【英霊剣豪201x番勝負】 第七節『英霊剣豪、再び』

推敲中に公式からお出しされる光秀とかいう新キャラ 6:https://togetter.com/li/1246827 8:https://togetter.com/li/1248141
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると助かります。忙しい方は後ほど投稿されるtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2018-07-16 21:01:01
劉度 @arther456

鷹が鳴いて「蟻だーっ!」空を見上げている場合ではない。地上に視線を戻すと、鯨ほどの大きさの巨大蟻が、群れを成してこちらに向かってきていた。主力部隊の背を突くつもりだろう。私は駆け出し、先頭の赤い蟻の鼻面を叩き切った。脆いものだ。鉄よりも柔らかい。1

2018-07-16 21:03:00
劉度 @arther456

宇宙からの来訪者らしいが、斬るのに苦労はしなかった。所詮は動物だ。動きに術理も何もない。本能のままに食らいつこうとする顎を避け、返す刀で切り捨てればいい。ただそれを繰り返すだけで、100近い蟻の群れは全滅した。「ホント凄いな、アンタ……!」近くの兵士が声をかけてきた。2

2018-07-16 21:06:00
劉度 @arther456

「大したことではない」そうだ。誇れることではない。いくら剣を極めたところで、できるのは目の前の敵を倒すことだけだ。戦局が大きく変わるわけではない。事実、矢継早に飛ぶ通信は、ここ以外の部隊が苦戦していることを知らせてくる。剣術では、戦場を斬れない。3

2018-07-16 21:09:00
劉度 @arther456

《大変です!敵巨大要塞が、南方から上陸!こちらに向かってきます!》南に目を向ければ、廃墟の向こう側で巨大な影が動いていた。大口径ビーム砲を備え、ミサイルを弾き返す重装甲の移動要塞だ。「野郎、よりにもよってこのタイミングで……!」隣の兵士がライフルを握りしめる。4

2018-07-16 21:12:01
劉度 @arther456

あの要塞の強さは、巨体と火力で成り立っている。強くなるための努力や工夫などは一切していない。だが、万軍を戦慄させ、戦局を覆すことができる。あれを斬れれば、私の剣術も同じ場所に辿り着けるだろうか。《敵要塞から高エネルギー反応!》「まずい、何でもいい、隠れろっ!」5

2018-07-16 21:15:01
劉度 @arther456

要塞の砲口が光った。瓦礫を消し飛ばしながら、ビームが向かってくる。光の奔流。実体は無い。瞬きの合間に鼻先まで迫ったそれに対し、刀を抜く。すると、ビームは両断され、霧散した。「……え?」《ビームが、斬られた……!?》大したことではない。陰陽師や妖怪が放つ術と同じだ。6

2018-07-16 21:18:00
劉度 @arther456

実体が無くても、存在するための因果がある。それを斬ればよい。水面に映った月を斬るのと同じだ。因果を繋ぐ線に刀を添わせれば、後は勝手に斬れる。「……15回、か」目測を口に出す。要塞の足元までたどり着くまでに、斬らなくてはならないビームの数だ。7

2018-07-16 21:21:00
劉度 @arther456

「ほかの敵は任せる」「おい!?」「勝手を言って、すまん」兵士を置いて走り出す。本当に勝手だとは思っている。しかし、目的が見えたら、走り出さずにはいられなかった。あれが剣術の果てかもしれない。そう思うと、体が動くのを止められなかった。8

2018-07-16 21:24:00
劉度 @arther456

【英霊剣豪201x番勝負】 第七節『英霊剣豪、再び』

2018-07-16 21:25:00
劉度 @arther456

「行くぞ、私に続け!」小田原城の海岸に、氏政を先頭として、北条軍が続々と上陸していた。城から駆けつけた化け物たちが彼らの行く手を阻もうとする。「鉄砲隊、前へ!」アサルトライフルを持った兵士たちが銃撃する。化け物たちは、防壁の残骸に身を隠し応戦する。9

2018-07-16 21:27:00
劉度 @arther456

「射撃を続けなさい。……康英!」「はっ!」北条家の武将、清水康英の部隊が前に出た。彼らが持つのは槍や銃ではない。丸太や金棒などの鈍器だ。「ぶっ壊せ!」「うおおおおっ!」康英の掛け声で、破壊工作部隊が一斉に残骸へと突撃した!暴力的土木工事により、残骸が次々と撤去されていく!10

2018-07-16 21:30:01
劉度 @arther456

「おおおっ!」「凄ェ!」「流石アクィラさんだ!」一部の艦娘も上陸し、丸太を振り回して遮蔽物を破壊している。「やるもんじゃのう!ワシらも負けておられんぞ!」康英が丸太を振り上げると、巨大な丸太、否、破城槌を抱えた兵士たちが走り出した。「突っ込めい!」「おおーっ!」11

