経験値の多さよりも観察力・仮説力・修正力

経験豊富な優秀な人が優れた指導者になるとは限らず、凡庸で経験値もない人が優れた指導者になることがあるのはなぜか。 観察・抽出力、仮説力、修正力がものをいうからなのだろう。
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shinshinohara @ShinShinohara

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shinshinohara @ShinShinohara

経歴・経験を考える。 「机上の空論」という言葉がある。現場のことを知りもしないでリクツだけで理論を構築することを指す。「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」と名言にもあるように、現場での経験が机上の空論を回避する重要な手段であるのは間違いない。

2018-06-21 18:45:31
shinshinohara @ShinShinohara

ところが、イチローなど名選手のバットを作ってきた名人は、野球の経験が皆無だったという。世界中の選手に愛用されている砲丸投げ用の玉を作る職人は、砲丸投げの経験が皆無だという。経験がない者が偉そうに言うな!という言葉は説得力があるのだが、もう少しきちんと考えた方がよさそうだ。

2018-06-21 18:47:53
shinshinohara @ShinShinohara

2冊の本を書いたとき、プロフィールにすごい経験値や経歴を書くように要請された。まあ、それは当然だろう。上司本なんか、私のプロフィールを読んで不安になるんじゃないだろうか。企業社会で揉まれた感じがまるでしないのだから。

2018-06-21 18:49:48
shinshinohara @ShinShinohara

子育て本だって、私の指導した子どもの数は合計してもせいぜい百数十人。学校の先生なら、数年担任すれば達成できてしまう数だ。塾の講師でも、1年に100人以上指導する予備校の講師だっているわけだから、目を引くような経験値でもない。私よりすごい経験値の人なんて、いくらでもいる。

2018-06-21 18:52:46
shinshinohara @ShinShinohara

「名選手、必ずしも名監督ならず」という言葉もあるように、選手としての経験値が素晴らしくあったとしても、指導者として優れるわけではない。また、皆さんも、いくら教師歴が長くたって、よい先生とは言いがたい人がいることを、よくご存じだろう。

2018-06-21 18:54:56
shinshinohara @ShinShinohara

現場での経験値は、空理空論を信じ込む危険を回避するのに有効だが、経験値がなくても卓抜した指導力を発揮する人がいる。たとえば孫子は、個人で戦争を研究してはいたが、実戦を積んでいない。なのに世界史に残る兵法を打ち立て、実際に国を強くした。

2018-06-21 18:57:22
shinshinohara @ShinShinohara

では、いったい何が必要なのだろう?おそらくは、 ①現場で起きる現象から課題を抽出すること(観察・抽出力)、 ②その課題を解決できそうな仮説を立てること(仮説力)、 ③実践してみて①に戻り、手段を修正・改良すること(修正力) の3つが重要であり、経験の多寡ではないのだろう。

2018-06-21 21:29:17
shinshinohara @ShinShinohara

経験値が多すぎると、「経験に溺れている」事例が少なくない。あまりにもうまくいかない経験が多すぎて、どうやったら解決できるかという思考を失い、「どうしてうまくいかないか」の理由探しばかりするようになってしまう。経験の豊富さが、かえって思考のノイズになってしまう。

2018-06-21 21:31:29
shinshinohara @ShinShinohara

また、処理能力を超える経験も、役に立つとは限らない。たとえば常に100人の面倒を見なければならない指導者は、100人という大集団をグループとしてまとめる技術は磨けたとしても、一人一人の悩みに深く付き合い、解決するという技術が磨けるとは限らない。

2018-06-21 21:34:43
shinshinohara @ShinShinohara

研究における発見は、たったひとつの「あれ?」と感じた現象であることも多い。その場合、あまりに処理数が多すぎると、さばくのに必死で、現象を丁寧に見る余裕を失ってしまう。現象から課題を抽出するには、丁寧に観察する余裕を確保する必要がある。

2018-06-21 21:39:03
shinshinohara @ShinShinohara

課題を解決する仮説を立てるのにも、あまりにたくさんのことを考えない方が容易い。「あの場合はどうする?こんなことが起きたらうまくいかないじゃないか」と、ダメになる条件探しをしていたら、仮説なんか立てられやしない。今、目の前にしている数例を解決できりゃいい、と割りきる必要がある。

