「にしん」の旁は「柬」?「東」?
- annona_ceae
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ニシンが魚偏に東ではなく、魚偏に柬と書かれた(あるいは印刷された)最初の例を知りたい blog.livedoor.jp/itomata-kokugo…
2018-07-28 01:39:23@annona_ceae 『広辞苑』の第6版には「鰊(にしん)」があり「鯟」は非ずでしたがひょっとしたら近現代の国語辞典が「鰊」を正字として扱った可能性もあるかもしれません。 「鯟」が正字なのではないか、というのは私も知りませんでした。
2018-07-28 10:08:24@annona_ceae 江戸後期成書『倭字攷』「鯟(ニシン)、狩谷氏云。コノ魚西海南海北海ニハナシ、東海ニノミアル魚故ニ、从東从魚會意也。蝦夷ハ、東ヲ帯テアレハ、コノ魚アル也。ニシントモ、カドトモ云」『國字考』「鯑の字いまだ考えず(ママ)」『同文通考』「鯟鯑ハ(中略)東海ノ鮞也」→「鯑」は何故魚に希だろう?
2018-07-28 10:22:19@zwmn0 ありがとうございます! 異体字研究資料集成はちょうど確認したかったです。 その真偽はともかく、東海で取れるから東という字説が共有されてたようですし、魚+東という認識だったってことですよね たしかに鯑も謎ですよね……
2018-07-28 12:15:17明治35年の水産名彙では[魚東]のニシンです 鰊はないようです 水産名彙 全(大日本水産會報第227-237号附録):図書資料デジタルアーカイブ nrifs.fra.affrc.go.jp/book/D_archive… pic.twitter.com/hI9PHE63yM
2018-07-28 11:09:29漢和大辞林(明治39年)で【鰊】 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/OYJS5PtMZP
2018-07-28 11:41:14明治43年の漢和大辞林では鰊と[魚東]が素知らぬ顔で同じページに載ってる dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/T2XLLtZGMk
2018-07-28 13:05:51@annona_ceae @zwmn0 『明朝体活字字形一覧』を見ると、分合活字(偏と旁を組み合わせて任意の漢字活字と化す)であった「米長老会」活字見本(1844)には「鰊/鯟」双方が掲げられているのですが、分合活字ではない「美華書館」活字見本(1873)に見えないためか、例えば現存する最古の活字総数見本である…
2018-07-28 18:24:37@annona_ceae @zwmn0 …境田稔信 @pX03dDIs4dQ1G3x 氏所蔵明治11年版平野活版製造所(四号)「活字総数目録」や、長崎県立長崎図書館所蔵「活版製造所」『貮號活字總數目録』(明治15年)には「鰊/鯟」どちらも載っていません。
2018-07-28 18:28:13@annona_ceae @zwmn0 @pX03dDIs4dQ1G3x 北海道庁が明治19年に発行した『札幌県勧業臨時報. 第2号』dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… では、なぜ「ニシン」に「鯟」の字を宛てるかという考察が五号活字で刷られており…
2018-07-28 18:30:39@annona_ceae @zwmn0 @pX03dDIs4dQ1G3x …また明治25年の『北海道水産予察調査報告』dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… では四号活字で「鰊」と刷られておりますから、明治10年代半ば過ぎに「日本語活字」の漢字レパートリーに加わったものと思われます。
2018-07-28 18:32:25@annona_ceae @zwmn0 @pX03dDIs4dQ1G3x 原寸直刻で活字の雛形を作っていたこの時代、活字の大きさが違えば「デザイン差」を超える「字体差」が生じる場合があり、例えば明治40年の奥村繁次郎『経済美味 於台処料理』dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… では小見出しに使われる四号活字が「鯟」、本文の五号活字が「鰊」となっております。
2018-07-28 18:35:53@uakira2 @zwmn0 近代日本の活字事情については寡聞にして存じ上げなかったので、たくさん例を挙げて教えていただき大変ありがたく存じます。活字の違いで鰊、鯟が交替することもあったんですね。鰊、鯟などは必要に応じて新たに作られたということでしょうか?
2018-07-28 20:41:55@annona_ceae @zwmn0 上海美華書館には欧米人が開発してきた様々な漢字活字が集積されていました。その中のひとつが「分合活字」である“ベルリンフォント”で、1862年見本帳では、先に触れた「米長老会(1844)」同様、鰊/鯟双方が活字化されていました。nla.gov.au/nla.obj-464352… これは「二号活字」相当の大きさです。
2018-07-28 21:12:42@annona_ceae @zwmn0 実用的かどうかは定かではないけれども大規模漢字集合に対応しようという具合に作られた(中国向け)活字セットには、江戸末期のうちに既に鰊/鯟の双方が用意されていたわけです。これに対して東京築地活版製造所の明治15年「二号総数見本」では、鰊/鯟どちらも活字セットに含まれていません。 pic.twitter.com/heyhHOGNp3
2018-07-28 21:15:36@annona_ceae @zwmn0 これが、例えば @mashabow さんがお持ちの、東京築地活版製造所明治26年『二号明朝活字書体見本 全』になると鰊/鯟双方が含まれるようになっています。flickr.com/photos/9599641…
2018-07-28 21:18:33@annona_ceae @zwmn0 @mashabow 実用例の出現状況などを考え合わせると、これは日本で「ニシン」表記のために必要と判断されて追加された漢字と言ってよいのではないかと思うのです。
2018-07-28 21:19:46@annona_ceae @zwmn0 @mashabow せっかくなので、横浜開港資料館へ移管されつつある「小宮山博史コレクション」を大いに活用して作られた『明朝体活字字形一覧』から下巻の当該箇所近辺を: pic.twitter.com/X13BJSEDmm
2018-07-28 21:21:17鯟(dōng)yedict.com/zscontent.asp?… 鰊(liàn)yedict.com/zscontent.asp?… 康煕字典に「鯟、魚名似鯉」「鰊、魚名似鱦」「鱦、小魚。今江東亦呼魚子未成者為鱦」 ここにいう今は康煕字典成立の18世紀初頭か。
2018-07-28 21:17:08大言海では「にしん(鯡)、身ヲ二ツニ割ク義」「にしん(鯟)、かど(鯟)ノ異称」「かど(鯟)、蝦夷語ナラムカ、鯟ハ、東海魚ノ合字ナルベシ。割キテ乾シタルヲ鯡ト云ヒ、其𩹠(こ)ヲ、かずのこトス」と。大言海の「にしん」は魚偏に東の「鯟」を使っている。この辺が通俗語源と言われる所以か。
2018-07-28 21:39:12