突発現パロSS、第十九話

大井と由良と善良なるポテトの民が寿司屋で寿司
1
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「いやぁ今度は寿司かぁ、いいねいいね」 「たくさん食べたらおもちゃが貰えるって本当?」 本当よと答えながら、大井は川内と由良を連れて回転寿司の店へ来ていた。 受付に伝えて、予約していたボックス席へ三人は座る。 「それで、報告って?」 「まずね、私北上さんに振られたわ」 「は?」

2018-06-17 19:31:37
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「告白して断られたのとは少し違うんだけどね、もう好きって言わなくていいって」 「待って、思ってた報告と違った」 「とりあえずポテト頼んでいい?」 「寿司食べなさいよ......いやいいけど」 川内はタッチパネルを操作して、ポテトを三人分注文した。 「あ、由良近いしお茶係やるね」

2018-06-17 19:34:32
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

熱い湯飲みが三人に行き渡る。 「私てっきり実家に戻る報告きけるものだと思ってた」 「え?なんで?」 「最近の大井は北上といても全然普通だから」 「そう?」 「といっても二人一緒に居る所はめったに見られないけど」 「まあね。一人暮らしも慣れちゃったし、許可貰っても家には戻らないかも」

2018-06-17 19:42:13
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「ていうかアレは?前話してた新人の」 「そうだ、大井に恋してるコ」 「ああ......うん、好きって言われた」 川内と由良は無言でハイタッチを決めた。 「何今の」 「んで?大井の返事は?」 「最初は知って欲しかったってだけだったから、特に何も」 由良は無言で高めの寿司を注文した。

2018-06-17 19:51:03
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

注文直後、小さな新幹線が三人前のポテトを運んでくる。 「前菜が来た、皆食べよう」 「油っこい前菜ね......」 「最初はって事は何回か告白されてるの?」 「その少し後で。一度振ったんだけど、好きなヒトがいるからって伝えた。そしたら片想いに疲れたら来てって」 「健気」 「映画化決定」

2018-06-17 19:57:38
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「はぁ大井にはもったいない」 「大井ってまだ北上さん好きなの?」 「うん」 「へぇ」 「先に言っとくけど鹿島にちょっかいかけないでよ?」 「善良なるポテトの民の私がそんな事するわけないじゃん」 「よく言うわ」 「でも北上さんには振られたんでしょ?諦めないの?」 「諦める、ねぇ......」

2018-06-17 20:06:11
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

大井が北上に対して抱いている好意は、挑戦するとか諦めるとか、そういうものでは無い。ただ好きで仕方ない、それだけだ。大井はこれに恋という名前を付けている。 「私は本当に北上さんが好きなだけなのよ」 「私も寿司を奢ってくれる大井好き」 「由良も」 「あんた達が北上さんだったらなぁ」

2018-06-17 20:17:26
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

川内と由良は怯えた顔をした。 「やばい、いよいよ本気で病み始めたぞ」 「大井、今ここには由良達しかいないからね。他の誰かが見えてもそれは幻覚だから落ち着くのよ」 「急になんなの」

2018-06-17 20:19:47
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「さっさと本気で北上に告白して砕けて来なよ」 「うんうん、正式に振られてきたほうがいいと思う」 「無理、告白してないのに振られたのトラウマ化してる」 「毎日告白してたようなもんでしょ......」 「お寿司を食べれば万事上手くいくわ」 由良は適当に寿司の皿をとって大井に押しつけた。

2018-06-17 20:26:51
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

大井は箸を手に取り、手前から順に食べ始めた。 「寿司......寿司......」 「大井壊れた」 「ポテト食べさせたら治るかも」 新幹線からウニの皿を受け取った由良は、すぐさまポテトを注文する。 「ねぇ善良なるポテトの民、お寿司とポテトって合うの?」 「合わなくもない」

2018-06-17 20:33:19
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

寿司を食べ続ける大井は置いて、川内は由良と話を始める。 「てか由良の方はどうなのさ、夕張とは」 「き、きいちゃう?」 由良は途端にしおらしくなり、顔を赤らめた。 「わぁ、やっぱりいいや」 「あのね、今夕張さんは池や湖でも艤装が使えないか研究してるんだけど」 「う、うん......」