2018-06-21 21:42:07
shinshinohara @ShinShinohara

「うまくいくこと」、つまり成功を願いすぎてもいけない。うまくいかなかったらどうしよう、と思うと、気持ちが萎縮して何もできなくなってしまう。「うまくいかなかったら、また観察して改良すりゃあいい」と、気楽に失敗する気持ちで取り組んだ方がいい。

2018-06-21 21:44:55
shinshinohara @ShinShinohara

いきなり正解は出せないが、たくさんの課題を解決できないが、解決できそうだと感じた課題だけは、改良に改良を重ねて解決策を見つける。こうした作業を繰り返しできる人は、経験値の多寡に関わらず、課題を一つ一つ解決する手段を見つけていく。そしてその手段は、意外と普遍性があったりする。

2018-06-21 21:47:40
shinshinohara @ShinShinohara

私が塾で面倒見たのは10年間で100人程度、研究者になってから面倒を見る学生は年に1~数人、スタッフは常時2、3名。ちっとも多くない。その代わり、一人一人丁寧に、観察し、課題を抽出し、仮説をたて、実行し、修正をかけてきた。反復数は少なすぎず、多すぎずといったところだろうか。

2018-06-21 21:51:07
shinshinohara @ShinShinohara

新しい学生やスタッフが来ても、そのつど戸惑うことなく、スムーズに接することができるようにするには、普遍的な法則性を見いだしておかないと自分が困る。だから、自分の接する学生やスタッフだけでなく、他の事例もよく観察し、仮説を修正することを繰り返してきた。

2018-06-21 21:54:28
shinshinohara @ShinShinohara

上司本も子育て本も、そうした作業を繰り返すなかで見いだされたことを書き留めた。そして大事なのは、私が見つけた法則を暗記することではない。観察・抽出力、仮説力、修正力の三つを自ら実践することを身に付けていただくことだ。

2018-06-21 21:56:52
shinshinohara @ShinShinohara

私が見いだしたことは、その三つの作業を繰り返せば誰でも見いだせるものだ。むしろ、私の思い込みを修正することも可能だろう。私の本をマニュアルだとか教科書だと思わずに、目の前の現実から学び取り、解決する力について、紹介したものだと捉えていただいたらありがたい。

2018-06-21 21:59:03
shinshinohara @ShinShinohara

私の本を読んでくださった感想の中に、「著者は、こうして本にすること自体、矛盾を感じていたのではないか。読者はこれを読んだ後、「考えるな、感じろ」を実践すべきではないか」というものがあった。卓見だと思う。

2018-06-21 22:01:31
shinshinohara @ShinShinohara

私の述べたことを金科玉条に思ってもらっては困る。目の前の現象から、人間から課題を抽出し、解決できそうな仮説を立て、実践しては修正をかける。観察・抽出力、仮説力、修正力。それを身に付けていただければ、私が何を言ったのかなんて忘れていただいて結構。

2018-06-21 22:04:33
shinshinohara @ShinShinohara

イチローのバットを作った職人が弟子に伝えるのは、イチローのバットの作り方ではないはず。野球選手の言葉に耳を傾け、要望を聞き、材料を比較し、これなら要望通り作れるかもと仮説を立て、実際に作ってみては試してもらい、ズレを修正する、という作業の繰り返しのはずだ。

2018-06-21 22:07:14
shinshinohara @ShinShinohara

これはビジネスでも同じはず。顧客の状況、自社の業務を観察し、課題を抽出し、顧客の要望に応えられそうなシーズを仮説し、試してみては顧客の要望を改めて聞き、修正をかけていく。その繰り返しの中でよい商品は生まれるはず。

2018-06-21 22:09:18
shinshinohara @ShinShinohara

経験の多寡にとらわれず、観察・抽出力、仮説力、修正力の三つを鍛えていただきたい。そうすれば、現象を丁寧に見るコツがつかめるようになり、そのコツを言語化し、他の人に伝える能力も自然と磨かれていくだろう。私の2冊の本は、両方ともそれを述べたものだといってよい。

2018-06-21 22:11:49