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坂上秋成 @ssakagami
海外文学についてちょっと思うところを書こうと思う。前提として、海外文学は読まれていない。超名作が大量にあるにもかかわらず圧倒的に売れていない。読みづらい、難しいといったイメージは、多くの人が海外文学に抱いているものだろう。そして実際、「有名な」作品のほとんどは難解なのだ。
坂上秋成 @ssakagami
しかし、この「有名な」という部分に最大のトラップがある。端的に言えば、学校で習ったりするレベルで「有名な」作品は、ほとんどが無駄に長くて物語として下手で、読みにくくて、つまるところ恐ろしく退屈なのだ。そして、いかに「有名で」評価が高い作品だろうと、それに付き合う必要など存在しない
坂上秋成 @ssakagami
我々日本人が日本の小説を読む時、そこにはある程度、前提が共有されている。ところが海外文学を読む場合、文化的・政治的な背景が違うし、言語感覚や宗教観、つまりは世界認識そのものが異なっているため、容易には馴染めない。まずこのことを踏まえないと、海外文学嫌いは加速するだけだ。
坂上秋成 @ssakagami
とりわけ古典や世界的に評価の高い「文学」から入るのは最悪である。僕はプルーストを読んで一ヶ所たりとも面白いと思ったことがない。ヴィクトル・ユゴーを読んだ時には本当に省略の技術が下手だと思った。カフカを凄いと感じたこともほとんどない。フォークナーの描くアメリカに全く興味が持てない。
坂上秋成 @ssakagami
そういう意味では、僕は世間的に評価されてきた「文学」について何も分かっていないのかもしれない。『百年の孤独』なんて、こんなんマンガの編集部に持ってったら「キャラの描き分けができてません」で即ボツ喰らうなーとしか思っていない。けれど、正しく古典を通らなくとも、海外文学は楽しめる。
坂上秋成 @ssakagami
世の中には岩波文庫の赤を全部読んでいるというような人間もいて、そういう人からしたら僕なんかニワカもいいところなのだが、別に文学も小説も専門家が大上段に語るだけのものでなく、ニワカが真剣に読めば楽しめるということの方がはるかに重要だろう。
坂上秋成 @ssakagami
ドストエフスキーもトマス・ピンチョンもガルシア=マルケスもドン・デリーロも読んでないとしても、別に海外文学を語る権利はある。ほんの数冊読んだだけで海外文学を語る権利は、誰にでもある。この海外文学をとりまく「重さ」、大量の読者を忌避させるハードルの高さを解消することが最優先だ。
坂上秋成 @ssakagami
それを踏まえて、「海外文学に苦手意識がある人にオススメしたい海外文学」を10個くらい挙げてみようと思う。読みやすさ、物語性、ワクワク感、実験性と物語のバランス、何よりも面白さ。本来、小説にはそれを読んだ人間の生の在り様を変えるくらいの力はある。その射程が広がればいいと思う。
坂上秋成 @ssakagami
【1】シェイクスピア『ロミオとジュリエット』 なんでロミジュリやねんと思うかもしれない。しかしロミジュリの原文(日本語訳もほんとの原文も)、一般に流通したイメージを一気に上書きするような言葉の美しさに飾られている。訳は松岡和子のものを薦めたい、そして可能ならば音読してほしい。
坂上秋成 @ssakagami
【2】サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 有名タイトルだが文章がポップで、必要な前提知識も大してない。主人公の少年ホールデンの独特な口調(≒文体)、青春小説的展開、成長物語……とにかく日本人が読んでも馴染みやすい。サリンジャーは難解な短編も多いが、これは気楽に読める。
坂上秋成 @ssakagami
【3】レイモンド・カーヴァー『大聖堂』 初めてカーヴァーを読む人は、あまりにも無駄を削った描写に戸惑うかもしれない。しかし慣れてくると、その細く削られた文体と、不気味さと温かみが同居する物語の虜になる。「ささやかだけど役に立つこと」と「大聖堂」の二つは世界最高峰の短篇。絶対。
坂上秋成 @ssakagami
【4】ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』 おフランスらしさに満ちた一作。物語展開も分かりやすいが、ギミックに注目して読みたい。「カクテルピアノ」や「うなぎの出てくる水道」など、「こんな発想で小説書けるんだ!」と驚かされる。サブテクストとして岡崎京子の漫画を先に読んでもいいと思う。
