ベリアル・アンダーカバー #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ホローポイントはブルハウンドの頭を蹴り上げた。「グワーッ!」ブルハウンドは配管パイプに頭をぶつけ、壁を背にずり落ちる!ホローポイントはその顔面を革靴で踏みつける!「グワーッ!」「テメェ……まず言っておく」「言ってくれ」「オニイサン呼ばわりされる筋合いはねえ……!」1

2018-07-31 22:25:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメか?とにかく俺はアンタの奴隷に成り下がる覚悟だ。アンタがソウカイヤに取り次いでくれなけりゃ、過冬の奴らに殺されちまう……今みてえに……!」「奴隷だと?そうか」「違う!覚悟の話だよ……ヘヘッ……」ブルハウンドは予防線を引いた。「それくらいの気持ちだって話だよ」 2

2018-07-31 22:26:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前、過冬の何だ?ア?」ホローポイントは彼の首を掴んで引きずり上げた。ブルハウンドは目を見た。「荒事担当……下っ端だがよ。ボス……元ボスは、ゾーイって娘に熱をあげてやがって。アレよ、童話の金の雌鶏みてえなもんだ。だから俺らみてえないっぱしのニンジャが何人も駆り出されたぜ」 3

2018-07-31 22:31:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

10s 「……」「知らねえと見える」ブルハウンドは呟いた。微かに……だが、聞かせるように呟いた。ホローポイントの目が酷薄さを増した。「俺は過冬の事情は何でも話すぜ……助けてくれるならよ」「殺しちゃえばいいじゃない」ディアボリカがホローポイントの耳元で囁いた。「黙ってろ」「……?」 4

2018-07-31 22:35:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「IRCでもやってるのか?」ブルハウンドは尋ねた。ホローポイントはブルハウンドの頬を力を込めて張った。「グワーッ!」「ア?何質問してんだコラ。オイテメェ。駆け引きするつもりか、ア?」「そりゃお前……俺は必死だ。俺の必死さを侮るんじゃねえよ。アンタ、どこまで知りたいんだ?」 5

2018-07-31 22:37:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「……」二者は無言で睨み合った。「チッ」やがてホローポイントは舌打ちし、ブルハウンドを解放した。ブルハウンドは息を吐いた。「き……決まりだな?」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ブルハウンドの左手小指、薬指と、立て続けにへし折る!「アバーッ!」 6

2018-07-31 22:42:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブルハウンドは地面をのたうつ!「意味は!」「ねェよ」ホローポイントは唾を吐き、IRC端末を差し出した。「通信が通らねえぞコラ」「ア……それはアンタらのせいだぜ、ソウカイヤ=サン」ブルハウンドは震えながら説明した。「アンタらがシトカで今暴れてンだろ?だから非過冬の通信を遮断してんだ」7

2018-07-31 22:45:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ。それだ。やってンのか。奴ら」「ン?」ブルハウンドは眉を動かした。「アンタのお仲間の動向、ご存知でない……?」「イヤーッ!」「グワーッ!」「ちっと色々あってよ。問題が片付いて戻ったら、他のソウカイヤの連中の居場所がわからねえ。ムカつくぜ」「ハハァ。こりゃ力になれそうだ」8

2018-07-31 22:48:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「で、過冬から破門されてんのか?テメェは?」「いや、まだだ……正確にはこの後……」「チッ」ホローポイントはブルハウンドの通信端末をひったくり、傍受を試みた。数分の観測。中央区という言葉を、よく拾う。「……まあいい。ついて来い。中央区だ。案内しろ」 9

2018-07-31 22:56:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかっ……ア……嘘だろ……」ブルハウンドは立ち上がろうとして、表通りの蠢きに目を見張る。ホローポイントが視線を追った。彼は顔をしかめた。「何だ?」ナムサン……それは影じみた、カビじみた、黒いわだかまりをこびりつかせた、クローンヤクザの死体が起き上がる瞬間であった! 10

2018-07-31 22:58:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホローポイントは銃の一方を影めいたヤクザに、もう一方をブルハウンドに向けた。そして言った。「テメェのジツかコラ」「違う!俺はサイバネ犬を胸部に格納する能力の持ち主だ……!カ、カシマールのジツだ……!」「カシマールだァ……?」「ワイズマンの妖術師だ……お、終わりだ……!」 11