2018-06-17 20:37:31
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「今の艤装は波と水温からエネルギーを得て、増幅装置を海水に融解してる成分からリアルタイムで精製して様々な補助機能を発揮してるじゃない?海以外で使うとなると根本的なところから見直さないと難しいって」 「そーなんだ......由良、夕張に似てきたね」 「そ、そんな事」 「褒めてないよ??」

2018-06-17 20:45:50
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「まぁ由良が幸せそうでなによりだよ、うん」 「ありがとう」 「あら?ねぇ、今夕張いた?」 「大井、それは幻覚」 新幹線が再びポテトを運んでくる。 「川内、また頼んだの?」 「由良が注文してくれた」 「大井に食べさせたら変なのが治るって善良なるポテトの民が」 大井は苦笑して、一本つまんだ。

2018-06-17 20:51:50
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「大井、正気に戻ったんなら話の続き。北上に正式に振られたら新人のコと付き合うの?」 「好きなヒトに振られるのと他からの告白をオッケーするのは別の話でしょ、ていうか振られる前提やめてよ」 「いや大井が第一声で振られたって言ったんじゃん」 「寿司......寿司......」 「また壊れた......」

2018-06-17 21:02:40
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「寿司......はぁ。ま、実際振られたら恋人作れるようなメンタルじゃないと思うわ」 「病む前に相談してよ?」 「鹿島さん良いコなんでしょう?きっと傷心の大井を優しく受け止めてくれるわ、会った事無いけど......」 「由良が既に慰めモードに入ってるの悲しい」

2018-06-17 21:09:26
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「鹿島ねぇ。あのコ、ちょっと私に似てる」 「叶わぬ恋をする所とか?」 「ただ好きだって気持ちを知って欲しかったって所とか......ああでも、似てた、が正解か」 「そんな優しい顔できるんならさぁ、恋くらい叶えてやりなよ」 「くらいって......そんな適当じゃ失礼じゃない」

2018-06-17 21:16:40
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「香取の事は助けたじゃん、同じ感じで鹿島と恋人になっちゃえ」 「別にあのコは私に恋してたわけじゃないし.......ていうか本当それ川内に話すんじゃなかった......」 「大井は香取姉妹に何か縁があったりするの?」 「ある、小さい頃に三人で遊んだ事があったわ」 「会社で再会か、運命じゃん」

2018-06-17 21:23:21
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

「運命ねぇ、すごいわねぇ運命」 「ねぇ大井今日疲れてんの?」 「お寿司足りてないの?由良注文しようか?」 「回ってるやつとりなさいよ......」 寿司とポテトを交互に食べる。油がすごいなと思いながら、大井は今後のことを考えた。

2018-06-17 21:35:18
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

まず北上に告白するには課題がある。純粋な気持ちで好きである事を分かってもらえなければ、勝負にもならない。 正直、鹿島の事を考えるのは、その後にしたい。 もし北上に告白を受け入れられなくても、鹿島が助けてくれるという感覚が、大井の意識しないうちにあった。

2018-06-17 21:37:52
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

解散の際に注文履歴を見ると、ポテトはこの席に10皿ほど到着していた事が分かった。 「ほら、寿司屋は味の良いサイドメニューが充実してるから」 「川内、もう退職して由良と一緒にポテト屋でもひらけば?」 「え、私夕張さんから離れるの嫌」 「大井、振られた」 「泣いていいわよ」

2018-06-17 21:42:54
鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

会計を終えて外に出ると、由良は寿司と皿のフィギュアを楽しそうにつついていた。 「よかったわね由良」 「大井がごちそうしてくれたおかげ」 「たまには寿司屋も良いね、ごちそーさま」 「毎度付き合ってくれてありがとね」 時間が経つのが早いと思いながら、今度は閉店まで居座ること無く解散した。

2018-06-17 21:57:54