セイレムの魔術について

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ペニーさん @idea51

ネトフリで『アメリカン・ホラー・ストーリー』を観たタイミングで買ったけど、そのまま積んでた『セイレムの魔術』、『幽霊学入門』で出て来たセイレムの魔女裁判とヴードゥー教の話が面白かったので、改めて読むかと思って開いてみたら… pic.twitter.com/nGxlex5uwE

2018-06-20 09:35:02
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ペニーさん @idea51

この本はセイレムの魔女裁判の話は、基本的には被害者擁護的なベクトルで作品化されたりする訳だが、実は(心理学的、文化人類学的なレベルの話では)魔術はあったのでは?という仮説を元に、事件を検証していく本であるって書いてあって、何でもっと早く読んでいなかったんだ!って感じ。

2018-06-20 09:35:02
ペニーさん @idea51

序文には、17世紀だと魔術はニューイングランド地方には普通に存在していたし(文化人類学的な意味で)、ヨーロッパにも存在してたし、まぁ今でもあるけどみたいな話とか、むしろ聖職者サイドの方が冷静だったという話とか、セイレムの魔女裁判以降も魔女裁判はヨーロッパでもあったぞみたいな話が。

2018-06-20 09:48:44
ペニーさん @idea51

そういう諸々を踏まえると、クトルゥフ神話TRPGではお馴染みの…かどうかは知らんが『ニューイングランドの楽園における魔術的脅威』(正気度喪失:1D3/1D6)が、むしろ熱いというか、厚みを持った存在に思えて来るよな。

2018-06-20 09:57:40
ペニーさん @idea51

アメリカにおいては、インディアンがゴシック的な想像力と結びつくのだという話が『マニエリスム談議』に出て来たけど、ニューイングランド地方においては魔女も結びつきそうだよね。

2018-06-20 10:00:36
ペニーさん @idea51

滅ぼすべき/滅ぼされたウィルダネス、ウィルダネスの住人としてのインディアンと魔女みたいなイメージ文脈。ベトナムもアメリカにとってのウィルダネスの文脈に置かれたみたいな話も出て来てたけども。

2018-06-20 10:04:28
ペニーさん @idea51

どうでもいいけど、アメリカン・ホラー・ストーリーは、アメリカの歴史の暗部を色々と扱っている訳だが、流石に侵略戦争系は扱わなかったな。まぁ、観てないシーズンにそういう話が含まれている可能性もあるけど。

2018-06-20 10:10:02
ペニーさん @idea51

魔女事件の発端である若い女子たち起こったヒステリーを、当時の医者はちゃんと医学的な症状としてのヒステリーだと理解しているのに、後世の解釈で通常的な意味でのヒステリーだと解釈された(所謂、女がヒスを起こした的なやつ)みたいな捻じれが発生した点を指摘しているのも面白い。

2018-06-20 10:22:06
ペニーさん @idea51

当時は、そういう神経的な病気のヒステリーの原因を、悪魔の仕業として判断していた訳だが、心因性な要素が強いのであながち間違っていないし、ストレスの原因に本当に魔術が絡んでいたので、むしろ当時の医者が正解やんけ!という。まぁ、魔術というか非キリスト系のオカルト/信仰という感じだが。

2018-06-20 10:29:53
ペニーさん @idea51

ついでに何が魔術なのかという話で、今では悪魔のシンボル的な扱いな牛や山羊的な角は、本来は自然発生的な豊穣神の記号だという話が改めて説明される訳だが(今でも角のある動物を生贄にする感じの豊穣祭の文化は田舎だと残っていたりする)、

2018-06-20 10:37:49
ペニーさん @idea51

要はそういう豊穣神的な性格を持った旧い神が、後から来た都市的な性格を持った新しい信仰に否定されるという構造は、世界中で存在している訳で、その辺を改めて考えると、日本の鬼(角が生えてる)なんかも割とそういう文脈なのかなという気もするよな。豊穣神と関連させて意識した事はなかったが。

2018-06-20 10:37:49
ペニーさん @idea51

何だかんだで、キリスト教以前から残っていた異教信仰の影響は残り続けて、聖職者(司祭)の中にも藁人形の呪術みたいなのをやるヤツだとか、豊穣の踊りみたいなのをやるやつがいて、司祭の任命はもうちょっと慎重にした方が良いのではと嘆く記録があった、みたいな話が出て来て面白い。

2018-06-20 10:42:30
ペニーさん @idea51

何だかんだで、オカルトがパワーを持つのは、グローバル化だとか文明開化みたいな要素で人々が動揺する時期なので、17世紀が魔女の処刑のピークになったというのも、不思議な話でも無いんだよな。似たような文脈で、地味に現代も軽い火炙り的なのは盛んな訳だし。

