ベリアル・アンダーカバー #1
(これまでのあらすじ:アラスカの都市シトカを支配するロシアンヤクザニンジャ組織「過冬」の首領、シンウインター。彼の手を逃れ、銀の浜辺で隠者シルバーキーと共に暮らしていた少女ゾーイは、シンウインターが差し向けたニンジャによってシトカに連れ戻される)
2018-07-20 22:22:28(ニンジャスレイヤーはシルバーキーに恩を返すべく、シトカに潜入、カラテ行使に出た。激化するニンジャ同士の戦闘。やがてシトカにはソウカイ・シンジケートのニンジャが因縁をつけに現れ、抗争に発展する。ニンジャスレイヤーは過冬の精鋭、ワイズマン達を次々に打ち破り、ゾーイを取り戻す)
2018-07-20 22:24:31(業を煮やしたシンウインターは、ニンジャスレイヤーらが集まるフジミ・ストリートに強襲をかけた。ユミル・ニンジャの超自然のオーロラを宿すカラテは凄まじく、ニンジャスレイヤーとサツバツナイト、スーサイドの力は分断され、各個撃破され、ゾーイは再び奪われてしまった)
2018-07-20 22:27:08(シンウインターはその場でニンジャスレイヤーをテウチにするつもりであったが、これをかろうじて阻止したのはゾーイの特異な力であった。シンウインターの撤退の代償として、フジミ・ストリートは異常なノイズ入り混じるグラウンド・ゼロと化した。シンウインターはゾーイと共に飛び去ったのである)
2018-07-20 22:29:55プールサイドに踏み入った俺を出迎えたのは過冬のヤクザではなく、血統書がついていそうな室内犬だった。黒目がちな目を見開き、牙から涎を滴らせ、勇敢にも俺に襲いかかろうと肢を突っ張らせていた。俺は犬を睨み、急性ニンジャリアリティショックで昏倒させた。 1
2018-07-20 22:37:46悪趣味なプールの水面は微かな風を受けて揺れている。蛍光色のライトアップと頭上のオーロラは乙なものだ。こんな状況でもなければ、そこのパラソル・チェアでくつろいでもいい。俺はガラス片を蹴散らし、屋内にエントリーする。ニンジャの気配はないが、派手にやり合った痕跡はありありだ。 2
2018-07-20 22:40:28俺はカーペットにしゃがみ、血の染みを舐めた。ニンジャソウルの残滓を感じる。爆発四散痕だ。それから、血を浴びてダメになったナチョがある。他にも……おそらく非ニンジャの……何人かの存在の痕跡。ニンジャのイクサを目の当たりにし、恐慌にかられて逃げ去ったか。 3
2018-07-20 22:44:16実際、ヤクザ・オヤブンらしいヒップスターじみた高級邸宅だ。だが当然、ここでシンウインターが爆発四散したという情報はない。いかにも気の抜けたアトモスフィアと、伝え聞くあの男のパーソナリティが噛み合わない。推測するに、この邸宅を奴が使用するのは月に数度、いや、年に数度か。 4
2018-07-20 22:48:31爆発四散したのはおおかた、留守番役の下っ端のニンジャだろう。主の居ぬ間に、好き放題ハメを外していたというところ。それでも何らかの……手がかりはある筈だ。俺はリビングを横切り、チントーチェン食器の納められた棚をあらためた。そこに写真立てを発見した。成る程。 5
2018-07-20 22:53:09写っているのは二人。勿論、男の方はアドリアン・メギルヴィッチ。シンウインターだ。その横で微笑む女は……歳月の経過があるとはいえ……俺が事前に見せられた肖像と同一人物。ディアンタ。どんな心境だった。全てを捨てて海を渡った時。……尋ねても詮無い事ではある。所詮、俺は知らぬ人間だ。 6
2018-07-20 23:01:13「ねえ、こんな風になっているのは、このストリート?それとも、このシトカ全体?それとも、この大陸全体かしら」歩くホローポイントに、赤い肌の悪魔じみた女が囁く。ホローポイントは振り返らない。どうせ、歩いていれば、すぐそこに居るからだ。 7
2018-07-20 23:06:59「それとも、世界全体?ねえ、戻ってきたら時間が経っていたとしたらどうする?何十年も。素敵ね。アフターマス」「黙れ」ホローポイントは街灯の傍らでセンコ花火を焚いている女に冷たい視線を送る。「そうしたら、貴方の知っている相手はわたしだけになる。それで、ずっと二人きりよ」「黙れ……」8