坂上秋成 @ssakagami
【5】ブローティガン『西瓜糖の日々』 この冒頭3行の引き込み力。架空のコミュニティ、アイデスを舞台に時に美しく、時に血生臭い世界が描かれる。かつてはサブカル好きのバイブルだった一作(たぶん)。詩を読むように物語が進む快楽がある。 pic.twitter.com/y6IaGexiB2
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坂上秋成 @ssakagami
【6】アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』 SF超大作。宇宙に捨てられ復讐を目論む男、ガリー・フォイルの内面が力強い文体で描かれる。ジョウントと呼ばれるテレポート能力設定の活かし方が熱い。読みにくい箇所は多々あるので、先にサブテクストでこちらを読んでもいい⇒rss.r401.net/yaruo/site_lis…
坂上秋成 @ssakagami
【7】テッド・チャン『あなたの人生の物語』 一冊の中に複数の世界を詰めこめる短編集という形式の素晴らしさを確認できる一冊。とりわけ表題作の言語にまつわる発想とSF設定の噛み合い方、そこから号泣必至の物語を作る作者の力量に感服。映画もあるのでそちらから入れば表題作も理解しやすい。
坂上秋成 @ssakagami
【8】クッツェー『恥辱』 セクハラで大学を首になった教授が、娘のもとへ行ってさらなる恥辱を味わう、なかなか重い物語。けれど文章は極めて読みやすい。西欧近代の感覚で生きている主人公と、前近代的な世界にしがみつく娘との擦れ違いが見どころ。ジェンダー論としても読める小説。
坂上秋成 @ssakagami
【9】ヴィクトル・ペレーヴィン『眠れ―作品集「青い火影」』 奇想ばかりが集められた短編集だが、ロシア文学臭さはないというか、読みやすいし素直に楽しめる。ターボリアリズムと呼ばれる作家の凄味が詰まっている。文学がどれほど自由であるか、十分に感じ取れるはずだ。
坂上秋成 @ssakagami
【10】アンナ・カヴァン『氷』 まったく読みやすくない。筋らしい筋が存在しないので、初心者向けでもない。けれど、ある男がある少女を追いかけるだけの話を、世界の崩壊にまで繋がるように描いてしまう作家の筆力を味わうだけでも価値がある。まさに「考えるな、感じろ!」、文学の最高峰だ。
坂上秋成 @ssakagami
そんな感じで10冊挙げてみた。とにかく海外文学はパラパラ立ち読みして3ページくらいで合わなそうだと思ったらやめといて、文章がしっくりくるものを選ぶべき。好きな翻訳者とか出てくると楽しみも広がる。楽しむ分には古典の超大作とかどうでもいい。自分の言語体験が豊かになればそれでいいんです。
坂上秋成 @ssakagami
ついでに言えば、文学理論を少し知っておくと海外文学は一層楽しめると思う。「読む」とは何かを知るのにもいい。新曜社『現代文学理論』がとにかくおすすめ、ジョナサン・カラーやイーグルトン読むより絶対手っ取り早い。個人的には『カルヴィーノの文学講義』、クンデラの『小説の技法』もお薦めです
坂上秋成 @ssakagami
安倍公房がかつて「翻訳のよしあしで作品の好悪は変わらない」的なことを言ってたと思うんですが、まあ圧倒的嘘ですよね。日本語になってない翻訳をする人ってのがマジにいて、それは辛いなと。信頼できる訳者を探すことはほんとに大事ですね。 twitter.com/claha_jyogasak…
坂上秋成 @ssakagami
あ、ポール・オースター挙げればよかったな。しまった。「ムーンパレス」と「最後のものたちの国で」の二冊はガイブンアレルギーの人にこそ薦めたい勢い。
坂上秋成 @ssakagami
カフカについては『変身』といくつかの短篇・寓話は好きですが、長編でぐっときたことがないです(その意味でアンナ・カヴァンはカフカよりカフカらしくて一層好き)。プルーストに関しては文学史的意義とは別に、どうすれば楽しめるのか真面目に知りたいところです。 twitter.com/t_pseudo/statu…
坂上秋成 @ssakagami
死ぬほど観たかったけど、このタイミング逃したらたぶん一生海外文学ツイートしなそうだったのでそっち優先した。ベルギーよりもガイブンをとったんだ……後悔は……ない…… twitter.com/3354ppm/status…

コメント

frisky @friskymonpetit 2018-07-17 17:57:00
何か自分もおすすめを書こうと思ったがまとめで既にクッツェーが出ていたので、このリストは自分のおすすめなんかよりもよほど良さそうだ、という気になった。
