「グランドホテル方式」を解剖する

グランドホテル方式=主に映画・ドラマで同じ場所に集まる複数人を同時進行で描く手法 US映画『グランドホテル』(1932年)で確立した手法
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鳥山仁 @toriyamazine

(1)グランドホテル方式で書かれた娯楽小説を精査中。このタイプの小説を書くのであれば、全ての事象にコミットできる超越的存在を出すか、でなければ複数の主人公が各々を情報的に補完するグループに所属していることがキモかな。ただし、それ以上に重要なのが取り上げるべきネタだろう。

2011-04-13 19:50:47
鳥山仁 @toriyamazine

(2)グランド方式を用いた娯楽小説では、配置されたキャラクターのパーソナリティーにかかわらず、読者が感情移入しやすいテーマを取り上げた方が無難なので、殺人・大事故・戦争などのネガティブなものが多くなりやすい。サスペンス軸を利用するためにも、この手のテーマは妥当と思われる。

2011-04-13 19:54:17
鳥山仁 @toriyamazine

(3)ただ、ここでも難しいのは時間軸の扱いで、容易に時間序列の転倒が起こると読者が混乱する。イベントA→イベントB→イベントCの主人公が、それぞれ異なっても起きている事象の時間軸が順列なら情報受容時の混乱が起きにくいが、時間軸までバラバラだと必ず混乱が起きるだろう。

2011-04-13 19:57:49
鳥山仁 @toriyamazine

(4)それでも、グランドホテル方式には「キャラクターに感情移入が難しい」という問題は残る。また、これは音楽でも同じだが、構成を複雑にすると他作品と展開が似たり寄ったりになりがちになる。むしろ、ストーリーのメインプロットよりも細部にこだわる作者の方が力量を発揮しやすいかもしれない。

2011-04-13 20:06:39
鳥山仁 @toriyamazine

(1)さて、昨日の続きでグランドホテル方式で書かれた娯楽作品の再検証。前回は「時序列がメチャメチャだと混乱する」と書いたが、作品単位で時序列がメチャメチャで、しかし人気になった作品が実はあった。聖悠紀の『超人ロック』だ。

2011-04-15 05:32:38
鳥山仁 @toriyamazine

(2)超人ロックは、不死の超能力者を通して(?)語られる宇宙年代記という体裁をとっており、これはヴァンパイアもののSF版と考えて良いだろう。特撮・SFとお耽美をミックスさせるのが得意な聖らしい作品だ。

2011-04-15 05:41:10
鳥山仁 @toriyamazine

(3)そして、この作品が長期に渡って人気があったのは、もちろん聖の努力のたまものだが、SF要素よりも耽美の要素が強かった点も見逃せない。不死者が有限の命しかない人々の脇をすり抜ける、というテーマは耽美系の作品を好む読者が比較的食いつきやすい定番である。

2011-04-15 05:47:07