2018-07-20 23:10:43ホローポイントは彼女を撃ち殺そうと銃を向け、下ろした。そして尋ねた。「お前はどうなんだ。こういうクソの経験は」01ノイズの澱みをまたぐ。「わたしに助言を求めるのはルール違反よね」女は……ディアボリカは嬉しそうに笑い、否定のサインをした。ホローポイントは舌打ちして先に進む。 9
2018-07-20 23:13:32「貴方は私を殺したんだから。私の仇は助けない」「何度でも殺してやる」ホローポイントは締め切られた窓から、息を殺した住人の視線を感じ取る。睨み返す。「アイエッ……」息を殺した悲鳴。ホローポイントは苛立つ。オーロラ。石畳。何もかもに。 10
2018-07-20 23:16:02やがて彼は目的地であるスクラップ場に辿り着いた。廃車や廃モーターヤブ、明らかに健康被害に繋がるテラテラ光る泥土、危険マークのドラム缶が出迎える。廃車の中でディアボリカがハンドルを握り、おどけて見せる。ホローポイントは構わず、廃ガレージに向かった。 11
2018-07-20 23:18:37既に01の澱みは見られない。局地的なものだろう。一体何が起きたか確かめるには、とにもかくにも、他のシックスゲイツの連中と合流するのが手っ取り早い。この廃ガレージはソウカイ・シンジケートの抗争拠点。海賊ポータルが設置されている。「……」彼は入り口で立ち止まり、鼻をひくつかせた。 12
2018-07-20 23:22:51その、直後!「イヤーッ!」頭上から垂直に落下してきたニンジャが、手にしたヤリで、ホローポイントの頭頂部から爪先まで貫こうとした!ホローポイントは横に転がりながら二挺拳銃を乱射した。BLAMBLAMBLAMBLAM!「ヒヒィー!」奇襲ニンジャはヤリを突き立て、回転ジャンプで銃弾を逃れ着地! 13
2018-07-20 23:26:41数秒後、突き立ったヤリはバチバチと音を立てて爆発!KBAM!ホローポイントは鬱陶しい表情を浮かべて横に跳んだ。そして奇襲ニンジャに先手を打ってアイサツした。「ドーモ。ホローポイントです」「ヒヒ。ソウカイ・シンジケートだな。そのエンブレム」「見りゃわかるだろうが……ドサンシタめが」 14
2018-07-20 23:28:34バチバチと音を立て、過冬のニンジャの両手に新たなヤリが握られた。彼は目を細め、アイサツを返した。「ドーモ。ホローポイント=サン。オホートニクです。ヒッヒヒ……お仲間を探してここにおいでなすったかい?残念だったなあ……会えなくてよォ……」BLAM!返事代わりの銃撃! 15
2018-07-20 23:31:01「イヤーッ!」オホートニクは銃弾をブリッジで回避し、バチバチと音を立てるヤリ……カラテ・ハープーンを投げ返した!ホローポイントは回避行動を取らず、そのまま前進!顔の横をかすめるハープーン!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ハヤイ!ホローポイントの一瞬の踏み込み、そして前蹴りだ! 16
2018-07-20 23:35:01「オゴーッ!」オホートニクは苦悶しながらゴロゴロと床を転がり、もう一つのハープーンを投擲した。異様な気配を察知し、ホローポイントはクロス腕でガードした。KBAM!ハープーンは彼の眼前で爆発した!「ヒヒッヒヒヒ!オホートニクは爆煙を前に新たなハープーンを二本生成!「死シィー!」 17
2018-07-20 23:38:01「「ザッケンナコラー!」」「「スッゾオラー!」」しかも、ナムサン!ガレージ内の廃モーターヤブの陰から複数のロシアンクローンヤクザが飛び出し、爆煙めがけてチャカ・ガンの十字砲火を浴びせたのだ!BLAMBLAMBLAMBLAM!そこへ容赦なくオホートニクはハープーン投擲!「数の利!イヤーッ!」 18
2018-07-20 23:39:50「イヤーッ!」ハープーンをすり抜け、瞬間的なダッシュでオホートニクの眼前に出現したホローポイントは、既に彼の襟首を掴んでいた。そして次の瞬間、「グワーッ!?」頭突きを額にめり込ませていた!怯むオホートニク!ホローポイントは唸る!「面倒くせェ手品だ。終わりだ!」 19
2018-07-20 23:43:04