『YU-NO』のADAMSとシナリオ構成について

以前、シナリオ構成で「シングルスタート/マルチパス/シングルエンド」がゲームシナリオでは非常に効果が高い(http://togetter.com/li/52336)というツィートをした件の続き。 今回は『YU-NO』のADAMSを例にとっています。 「シングルスタート/マルチパス/シングルエンド」は「世界がプレイヤーによって変えられる」ということを体験させるには非常によい形式なのですが、これをシナリオ的に受け止めるにはマルチパスの分岐上で発生する様々な可能性世界を集約しうるだけの仕掛け(世界観/題材)が必須であるという結論になってます。 では、シナリオ構成的にマルチパス分岐をどう制御するかについては、またいずれお話しようと思います。
ADV ゲームの作り方
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小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
先の採点法なのですが、どんなゲームでも毎回仕掛けや趣向というのがあって、そこが分かりやすくなっているかどうかは重要ですが、同時に作り手側としてはそこが評価されるか否かはやはり関心のあるところです。そういうところをちゃんと見てくれているレビューはやはり信頼するに足ると思うものです。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
かつて岡田斗司夫氏が、作品評価を「通の目(その作品の歴史的な位置づけやスタッフの過去作等の関連性の理解)/粋の目(その作品独自の趣向の評価)/匠の目(その作品で使われている技術への理解と評価)」で見るということを書いていましたが、こういうレビューが一番優れてると思うんですよね。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
例えばですが、僕は『YU-NO』という作品が大好きですが、同時に1.ADAMSというシステムは本当にシステムなのか?これはシステムと言うよりはシナリオなのではないか? 2.今『YU-NO』を出したとして、本当に自力で解くことができる人がいるのか? という疑問を常々持っていました。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
1は『YU-NO』がADVの傑作であるといわれる割には類似のものが見あたらないという事実、2に関しては自分自身が『YU-NO』を自力でクリアしたことがある経験から言って、このゲームはクリアにかなりクセがあるということを知っていたことなどがあります。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
でも『YU-NO』のシステム/シナリオには構成上見事な仕掛けが施してあり、それはまさに、ゲームプレイヤーに世界が自分の選択によって大きく変わることを理解させられることなのですが、同時にこのゲームを作ることはADVの中でも最難関であろうとずっと考えていた訳です。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
同時に当時『YU-NO』の制作に関わっていた人から人づてに制作の状況を聞くような経験もあり、いかにこのゲームの制作が大変だったかも知り、じゃあ仮にこのゲームを今復活させるならば、どんな作り方をするべきかとずっと考えていた訳です。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
つまりあるひとつの傑作ゲームがあったとして、それが単なる偶然や奇跡の結果ではなく、再び同じ面白さを作れることを証明できなければ、それは産業ではありません。それが作り手側から見た、『YU-NO』のADVにおける「通の目」というものかと思っています。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
まあ、僕が『YU-NO』みたいなゲームを作れる機会が仮にあったとしたら、そういうことをしようと、ずっと考えていた訳です。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
さて『YU-NO』のADAMSがシステムというよりはシナリオではないか?という件に関しては、作り手の方はすぐにわかると思います。あのシステムの特徴はある一本道のルートで後に立つフラグがその前のイベントでの分岐に大きく影響するというのがポイントです。(続く)
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
しかしコレは普通、バグとして扱われるもので、このような状況が許されるシナリオもしくは世界観というのは滅多にありません。しかもそれがシナリオ上、爽快感を持って受け入れられるとまでなるとさらに稀と言えるでしょう。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
逆を言えば『YU-NO』が優れているのは、そのシステム的にはバグと思われるような状況すらも世界観に取り込み、さらにプレイヤーに世界を変えることが出来たという爽快感すら与えられたことにあります。となりますとポイントはこのようなシステムを許容できるシナリオ構成にあることがわかります。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
そのようなシナリオ構成を突き詰めていくと、『YU-NO』型のシナリオ構成はある一平面上に展開されるストーリーマップ上で複数ルート分岐という形で存在している全てのプレイ結果を、プレイヤーのクリア順と関係なしに、その次のストーリーマップへと持ち越せるということがわかってきます。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
その結果として完成するものは、『シングルスタート/マルチパス/シングルエンド』と呼ばれる、ゲームのストーリー展開にとってもっとも最適と言われる形です。これが自然に実現できるのが大きい。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
ただその代償としてクリアするのが非常に難しくなるわけで……しかもゲームというのはあくまでプレイヤーが自力で解けて初めて面白いものです。――だったらどうするか?、それが2つめの課題な訳です。そこを考えないで作るのは、やはりアホのやることだろうと思ってます。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
これは僕の勝手な想いかもしれませんが、やはり20世紀の傑作を21世紀に伝承できなければ、この先に進めないです。しかもゲームがシステマチックに作られるようになってきたのはこの10年というところですので、もう一度現代の手法で一度顧みる必要があると思ってます。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
最後に『追想』の次元ブックマーカーが『YU-NO』のADAMSと同じものかと言うと、残念ながら違います。ADAMSは1分岐1選択ですが、次元ブックマーカーは1分岐1因果です。だから選択の意味がより重要になってます。気にしてる方がいらっしゃるようなのでちょっとだけ書いておきますねw
市川望 @ichikawanozomu
@nyaa_toraneko 小林さんの解説で、この時期になってようやく追想の形がわかってきましたw 次元ブックマーカーってそういう風に利用するんですね。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko
@ichikawanozomu 次元ブックマーカーの分岐は、その選択が世界を変えるかどうかで分岐するので、例えば分岐が2つあるとしてもプレイヤーの目の前にある選択肢は2つじゃないんです。しかもフェイズという概念があるので、多分この手のゲームが好きな方には面白いと思いますよ。

