rsbs日誌#47

レズボス日誌。第四七巻 ツイ鎮SS
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艦これ二次創作SS。
胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。
一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。

深淵より来たる物

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﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  其れは水面を揺蕩っていた。 其れは水面を眺めていた。 其れは水面から世界を見渡していた。 主を。自らに相応しい主を。深淵の縁を踊り歩く者を。狂気と正気の境界線を渡り歩く者を。狂いながらにして正気を保つ者を。

2018-07-17 00:14:22
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  そして見付けた。 漸く見付けた。 やっと見付けた。 南の果てで。 世界の果てで。 海の果てで。 闇の様な黒髪に、燃える血の様な赤い瞳、陶磁器の様に白い肌の乙女を。

2018-07-17 00:14:51
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  其れは動き出した。 其れはずるりと動き出した。 其れは宛ら闇の塊であった。 其れは自ら境界を越えた。 其れは自ら明るみに立った。 赤錆びた鎧を震わせて。 朽ちても尚猛々しい大筒を携えて。 まるでゾッとする様な恐ろしい微笑みを浮かべて。

2018-07-17 00:15:43
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  其れは手を突き出した。 其れは喉を震わせた。 其れは言葉を発した。 「私を連れて行きなさい。我が主の元へ。私が付き従うに相応しい者の所へ」

2018-07-17 00:16:47
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌  北緯30度22分、東経128度04分。絶対防衛封印区域『ポイントY』に突如として現れた、六尺を優に超える巨女は、身を焦がす程の眩しい探照灯に照らされながら不気味に笑った。 深海棲艦とも、艦娘とも付かない異形の美女は、見る者の背筋をゾッとさせる様な、嫌らしい笑みを浮かべていた。

2018-07-17 00:17:30
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 ―――気が狂う程の遠い時間でもなければ、欠伸を零す程度の短い時間でもない時が流れた頃…――――

2018-07-17 00:19:36
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 大洋を飛び越えてゆく二式大艇の中で、比良坂巴は不機嫌そうに窓から外を眺めていた。日々の業務に勤しんでいた所に突然、特使を名乗る海軍大本営の使いの者が現れたと思いきや速急に大本営に出向する様に命じられ、文句の一つを零そう物なら銃を抜いて突き付けられる始末であった。

2018-07-17 00:19:46
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 比良坂は特使を名乗る使者の男を黙らせる事も出来たが、面倒な騒ぎを起こしてもつまらない物だと咄嗟に理解し…同時に、男の目が恐怖に震えていた事にも気が付いた。

2018-07-17 00:20:20
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 鎮守府の業務を島に居残る艦娘らに任せて、特使を名乗る男を桟橋から海へと蹴り落として…比良坂曰く「頭を冷やしてから本土に帰れ」との事…自らの二式大艇に乗り込んだ。

2018-07-17 00:20:44
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 ユモ222エンジンとタ-ボチャ-ジャの奏でる機械音と二重反転プロペラの独特な風切り音を聞きながら、比良坂は心底つまらなさそうに窓を眺めていた。 特使を名乗って起きながら、大本営の使いは理由も要件も述べずに「出向しろ」と言ってきた。そして一切の質問にも脅しにも答えなかった。

2018-07-17 00:22:41
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 何故?何故?何故?不可解が山の様に積み上がる。詰まらない思考に耽っていると、快速を誇る比良坂の二式大艇改は瞬く間に東京湾へと着水し、桟橋に横着けを行った。するとまるで見計らったかの様に、桟橋に車がやって来た。スモークのウィンドウを身につけた、漆黒の下品なベントレーが。

2018-07-17 00:23:52
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「車ぐらい自分で仕立てられるわい」等とブツクサと比良坂が文句を零していると、スモークウィンドウのベントレーのドアが開かれた。其処には彼女の見知った顔があった。「どうせ下品なベントレーだ、とでも思っているだけだろうに」「安倍乃か…?」意外な人物の登場に比良坂は驚いた。

2018-07-17 00:24:50
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 其処にいたのは、海軍の諸々の事件…俗に言う、魑魅魍魎の関わりが強い事件の資料を纏め、管理する部署、『海軍:第二種資料室』の部署長、安部乃が座っていた。「早く乗れ。時間が惜しい」「時間が惜しい程の事件なぞ、そうも起きんだろうに」やれやれと比良坂は溜息を付いたが。

2018-07-17 00:26:01
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 安部乃は乱暴に比良坂の胸倉を掴み、車に引きずり込んだ。彼の瞳は怒りに打ち震えていた。「今回ばかりはお前の冗談さえも聞き逃せんのだ。この魔女め!」「……黙れ小童。腐ってもわしは乙女だ。これが乙女への仕打ちか?今すぐ胸倉を話せ。そのそっ首切り落とすぞ」

2018-07-17 00:26:21
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 比良坂のマグマが滾った様な赤い瞳にじぃと見つめられて、安部乃は漸く手を緩めた。「…許せ。少し気が立っていた。だがお前にも責任はあるぞ比良坂。私の様な小童にアレの相手が務まる物か! どれだけ恐ろしい事か…」安部乃は一人ごちると脂汗をハンケチで拭った。

2018-07-17 00:26:35
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「安部の名が泣くぞ。お前様、腐ってもあの『安部』の末裔か?」「伝承に伝わる程の能力など、私にはとっくに残されて居ないさ。お前が羨ましいぐらいだよ。漆黒の魔女」「ハッ!」比良坂は嘲笑った。心底嘲笑った。

2018-07-17 00:27:21
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「怒り、悲しみ、恨み、怨念の果てに魔道に落ちた女の何が羨ましい? わしの力は如何足掻いた所で変えられん。親殺しの術だ。血に塗れた怨術だ。それの何を羨ましがると言う。たった少しの、些細な普通の幸せが手に入らなかっただけでしか無いのだぞ」

2018-07-17 00:28:25
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 自らを嘲る様に語ってみせる比良坂を、しかし安部乃は静かに答えた。「…お前の説法を聞く暇は無い様だ。到着したぞ」其処は意外にも、海軍の研究工廠の一つであった。然し辺りに活気は無く、静まり返っている。いっそ不気味な程に、『精気が無い』。

2018-07-17 00:28:41
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「…おい、安部乃。どうした此処は。何故こんなに精気が無い。何故こんなにも澱んだオーラが渦巻いている。一体此処には何が居る!? 答えろ安部乃!! お前達海軍は! 一体全体『どんな怪物』を引っ張り出してきた!?どれ程の怪物を引っ張り出してきた!!」

2018-07-17 00:29:18
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 激昂しながらも問いかける比良坂に、安部乃は淡々と掛けていた眼鏡を正した。その際にキラリとレンズが光を放った。まるで心に壁を張るかの様に。「残念だが、私には一切の答える権利が無いんだ。『どうしようも出来なかった』んだよ海軍は。お前に頼る以外に。魔女に頼る以外に。」

2018-07-17 00:30:27
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女 @r_s_b_s

#rsbs日誌 そう答える安部乃は、肩を小さく震わせていた。それは怒り故に震えているのではない。恐怖故に震えていた。比良坂は心底苛立ちながら舌打ちを一度ばかり零すと、安部乃の肩を小突いた。「付いて来い。安部の末裔ならば魔女の従者ぐらい勤めて見せろ」

2018-07-17 00:31:02