2018-06-20 10:49:27
ペニーさん @idea51

この本だと、17世紀の啓蒙的な科学者たちが、同時に今の時代の基準だととんでもなくオカルト脳だったという話も併せてしているけども。こういうのを踏まえると、科学と神学(とオカルト的な何か)は、バーチャルな領域での話だという点では地味に共通しているんだよなと、改めて考えさられる。

2018-06-20 10:49:27
ペニーさん @idea51

魔女が裁かれたというと、何だかそれ自体が迷信臭く感じられるが、実態としては、オカルト色の強い新興宗教の教祖だとか、オカルト商法をしている奴が、社会に有害だという現代と大差ない感覚で裁かれてただけらしく、冷静に考えるとそりゃそうだろ感があるけど、意外と盲点というか想像しない話。

2018-06-20 10:59:21
ペニーさん @idea51

現代だと、あんなん犯罪やろと感情論では思われつつも、表現の自由だとか、ぎりぎり詐欺とまでは言えないみたいなグレーゾーンで法的に守られている人達が、当時は今より人権とか色々とガバガバなので、そういう声に配慮して有罪判決が出る事が多かったという話なんだな。

2018-06-20 11:03:07
ペニーさん @idea51

そういうのを踏まえると、むしろ現代の方が魔術が蔓延しているし、魔女にとっても生きやすい時代だなと思える。

2018-06-20 11:04:42
ペニーさん @idea51

魔女裁判の話を読むと、むしろ見えて来るのは民衆側の馬鹿さと強さだ。結局、民衆側があんなの許されないだろ!と感情論的に盛り上がって、裁判所に詰め寄ると、司法がどれだけ説明しても聞く耳を持たずに暴れたりするので、司法が法的にどうなんだと思いつつも、折れざるを得ない場面が多いという。

2018-06-20 11:10:39
ペニーさん @idea51

ただ、民衆の物語として後から事件が語られる際は、民衆側の馬鹿さという部分は漂白されやすいので、権力サイドが主導した陰謀だったみたいな文脈で語られてしまうという。魔女は権力サイドの被害者であり、何なら俺達も被害者だったみたいな構図になる。こういう心理や逆転は、結構普遍的だな。

2018-06-20 11:14:54
ペニーさん @idea51

魔女裁判の中に、魔女として告発された加害者がマジで、自分は魔女で悪魔と契約してると信じていて、更に被害者に危害を加える意図で確かに呪術をやってたパターンがあるの面白い。それによって、被害者は本当にヒステリー症状を引き起こして苦しんでいるので、裁判官もマジかおい…ってなるという。

2018-06-20 11:30:52
ペニーさん @idea51

こういう物理的には何も作用してないけど、純粋に信じる事で発生してしまう心理的な作用の威力の存在は、当時の文脈においては、ブームになっていた唯物論的哲学に対する信仰の威力を信じるサイドからの有効な反撃手段だったという話も面白い。

2018-06-20 11:43:46
ペニーさん @idea51

当時の魔術の懐疑論者が疑っていたのは、要は魔術の効果(使い勝手)だとか、本当に霊的なモノが原因として作用しているのか、みたいな部分であって、世間に魔術が存在している事自体は特に疑っていないという。確かに魔女は要るけど、魔術なんて時代遅れで不安定で信用ならん手段だろ的な話だった。

2018-06-20 11:43:46
ペニーさん @idea51

(当時の知り得る範囲での)科学的唯物論と、信仰の心理的作用の重要性を説く立場の衝突という文脈においては、むしろ教会サイド的には魔女事件は科学的な見解からお前ら宗教を馬鹿にするけど、ほら見ろや!信仰ってヤバいやろ的な意味合があったってのは、面白いよな。

2018-06-20 11:50:01
ペニーさん @idea51

一方で、まともな牧師とか執政官が、ひたすら無責任な民衆の魔女告発(あいつ気に入らないので魔女罪で訴えたろみたいな内容)と戦い続けていたという歴史も語られている。確かに、特に行政はそういう市民の個人的な感情論にまで付き合ってらんねーという気はする。いちいち法律で裁こうとすんな的な。

2018-06-20 11:55:03
ペニーさん @idea51

この本じゃないけど、何かの本で、魔女裁判の背景として、市民がカジュアルに他人を訴えたり色々と出来る様になった結果、感情論的な話を法で裁かせようとする傾向が強くなったみたいな側面を指摘してたな。なので近代的なムーブだと。表現規制界隈を見てると、今でのその伝統は続いている感じが凄い。

2018-06-20 12:05:48