コメント

小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
上で軽く「シナリオ構成」と書いてますが、ADVゲームの場合はそれは「シナリオフロー構成」とほぼ同じ意味です。ちょっと抜けがありましたので補足しておきます。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
シナリオフロー構成といっても2つあります。主にシナリオテキストが書かれたファイルが登場する順番に注目して設計される「システムフロー」と、ストーリー展開に注目して書かれるいわゆる「箱書き」です。この両者が同じようでいて実は違うということに気がつくのが重要です。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
ちゃんと「動く」ADVにはシステムフローが必須です。でもちゃんと動いているゲームが必ずしも面白いとは限りません。そのゲームが語るストーリーが面白いためには、シナリオの「箱書き」構成自体が面白い必要があります。
hamp@横浜山中 @32hamp 2011年4月17日
YU-NO、追想、ガンパレ、シュタインズゲート、それぞれネタとしては「世界系」であるんだろうけど、それを何(シナリオ、システム、プロット)に反映させるかで全然別物になっているのが興味深いよなぁ。  
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
ただしここに問題があって、ADVゲームに選択肢を入れ始めるとこの「箱書き」で制御することが段々と難しくなって、まずプレイヤーが直面する選択が3つ以上を超えると「箱書き」自体の見通しが非常に悪くなってきます。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
従って最近のビジュアルノベルでは、選択自体を少なくして極力一本道にすることでストーリー的な魅力を高めようという方向になってます。しかしこれは同時にプレイヤーの選択によって世界が変わる可能性を狭めることになります。
hamp@横浜山中 @32hamp 2011年4月17日
あとは、ADVノクリア=全てのテキスト(あえてシナリオとは言わない)の蒐集という、ユーザーの無意識な意識をどう捌くか。 今のところ世界系はそれをユーザーの勤勉さに頼ってる。 追想は、その「苦労」を設定に重ねて消毒している処が秀逸なのかな? しかし「集めても無駄」というのをポジティブにユーザーが思えるシステムって無いもんかなぁ……
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
最適な解決法は、ゲームに必須の選択肢配置やフラグ配置を完全に制御できる「システムフロー」と、ストーリーとしての面白さを管理する「箱書き」との間に一対一の対応関係を作るためのシステムを構築することです。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
この試みは『とらドラP!』ですでに行われていますが、それが「AIマップ」による選択分岐の視覚化です。簡単に説明すると、システムフローの全分岐にアドレスを設定することで、それをプレイヤーの選択ベースに組み替えるということです。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
今回の『追想』は、それをさらに洗練し、選択ベースに加え因果律ベースでの統合化を行ってます。そうすることで、よりプレイヤーの選択した「意味」を視覚化することを狙ってます。お楽しみに!
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2011年4月17日
最近の「キャラゲー」はこの程度のことは考えて作られてますよということは、知っておいてもらいたいかな。あと「ADVはゲーム性が低い」と思っている方にも、「ゲーム性の意味」をもう一度考えてもらいたいですね。そのくらい、この国のいわゆる『電子紙芝居』は進化しているんです。
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko 2016年6月11日
関連リンク: ●【G-netプレイレポート】切なさが心にしみる“終わらせる物語”――PS3/PSP用AVG『涼宮ハルヒの追想』(http://dengekionline.com/elem/000/000/365/365079/) ●迷宮型ADVゲームの遊び方のヒント(http://togetter.com/li/236653) ●ゲームシナリオ構成法(http://www.slideshare.net/nyaakobayashi/2015-62958129
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