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KUMI_Kaoru @KaoruKumi
映画『ラストエンペラー』で印象的だったこの曲。音楽合わせの試写でスタッフ総立ちになったという名曲です。分析してみましょう。 youtu.be/d0XQmsuJpus
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以下の楽譜は『坂本龍一の音楽』(山下邦彦)からの引用です。原則、これ準拠でいきます。 pic.twitter.com/FxyaoVyg9u
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♪ファ、ソ、ラ、シ♪ と旋律が駆け上がる。 どうして「ファ・ソ・ラ・シ」なのかわかるでしょうか。 鍵は「ファーシ」の音程にあります。 これ、増4度音程ですね。実際に鳴らしてみればわかるように、これは不安定に響く。不吉、不安の響き。 この不安定な音程のなかを、全音階で駆け上がるpic.twitter.com/5l9D2TTRyr
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和音を見てみましょう。「レ」が1オクターヴ違いで鳴り響いております。 pic.twitter.com/n02BsSs7cT
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旋律が「ファ」で始まる。 それを和音が「レーラ」で包み込む。(赤が「レ」で、緑が「ラ」で、青が「ファ」) 「ファ」が「レ・ファ・ラ」和音の真ん中の音となるわけです。 そこにさらに「ド」が重なって「レ・ファ・ラ・ド」の和音ですね。 旋律が和音の基音に対して三度だから、力強い響き。 pic.twitter.com/dU5Uj8Qrlt
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ところでこの縦の連なり、四度音程が混じっています。(赤の部分) 旋律の四度下に音…これは「戦メリ」でも使われています。四度音程は東洋風に響くから。それで「ラストエンペラー」の楽曲でも使われている。 pic.twitter.com/xkgGZyA7hL
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二拍目を見てみましょう。 一拍目にあった「ラ」が消えていますね。 なぜなのか? おそらく ♪ラ、ド、ド、ド♪ とリズム感を演出するためです。 pic.twitter.com/m3V2oqKy45
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ほら ♪ラ、ド、ド、ド♪ になってます。 pic.twitter.com/edhe2jyRJ1
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一拍目のヴォイシングが、その後も続いていく。 「ラ」のみが消える。 ♪ラ、ド、ド、ド♪ とリズムをつけるために。 pic.twitter.com/kSPkBk9oX8
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次。旋律は ♪ミ、ファ、ソ、ラ♪ に変わる。 pic.twitter.com/1xxKUFbgaH
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先の旋律は ♪ファ、ソ、ラ、シ♪ つまり「ファーシ」の増四度音程を駆け上がる。 不安のなかを空に向かって駆けていくイメージ。 pic.twitter.com/OZw8EP1Jyu
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しかし今度のは ♪ミ、ファ、ソ、ラ♪ つまり「ミーラ」の四度音程。 先のが増四度だったのが四度に落ち着く。ゆえに、ほっとする感じがする。 pic.twitter.com/fKc8NucHUZ
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左手も「レーレ」から「ドード」になる。 pic.twitter.com/uIDvjSmgXV
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旋律が「ファ・ソ・ラ・シ」から「ミ・ファ・ソ・ラ」つまり一つづつ下に引っ越しているのにあわせて、左手も「レーレ」から「ドード」にお引っ越した。
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しかし、よく見比べてみてください。赤→青にお引越しするにあたって、すべての音が一つ下に移動しているのかというと、実はそうではない。 pic.twitter.com/1Lcuqda70u
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緑の部分をご覧ください。「ラ」です。この音はお引越しをしないで、もとの住所に留まっています。 なぜなのか、わかるかな。 pic.twitter.com/0hCojqABUK
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もしこの「ラ」(緑)を「ソ」に移動させてしまうと、左手の「ドード」に「ソ」が加わるわけだから、トニック和音になってしまうわけですよ。 pic.twitter.com/s2rF3yjDaE
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この曲は、旋律は長調なんだけど和声進行は実は短調なのです。 坂本の音楽は、4度違いの調が共存するという技が好んで使われています。 そしてこの「レイン」という曲は、平行調が共存という技でできている。 並行調は、CメジャーとAマイナーの関係が典型ですね。譜面では同じ調号になるという。
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しかし「レイン」が面白いのは、並行短調で和声が進んでいることを巧みにあいまいにしているところです。 よーくご覧ください。旋律では「ソ」(赤でマーク)が鳴るのだけど、それ以外では「ソ」がいっさい鳴っていない。 どうしてか。 「ソ」を鳴らすと、和声進行も長調になってしまうからです。 pic.twitter.com/0jXMZIV8Xi
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といって「♯ソ」を鳴らしてしまうと、和声進行が実は並行短調であることがわかってしまう。 それで「ソ」も「♯ソ」も鳴らさない。 こうすれば聴く側は「旋律では『ソ』が鳴っているんだからこの曲は長調だよな」と判断する。
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しかあし、そこが巧みなミスリーディングなのですよ。真相はというと「旋律さんは『ソ』を鳴らしてはるけど、私ら(和声進行)は『ソ』も『♯ソ』も鳴らしておりまへんねん。そやさかい長調なのか並行短調なのか、決めつけられても困りますわなー」なわけです。
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第5~8小節を見てみましょう。 「ソ」と「♯ソ」が入り乱れていますね。 これ、おそらく左手は短調で右手は長調なのです。 左手は「♯ソ」を奏で、右手は「ソ」を奏でる。 一見、左手が「ソ」を鳴らしているようでも、実は右手が鳴らしています。 いえ物理的にはそれ無理なんだけど理論上は、ね pic.twitter.com/mwglyVa7dT
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右手(長調)と左手(並行短調)が互いに領空侵犯してるイメージ。
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旋律が「ファ、ソ、ラ、シ」で不安を 「ミ、ファ、ソ、ラ」で一時の休息を 再び「ファ、ソ、ラ、シ」と駆け上がって… 「ド、レ、ミ、ド」で雲を突き抜ける。
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「ミ、ド」のとき、左手は「ソーソ」を力強く響かせる。 「ド・ミ・ソ」の和音となる。 もろにトニックですね。 不安のなかを駆けあがり、短調のなかをドミナントで盛り上がって、短調のトニックに着地した直後に、並行長調のトニックに着地する。 まるで「とうとう私は自由よ!」と雄叫ぶように。
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