2018-07-31 23:01:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナァグ……ナァグ……ナァグ……」影のカビに覆われたクローンヤクザはフラつきながら向かってくる。BLAMN!ホローポイントの銃撃が頭部を撃ち抜く。「ナァグ……ナァグ……」倒れ伏した身体が痙攣する。「ダメなんだ」ブルハウンドは首を振った。「ここは離れよう。案内するから」 12

2018-07-31 23:04:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は蠢く死体を一瞥し、歩き出した。「ワイズマンは過冬の幹部だろうが。そこのカシマールがどうした?」「ジツ使いだ。直接ツラを拝んだ奴はまずいねえ。奴がこうやってマジで動いたのを見たのは……俺は……過去に一度しかない。その時はマジでシトカがヤバイ事になったぜ」 13

2018-07-31 23:07:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナァグ……ナァグ……」交差路に出る。一方向から、再びその者たちが向かってくる。「ソウカイヤがシトカで暴れ出して……ワイズマンが出てきてよ……それでカシマールまで。クソッ」ブルハウンドは独り言めいて呟き、頭をかかえる。「これじゃ俺の起死回生の計画がよォ……」「アア?」 14

2018-07-31 23:10:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アンタらがどれだけここに入ってきてるのか当然俺は知らねえが、カシマールのジツは捌ききれねえよ」ブルハウンドは震えた。ホローポイントは影めいた死体に銃を構え、淡々と処理する。「アンタらソウカイヤを全滅させる、そういう事だよ。多分ジワジワと追い詰められて一網打尽だ……」 15

2018-07-31 23:13:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホローポイントはブルハウンドの不吉な言葉に動揺しなかった。「まァ祈るこったなあ。俺らが生き残る事をよォ。テメェが言った通り、一蓮托生だ。せいぜい役に立てや」彼は向かってくる者どもを排除し終えると、ブルハウンドの首を掴み、路上に投げつけた。「先導しろ。中央区」命令に変更なし。 16

2018-07-31 23:16:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア、アア、そりゃ勿論だが……」ナァグ……ナァグ……じわじわと近づく群衆の声に怯えながら、ブルハウンドは動き出した。「わかったよ……とにかく俺は鼻が利くんだ。土地勘もある。その点で、アンタはアンタの選択に満足するだろう。他のソウカイヤと合流したいんだよな?ア、質問はしねえさ」17

2018-07-31 23:19:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!BLAM!BLAM!「アイエエエ!」戯れじみて、ホローポイントはブルハウンドの足元を銃撃した。ホローポイントは口の端を歪め、虚無的に笑いながら、ブルハウンドの後をついてゆく……。

2018-07-31 23:21:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺は鉄格子塀を飛び越え、中庭に着地する。「海のほとり孤児院」。なかなかのものだ。ご立派な礼拝堂まで備えている。出資者に恵まれたのだろう。要は過冬ということだろうが。耳を澄ますと、巡回する警備員とおぼしき足音が聞こえてくる。 20

2018-07-31 23:31:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

都合良し。俺は建物に忍び入り、廊下の角で息を殺した。歩いて来たのは哀れな老人だった。「……アイエッ!?」俺は後ろから口を押え、耳元で命じた。「深呼吸しろ。深呼吸を」「フーッ……フーッ……」「そうだ」「フーッ……フーッ……」「無駄に殺しはしない。だから協力してくれ。頷け」頷き。 21

2018-07-31 23:38:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺は解放してやる。だが肩を掴んだままだ。老人は涙を滲ませて首を振る。「殺さないと言っているだろう。お前の態度次第だ。イラつかせるなよ。アー……ネルソン=サン」俺は名札から老人の名を読み取った。「の……望みは何ですか。ここに現金はありません……」「ああ。知りたい事があってな」 22

2018-07-31 23:41:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何でしょう……」「記録をあたりたい。必要ならば書類をな」「おっしゃってください」ネルソンは言った。「今夜はおかしな夜だ……記録……過去がやってくるってわけですな……ウックク……」老人は嗚咽する。まただ。俺は舌打ちしたくなる。俺の行く先で既に何かある。歓迎できる兆候ではない。 23

2018-07-31 23:47:55