Aki @Yy7_f 2018-07-17 18:32:32
文学と言いつつ大衆小説でもいいのか。ならオススメのミステリやSFならいくらでも挙げられる。本当の文学を探したいなら「バーナード嬢曰く」なんかを読むといいと本気で思う。 カフカの短編はいいな。2ページくらいで終わるのもある。
fumi @karakararen 2018-07-17 18:50:18
虎よ、虎よ!はやる夫版から入った方が… と思ったらしっかり把握されていた
阿弥ちゃん具 @AMICHANG_DEATH 2018-07-17 20:31:06
読みやすくて面白い作品ならアゴタ・クリストフの「悪童日記」とかいいよ。あと最近のだとパトリク・オウジェドニークの「エウロペアナ」とかぶっ飛んでて面白いよ。
ベル邸 @berutei 2018-07-17 22:38:04
いや『ロミジュリ』を進めるのに「美しいから」などという言葉は生ぬるい。ロミオの友達である、しょーもないギャグばっか飛ばしてるマーキューシオ君が面白くていい奴なので、とりあえず彼に注目して読めば(見れば)楽しいと思イますネ!!!
Destroyer Rock @hondapoint 2018-07-18 05:38:39
karakararen あれが同時代の人達に評価されなかったのがわかりません。めっちゃ面白いのに…。
ふーこ👾 @fukuchi0606 2018-07-18 07:19:52
海外小説は、SFミステリーあたりが好きで読んでた事があったけど、登場人物の名前が覚えづらくて。
れが@EDF @lega235 2018-07-18 09:44:04
テッド・チャンが上がってる時点で当たりしかない あなたの人生の物語名作すぎて映画の方怖くて見れない
サーバル @serval37 2018-07-18 10:09:11
海外文学に詳しい訳ではないけど、大上段に立たず気楽に読んで語り合えて、読んでる自分自身が(周りが何を言おうと)「難しい! これ無理!」と感じたら気楽に投げ出して他にパッと手を出すことが許される、そんなフィールドや空気感は大事だよなと思う。ライト層を切り捨てるジャンルは衰退するからなー。
はくまに・アーチボルト @haku_mania_P 2018-07-18 12:16:27
海外文学って、文章が硬くて読みにくいイメージが定着してるからなあ。実際文体が硬いし、訳者によっても多少の違いはあるけども。個人的にはラブクラフトとか好きだけど、あれなんか典型的なお硬い文章だし。
F414-GE-400 @F414_GE_400 2018-07-18 12:52:22
SFは文学に入れてもいいんだという驚き。別ジャンルかと思ってた。
家ノ風 @ie_kaze 2018-07-18 13:02:20
海外小説は面白いのが一杯あると思う、でも日本語に訳されたときその翻訳者の実力で一気に作品が変わるのを見た、だから敬遠されるのであって、作品自体を苦手という人はそんなに多くないんじゃないだろうか。
saebou @Cristoforou 2018-07-18 13:43:20
これ、「とにかく長い作品が読めない」人向けのリストですね。大長編と言えるものがないのに戯曲が入ってるあたり、かなり人を選ぶ。
@taiheyou 2018-07-18 19:00:00
読みやすくなってるのは翻訳家の仕事だと思うんだが
yuki @kawase329 2018-07-19 20:35:00
ユゴーのレミゼとかメルヴィルの白鯨とか、ストーリーに直接関わっていない部分が多い小説が読みにくいっていうのはよくわかる。そういうのはいきなり岩波の全訳とかに当たる前に、抄訳とか子供用のリライト版を読めばいいと思う。子供向け世界文学全集とか大人が読んでも結構いける。ジョイスとかピンチョンとか前衛系は諦めろん
石澤三 @1430Xi 2018-07-21 12:25:09
日本語だと「雨が降っている」だけどもラテン語だと「(神様が)雨になさっている」なのでボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」で神様が祝福の風を口笛みたいに吹いているのは日常語の視覚化なだけで奇異な要素は欠片も無いのだけど「(    ホテプが)禍々しい風を吹かせ」と直訳したら日本語としては二重に奇異なので哲学的な表現と錯覚する、みたいな文化的な違いが翻訳の難しさと思う。
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