【ぎりぎりまで】福間健二 #k2fact197
人、自分以外のだれかのためにいいことしたくて、くずれた甘美なメロディーに泣いたりして、きのうの影。夢ではそんな手があるとは思いつかなかった。気温四〇度以上のLAから床上浸水の岡山へのメール。どうするか。ガラス系、植物系、性質はどうでもぎりぎりまで粘る。(ぎりぎりまで1)#k2fact197
2018-07-09 09:48:36LAでは大谷翔平が久々のホームラン。日本では大雨による被害のニュースがつづく。そんなとき、つくば市に行き、夫を亡くしたばかりのA子さんに会う。秋葉原から出るつくばエクスプレスに初めて乗り、つくばの詩人たちには連絡しそびれ、落ち着いたあかるい山を見た。(ぎりぎりまで2)#k2fact197
2018-07-10 09:38:31テヘランからの飛行機、「わたしたち」のあいだに座った人がよくしゃべった。その人のおかげで「わたしたち」は親しくなった。チャイコフスキーを聴きながらセックスしたことがないって書いた詩人がいると言ったその人に「彼」は、詩を書いているイトコがいると言った。(ぎりぎりまで3)#k2fact197
2018-07-11 09:50:50詩を書いているイトコは川べりのシリーズによく逃げる。大雨で川がどうなるのかなんて考えずに、蜜月の、空気の音。どうだったのか、つくば市。タバコを吸えそうな場所がない。小さなガラスの城から出てきた婦人警官の動きは軽快。聞き方がわるかったのか。遠まわりした。(ぎりぎりまで4)#k2fact197
2018-07-12 12:08:10遺影の「彼」の笑顔。何年前だろう、長生きしているY子叔母さんと撮った写真から引きのばしたそうだ。どんなことも、すぐにわかったと言わない、ゆっくり理解していく新しい笑顔だ。iPadに入れたその笑顔を何度も見る。負けていい。負けろ、計画。基本と総合、表と裏も。(ぎりぎりまで5)#k2fact197
2018-07-13 09:52:42月曜日、つくば。火曜日は納豆の日。納豆は食べそこない、チューズデイ・ウェルドのことも忘れていた。水曜日、新しいメガネ。世界はいたるところに文字をおき、その大半は意味がわからない。木金、意味がわからなくても魅力的な「きみたち」の速度とやわらかさに負けた。(ぎりぎりまで6)#k2fact197
2018-07-14 09:32:52何も、しない。ここで踏みつけられたり、引っかかれたり、噛みつかれたりするなんてことないように、ただハラハラして、匙ですくった砂糖をこぼした。それを合図に、時間どおりのチェンジ。ショパンで脳の掃除をしてきたとかで、司令塔。長女。来て、澄みきった瞳で。(ぎりぎりまで7)#k2fact197
2018-07-15 08:44:23欲しいのは、体操したり散歩したりするこの地球の人間に組み合わせる「急ぐ理由」。たくさん来て、すえた匂いを放ったね。次女。事情。部屋の奥にいるイトコたちを見た。それぞれの思いで唇がふるえている。ロックンロール。途中でビール飲んだりしてよかったのか。(ぎりぎりまで8)#k2fact197
2018-07-17 11:30:26いびつな四角のなかに列をつくる粒子をローラーで押さえていく。色、粘り気、変化させても、つぶさないように。夢を見た。かわいいね。好きだと言う。家事とか努力すると言う。遅くても、三女。赤いサンダルで、この社会のどこかで、ほくそ笑んでるにちがいないから。(ぎりぎりまで9)#k2fact197
2018-07-18 09:32:30甘美だったもの。再生する方法、あれば教えてくれなんて場合じゃないよな、と空を見あげて、きのうは暑い川口市。あの家族、その家族、どうなったのだろうと思って、ここでも夫を亡くしたばかりの人に会う。何がおこっているか。洗いざらい打ち明けたいのはやまやまだが。(ぎりぎりまで10)#k2fact197
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