ソルベンシー・マージン比率講義 by いわきさん(@s_iwk)

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いわき @s_iwk

ソルベンシー・マージンは、日本語で「支払余力」と訳されることがあります。「余力」はマージン(margin)の訳です。ではソルベンシー(solvency)は「支払」?辞書をひくと「支払能力」と書いてあります。「保険金を無事に支払うことができる能力」と言葉を補うとわかりやすいかも。

2011-04-17 22:13:45
いわき @s_iwk

つまりソルベンシー・マージン比率とは、(大きな損失が発生するようなことが起こった時でも)保険金を支払うことができる余力、ということです。

2011-04-17 22:15:07
いわき @s_iwk

保険会社にとって、大きな損失が発生しそうなことは何か。まずは今回の大震災のような、保険金の支払いが急増するような大災害や大事故があります。

2011-04-17 22:16:53
いわき @s_iwk

保険会社に大きな損失が発生するのは、大災害だけではありません。保険会社は契約者からもらった保険料を使って、巨額の運用をしています(そもそも保険料はこの運用による収益が発生することを見込んで設定されています)。資産運用でも損が発生することがあります。これは銀行と同じ。

2011-04-17 22:18:50
いわき @s_iwk

つまり大きく分けて、保険会社に大きな損失が発生する可能性があるもの(リスク)は、「保険リスク」と「資産運用リスク」があります。

2011-04-17 22:20:10
いわき @s_iwk

実際のソルベンシー・マージンの法令を見ると、「保険リスク」「予定利率リスク」「資産運用リスク」「経営管理リスク」「一般保険リスク」「巨大災害リスク」「最低保証リスク」「第三分野保険の保険リスク」と、細かく分かれています。

2011-04-17 22:22:49
いわき @s_iwk

このうち「保険リスク」「一般保険リスク」「巨大災害リスク」「第三分野保険の保険リスク」は、保険金の支払いの思わぬ増加が生じるリスク、と考えてください。細かく分かれているのは、大ざっぱには生保と損保の違いなどによるものと考えてください。

2011-04-17 22:24:37
いわき @s_iwk

「資産運用リスク」は先ほど説明した、資産運用に関するリスクです。残るは「予定利率リスク」「最低保証リスク」「経営管理リスク」ですね。

2011-04-17 22:25:47
いわき @s_iwk

「予定利率リスク」は、いわゆる逆ざやが生じるリスクです。先ほどちょっと書きましたが、保険会社が保険料を決めるときは、もらった保険料を運用することが前提になっています。運用による収益が見込める分、保険料を安く設定することができます。

2011-04-17 22:29:49
いわき @s_iwk

しかし資産運用は水ものです。見込んだ運用収益が稼げるとは限りません。保険料設定のときに見込んだ運用利回り(これを予定利率といいます)を稼げないリスクが、予定利率リスクです。

2011-04-17 22:31:36
いわき @s_iwk

では、予定利率リスクと資産運用リスクは何が違うのか?重複してるんじゃないの?という疑問が生じるのではないかと思います。

2011-04-17 22:32:43
いわき @s_iwk

予定利率リスクは「実際の運用利回りが(プラスだけども)予定利率を下回るリスク」、資産運用リスクは「運用利回りがマイナスになるリスク」というのがいまの整理です。運用利回りが0以上予定利率以下のときは予定利率リスク、0未満は資産運用リスク、ということですね。

2011-04-17 22:34:49
いわき @s_iwk

次に最低保証リスクです。最低保証リスクを理解するためには、変額保険や変額年金についての知識が少々必要です。

2011-04-17 22:36:24
いわき @s_iwk

変額保険や変額年金は、運用の成果によって保険金や年金の額が増減する商品です。当然、運用で損が出た場合には、保険金や年金は基本的に減ります。ところが、それを元本保証している商品が存在します。

2011-04-17 22:38:09
いわき @s_iwk

元本保証といっても形はさまざまで(特に変額年金の場合)、「死亡時の支払金額は元本保証するけど、生きているときは元本保証しないもの」「年金の額は保障するけど、年金が始まる前は元本保証しないもの」など、いろいろあります。いつ何時でも元本保証します、という商品はあまり見ません。

2011-04-17 22:40:54
いわき @s_iwk

ともかく、元本保証をするということは、「運用で損が出ているとき、その損は保険会社が負担します」と言っていることになるので、保険会社にとってのリスクになります。それが最低保証リスクです。

2011-04-17 22:41:52
いわき @s_iwk

最後に「経営管理リスク」です。これは経営全般にかかるリスクを指します。BISのオペレーショナル・リスクとほぼ同等と考えていいと思いますが、オペレーショナル・リスクのように確たる定義はありません。

2011-04-17 22:43:59
いわき @s_iwk

さて。自己資本比率とソルベンシー・マージン比率、どちらも「比率」ですから、「何か」を「何か」で割っているわけです。しかも、どちらも会社の健全性を表す指標です。ということは、何か似たところがありそうですね。

2011-04-17 22:51:45
いわき @s_iwk

BIS規制でいう自己資本比率は、自己資本を総資産で割ったもの、では「ありません」。自己資本比率規制については@sura_taro さんや@fstora さんのtweetを見ていただきたいのですが、ここでは自己資本を「リスクアセット」で割ったものだ、ということだけご理解下さい。

2011-04-17 22:55:36
いわき @s_iwk

自己資本比率計算に用いる「リスクアセット」の「アセット(asset)」は資産という意味ですが、「リスク」というのが頭についています。つまりバランスシート上の資産の額ではなく、それにリスクによる「重み」をつけたのがリスクアセットです。

2011-04-17 22:57:54
いわき @s_iwk

ソルベンシー・マージン比率も「自己資本」を「リスク相当額」で割っています。自己資本比率との対比で言えば、リスク相当額とは「運用資産のリスクによる重み付け」+「引き受けている保険のリスクによる重み付け」ということになります。(実際には単純な足し算ではないですが。)

2011-04-17 23:00:00
いわき @s_iwk

おっと大事なことを忘れていました。ソルベンシー・マージン比率は、200%が基準になっています。「自己資本」の額と「リスク相当額」が等しいとき、200%になります。

2011-04-17 23:02:08
いわき @s_iwk

なぜ100%じゃなくて200%なのかというと、端的にいうと「お手本にしたアメリカの基準が200%ベースだったから」ということになります。

2011-04-17 23:03:19
いわき @s_iwk

アメリカではリスク相当額のことをRBC (Risk Based Capital)といいます。会社が引き受けているリスクをベースに計算したら、これだけの資本が必要だよ、ということです。

2011-04-17 23:05:11
いわき @s_iwk

で、自己資本がRBC(これはリスクの「額」であって比率ではないことに注意してください)の金額を下回ると、行政当局が保険会社に改善命令を出します。改善命令ですので、保険会社に自力回復を求めている、といっていいでしょう。

2011-04-17 23:09:59