『七本槍』の半数が姿を消したあの日、水のミヤコは微かに笑っていた。力のコセンの離叛や、虹の勇者が繰り広げた殺戮など、想定の内だと言わんばかりに。木のモズはそれを気にも留めず、彼女のベッドへするりと潜り込んだ。 1 #nltkst
2018-06-19 22:39:15薄暗い店内。隅に位置するテーブル席には、他とは明らかに違った雰囲気をまとう人物が3人。「ミヤコガルドにも、果てはあるのさ」バニーさんはグラスを傾けた。「は?狂人の戯言か?」ツインテ少女が眉をひそめる。「事実を述べただけだよ」「は?」「今から、そうなった」 3 #nltkst
2018-06-19 22:45:06「この世の何処かに、きっと涯てはあり……漂う者たちの帰りを待つのだよ」猫耳の少女は楽しげに笑った。コセン・ニンジャはため息を吐く。「いやあ、君には苦労させるねえ」「アンタも大概だぞ、胡乱バニーさん」 4 #nltkst
2018-06-19 22:48:22「あとさ」猫耳少女は、コセンに向き直った。「なんだよ」「力のコセンって、男の娘なの?」バニーさんは吹き出した。コセンは酷い顔だ。「……知らん」「ほら、前回“彼”って表記しちゃったからさ。でもキミは“少女”だし……」「もう好きにしろよ」 5 #nltkst
2018-06-19 22:52:18ネコムラは薄く目を開いた。木漏れ日が眩しい。もう朝か。彼女は起き上がろうとし、自らの身体にぴたりと重なり合っている影を認めた。自身とよく似た存在。“ルナ”と、彼女はそう名乗った。「……ねえ、重いんだけど」「んにゃ、まだ眠い」「私の言うことがきけない?」「オレのがつよい」 7 #nltkst
2018-06-19 22:56:36「うるさいなあ」ネコムラは腕に力を込め、ルナを引き剥がす。そしてそのまま指を絡め、地面へと押し倒した。咄嗟のことに、ルナは目を見開いた。「おい、ちょっと、ま……」その煩い口を、自身の唇で無理矢理塞ぐ。ルナはもぞもぞと抵抗したが、すぐに諦めたようだった。 8 #nltkst
2018-06-19 23:00:07やがてネコムラが顔を離すと、ルナは目を逸らした。その瞳に、うっすらと涙が浮かんでいる。「……ばっかじゃねえの」声が震えていた。真っ赤に染まった顔を眺めて、ネコムラはにんまりと笑った。「なんだよその顔」「いや、べつに」 9 #nltkst
2018-06-19 23:06:13ふと、ネコムラの耳がぴくりと動いた。乾いた落ち葉を踏みしめる足音。見やると、異様な人影がこちらへと向かっている。ボロボロのコートに、ペストマスク。羽根つきハット。何者だ?「……殺すか」彼女はしなやかに立ち上がると、太腿のホルスターからナイフを素早く抜き取り、放った。 8 #nltkst
2018-06-19 23:08:41人影は避けなかった。その男は、右手の人差し指と中指とで高速飛来するナイフを受け止めると、怪訝そうな顔をしたのだ。ネコムラは驚愕の色を浮かべる。「……氷のネコムラにしては、随分と普通な武器を使うものだ」男は呟き、ナイフを右手で弄んだ。 9 #nltkst
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