15
Die @die3035

その後、かの有名なメディチ家の一人で、フランス王家に嫁いだカトリーヌ・ド・メディチの手によって香水文化はヨーロッパ全土に大流行した

2011-04-14 20:47:14
Die @die3035

彼女は新婚旅行中に香料の製造をフランス人に教えたり、実家より連れてきたお気に入りの調香師であったレオナード・ビアンコがフランス初の香水専門店を開いたり、香水を手袋にしみ込ませた「匂い付き手袋」をフランスで大流行させたり、と彼女は(図らずも)香水文化大流行の立役者となったのである

2011-04-14 20:49:04
Die @die3035

彼女が新婚旅行中に留まり香料の製造法を伝えたフランス南東部の街グラースは、その後香水のメッカとして数百年の長きに渡り語り継がれる事になり、またそれと同時にフランス香水文化の基礎ともなったのである

2011-04-14 20:50:40
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