2018-07-16 21:33:00
劉度 @arther456

戦局が有利に進む一方で、氏政は油断なく戦場を見渡していた。あの巨人がいない。武蔵の艦砲射撃で吹き飛ばされた、などという楽観的な考えは思い浮かばなかった。破壊された防壁に目を向けた時、氏政はようやく見つけた。瓦礫の下から伸びた、巨大な腕を。腕が動き、土の山が崩れる。12

2018-07-16 21:36:00
劉度 @arther456

「ぬううっ!偉いことになったあ!」中から現れたのは、鋼鉄の鎧に身を包んだ巨人。ランサー・三浦義意。「やはり、生きていたか……!」「どけいっ、貴様ら!ええい、ワシの刀はどこじゃ!」兵士たちを小石のように蹴散らしながら、巨人は戦場を縦横無尽に暴れ始める。13

2018-07-16 21:39:00
劉度 @arther456

「うおおっ!」「せえいっ!」アクィラと康英が巨人に飛びかかった。2人の丸太が巨人を打つ!「邪魔じゃあっ!」だが、巨人はまったく動じず、2人を殴り飛ばした。「そんな小枝でワシをやれると思ってるのか?」巨人は落ちていた破城槌を片手で持ち上げた。「やるなら、これぐらい用意せいや!」14

2018-07-16 21:42:00
劉度 @arther456

直後、巨人に砲弾が直撃、爆散した。「つまらないわね」洋上に立つのは、おぬい――否、艦娘の不知火だ。手にした12.7cm連装砲から硝煙が立ち上っている。煙が晴れると、義意は足しか残っていなかった。「司令、目標を排除しました」《……待って。魔力反応!?》「はい?」15

2018-07-16 21:45:00
劉度 @arther456

不知火の彼女の眼の前で、義意の体が、腰から肩、頭、そして丸太めいた破城槌まで逆再生のように復元された。「なんですって……!?」「残念じゃったのう、小娘。この身は既に英霊剣豪。世の理を外れ、宿業によって動く悪鬼羅刹!刀も大筒も魔術も、ワシを止めるに値せんわ!」16

2018-07-16 21:48:00
劉度 @arther456

義意は全力で丸太を振るった。魔力を帯びた風圧が、不知火に襲いかかる!「くうっ!」直撃を受けた不知火は洋上を転がった。主砲で反撃するが、義意の傷はすぐに塞がってしまう。「どうしたぁ!ワシを殺せるものはおるかぁっ!?」「ここにいるぞっ!」彼の背後から、飛びかかる影有り!17

2018-07-16 21:51:00
劉度 @arther456

「ぬうっ!?」義意は身を捩らせる。斬撃を避けきれず、二の腕が浅く斬られた。「ちょっと、何その速さ!?巨人って動きが遅いものじゃないの!?」飛び込んできたのは、カルデアのサーヴァント、宮本武蔵だった。「武蔵殿!」「ごめん、氏政さん!確信が持てなくて、ちょっと様子見しちゃった!」18

2018-07-16 21:54:00
劉度 @arther456

義意は腕の傷を気にせず、武蔵に向かって丸太を構える。「女の割に腕は立つようだな。だが、ワシに刀は通じんぞ」「いいえ、通じていますとも」「何?」そこで、義意は腕の傷に気付いた。塞がっていない。「――英霊剣豪七番勝負。あの時の事は、サーヴァントになった今でも忘れません」19

2018-07-16 21:57:00
劉度 @arther456

「……ははははは!」義意の口から飛び出したのは、清々しい哄笑だった。「そうか、お主か!お主が、リンボが言っていた、あの!」死を齎しかねない刃を前に、巨人の心は活き活きと燃え上がっていた。「名乗れ、武芸者!我が丸太の染みになる前に!」「二天一流、新免武蔵守藤原玄信!」20

2018-07-16 22:00:08
劉度 @arther456

「新免武蔵!その名、覚えたぞ!」巨人の体から、凄まじい邪気が吹き出した。邪気は2人だけでなく、砂浜全体を包み込む。「我ら英霊剣豪に、曖昧な決着など不要!勝敗を定めるのは生死のみ!出でよ、血華咲き誇る我らが極地!敗北せし者の魂を取り込み喰らう、屍山血河の死合舞台!」21

2018-07-16 22:03:01
劉度 @arther456

英霊剣豪の結界が、空の色を反転させる。昇るのは、血のように赤い月。「我が忌名、ランサー・大焦熱地獄!我が骸の真名、三浦義意!」巨人が高らかに名乗る。「いざ、いざ、いざ。いざ決死の剣を見せよ、新免武蔵!いざ!尋常に!」「――勝負!」22

2018-07-16 22:06:00