またもヘイト宮司現る

国学の本居宣長は、「日本は天照大御神が生まれた[元来宗主国]である」と主張した。『馭戒慨言』では「中国朝鮮は、西方の野蛮」として「中朝は奴」（奴＝奴隷、仕える者　卑しめる言葉）と放言している。その門下である平田国学の徒らは「天皇万国総帝説」を唱えた。これは天皇こそ地球の全ての国の支配すべき者であるという思想である。これを「日本型華夷秩序」と呼ぶ者もいる。

大日本帝国には「神国日本」「日本人は天孫民族である」という思いあがった思想が蔓延したが、それはこういうところから来ているのだ。「日本人は天孫民族である」という思い上がりがそのまま中国や韓国への蔑視に繋がったのはいうまでもない。己を「高き者」とすれば他は「低き者」とする事になる。

明治維新前、排外テロに走っていた壮士らは、ことごとくこの国学や水戸学に染まった国粋主義の徒である。

国学者の家に生まれ、「毎朝参拝していた」という吉田松陰は、こうした思想を学び、さらに水戸学を吸収し、弟子たちに教えた。やがて松陰の弟子たちは、維新の元勲として明治政府を支配することになる。「征韓論」を唱えた木戸孝允、初代総理大臣・枢密院議長・韓国統監の伊藤博文、陸軍を支配した山県有朋・・・（山県有朋は松陰の崇敬者であった。「統帥権確立」に暗躍。自由民権への反感。後に神権天皇制憲法学の上杉慎吉を庇護し、桐花学会を設立。陸軍大学校に迎え陸軍と東大の国粋主義化を進めた。軍内に皇道派や統制派、官界には国家社会主義の素地を造ったとも言える）
やがて軍閥は国学と結びつきながら、より「反知性主義」化していく事になる。

「侵略戦争」と「中韓蔑視」に日本を狂わせた思想が国学である。その国学を今日でも教えているのが、神職養成校である国学院大学や皇学館の神道学科だ。（神道と神社の歴史を書いた著作物には「国学」が必ず近代の「神道思想」として書かれている）
ゆえに宮司たちが、歴史修正主義に走り、あの戦争の正統化に血道をあげたり（80年代靖国遊就館が造られ、同時期の『神社新報』には「南京事件否定論」が繰り返されている）、ヘイト発言し、ヘイト団体に共鳴してしまうのも、必然的なのかも知れない。