那覇手型考察再開 「三戦は天・地・人の三才の意味」というのはグレートジャーニーの影響か、多くの人に認知されるようになった。 中国人には伝統的に三才という考え方があるようなので、これは正しいのであるが、三戦における三才の思想自体は後付けだと思う。 私なりに調べた事を補足する。
2018-07-30 12:14:20台湾の台中で、南少林蔡家拳を教授している呂松吉という先生がおられる。 友人が面識があり、又聞きになるが、呂先生によれば元の名は「三歩勁」で、三戦とは鍛えるという意味を表すという。 これに近い語感には、南派蟷螂拳の「三歩箭」がある。
2018-07-30 12:14:21また、台北で古い系統の白鶴拳を指導しておられた董木尭先生は「三戦とは三歩進んで三歩退くことです。」と日本の取材班の質問に答えている。記事を要約すると、三戦とは足の功力を高める訓練で、三戦という套路は(自分のところには)ないが、三戦は套駱の中に含まれるという事である。
2018-07-30 12:14:21いろいろな話を統合すると、三戦は型というよりは、短い距離を往復する中で功力を練るといったニュアンスになると思う。 一応形式としては三歩だが(三進と書く派もある)、三は不定の複数を表す意味もあるらしく、練功においてはそこまで拘らずともよさそうである。
2018-07-30 12:14:22東恩納寛量先生に教えを受けた義村朝義先生の自伝には、サンチンではなくサンシンと書かれており、これが誤字の類でなければ、東恩納先生の学んだ門派や意識にも関わる問題なので、重要な意味をもってくると思う。
2018-07-30 12:14:22三戦補足① 見比べると、これらの拳術が同系統から枝分かれしたものというのがよくわかると思う。 youtu.be/VLLxz_Bcg9k 永春白鶴拳三戦 youtu.be/VZzE8t2atgY 鳴鶴拳八歩連 youtu.be/dBzFpGSh0sY 福州虎拳三戦 youtu.be/NStMkhjuQrI 周家蟷螂拳三歩箭
2018-07-30 22:37:48三戦補足② 福清縦鶴拳(宗鶴拳)三戦 youtu.be/o4DWSrUs5kw ここまでくると見かけ上、別物と感じると思う。 一応鶴拳系の流れだけ発生・伝播順にに並べると 永春白鶴拳(福建省永春地方)→福州鶴拳(福建省福州地方、飛・宿・鳴・食など)→縦鶴拳(福建省福清地方)になる。 この他支流が存在。
2018-07-31 11:45:03永春白鶴拳はその名前から、詠春拳と鶴拳が融合したものと勘違いされる事もあるが、そういう事ではなく永春地方で発生したから永春白鶴拳。 福建系鶴拳の源流である。ここから様々な地域に伝播し、異なった風格の新たな鶴拳が生まれたとされている。 歩幅は狭く、手の動きは小さい。
2018-07-31 11:45:04縦鶴拳は福州鶴拳(おそらく飛鶴拳)から生まれた福清地方の鶴拳。 全体をかなり伸びやかに使う。短橋狭馬の鶴拳のイメージで見ると不思議に感じると思う。足幅の前後は短いが、横幅は広くとる派もある。 意拳の創始者・王薌齋が若き日に交流したのはこの縦鶴拳である。
2018-07-31 11:45:05縦鶴拳は複数の派が台湾にも伝わっており、全部を合わせると台湾の鶴拳ではおそらく最大勢力。 情報が少なかった時代、台湾を訪れた空手家が「白鶴拳の三戦を見たい」と言った場合、かなりの確率でこの縦鶴拳がでてきたと思う。 空手の三戦とのあまりの違いに、当時の空手家は相当困惑したと想像する。
2018-07-31 11:45:05三戦補足③ 余談 日本空手松濤連盟の故・浅井哲彦先生が台湾で学んだのは縦鶴拳。 (奥様のお兄様が縦鶴拳の先生。昔SRSリングの魂という番組にも出た事がある。白鶴拳は幻の拳法みたいにテロップで紹介されていたが、幻どころかたくさん修行者がいる。)
2018-07-31 14:54:22五祖拳に白鶴拳が入っている事は有名だが、地理的・技術的にみて福州鶴拳ではなく永春白鶴拳だと思う。 他に台湾に鶴拳が伝わった事により、独自に生まれた様々な鶴拳も存在して非常にややこしい。 さらに、套路の名前が飛鶴拳だったり鳴鶴拳だったりする門派もあるので、よほど調べないとわからない。
2018-07-31 14:54:24とにかく、鶴拳系は何でもかんでも白鶴拳と一括りにされたりする上に、資料が少ない事が混乱に拍車をかけている。 だから、福建系には通底するものが確かにあるとはいえ「白鶴拳とはこんな動きで、こんな戦法で〜」とは、大雑把すぎて迂闊には言えない。
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