編集部イチオシ

オルガンミサのお話

鈴木雅明先生解説。まとめてみました。
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

オルガンミサのペダル付き大コラールだけは何度も弾いていますが、全27曲を一気に弾いたのは、今を去る33年前1985年秋の松蔭以来です。ちなみに、この年の春は、私が30才、息子が3才、そしてバッハが300才。期せずしてすべて3づくしの年でした! twitter.com/tamaki0218/sta…

2018-07-27 10:23:13
TS @tamaki0218

韓国で14年振りにチェンバロリサイタルの雅明さん! 14年前のサイン会の写真を持って来られたお客様がいらしたそうです。 来たる8月2日のバッハ 【オルガンミサ曲全曲コンサート】 も333の今年だからこその特別企画❗️ 前回は何年前になるのでしょう⁉️ 皆さま是非お聴き逃しないように。 pic.twitter.com/B2nz0ZMbs4

2018-07-27 09:09:56
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

来週木曜には、いよいよオルガンミサ全27曲を大披露。バッハはこれを全部一気に弾いたことなど決してないと思う。ところで、第1曲プレリュード冒頭、第5音にモルデントをつけて急降下するテーマは、例のトッカータとフーガニ短調と、同じ発想だな。 twitter.com/bach_collegium…

2018-07-26 00:26:34
Bach Collegium Japan @bach_collegium

German Organ Mass - Masaaki Suzuki plays Silbermann Organ in Freiberg: youtu.be/8eRfpZ6Zfqg?a@YouTube がアップロード

2018-07-18 16:41:50
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

@ZnWtSSdZIbZUHws つまり、曲集のどまんなかに、本来序曲であるはずの「フランス風序曲」の形式を持ってくるのが、クラヴィーア練習曲集すべて共通する特徴だからです。バッハには、この形式によほどの思い入れがあったに違いありません。

2018-07-26 08:10:12
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

@ZnWtSSdZIbZUHws いやこの程度の類似で偽作説を云々するのは躊躇します。でも平均律第2巻嬰ヘ長調前奏曲も、またちょっと形を変えてオルガンミサ「我ら唯一の神を信ず」の小フーゲッタも同様の始まりで、かつこの両者ともに、曲集のちょうど中央にあってフランス風序曲のスタイルを持っていることに惹かれますね。

2018-07-26 08:07:21
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話②】もう少し名称について。確かに「オルガンミサ」という言い方は、本当は正しくありません。なぜならこれはミサ用ではないから。しかし曲集冒頭に、礼拝の最初と同じキリエとグロリア「いと高き所にては・・」の編曲が置かれているのでこう呼ばれるようになったのでしょう。 twitter.com/bach_collegium…

2018-07-27 10:52:47
Bach Collegium Japan @bach_collegium

ドイツ・オルガンミサとも呼ばれるJSバッハ《クラフィーア練習曲集第3巻》、初版譜には「教理問答歌その他の賛美歌に基づく、オルガンのための種々の前奏曲からなる。愛好家、および、とくにこの種の作品に精通する人々の心の慰めとなるように。」と書かれているそうです。(東京書籍「バッハ事典」) pic.twitter.com/LsBw6OixM3

2018-07-27 08:05:04
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話③】キリエというのは、カトリックでは本来3部分を3回ずつ計9回歌われたのですが、ルターはこれを各1回に縮小。それを受けてバッハもここでは大小3つずつを編曲。これらは教会旋法に基づいているので、一見何調だかよくわからないのに、驚くほどの劇的な和声に満ちています。 pic.twitter.com/hE5K16x50q

2018-07-27 11:11:12
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話④】書き出したらキリがない・・。グロリアはルカの福音書2:14天使の合唱「いと高き所にてはただ神にのみ栄光あれ」に基づく。このコラールの冒頭がドレミ(またはファソラ)と3度上行するので、バッハはこのコラールをヘ長調・ト長調・イ長調の3つ調で編曲。そしてすべてが3声。 pic.twitter.com/wuUXG4gSmr

2018-07-27 11:35:44
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑤】グロリアに後に6つの賛美歌編曲が続く。キリエとグロリアが3曲ずつだったのに対し、こちらは各々2曲、ペダル付き大曲と手鍵盤用小品の組み合わせ。これは恐らくルターの大小教理問答に倣ったもの。小品は簡単と思いきや、難しいのなんの。指がもつれる異様に複雑な対位法。

2018-07-29 13:15:03
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑥】まずは「これぞ聖なる十戒」から。この賛美歌をバッハが扱う時は必ずコラールが10回現れる。これダジャレではありません。ここでも大の方はテノールがカノンで2声ずつ登場するので合計10回、異色の小フーガのテーマもきっちり10回。ちなみにカノンとは「律法」の意味も。 pic.twitter.com/ojOkZWfZHg

2018-07-29 13:23:10
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑦】この「聖なる十戒」の編曲を弾く度に詩編1編を思い出す。「主の掟を喜ぶ人は流れの辺に植えられた木のように実を結び・・」「掟」と「喜ぶ」という相反するイメージが、このコラールの中で、「律法の一点一画も崩れることはない」と言われたイエスの「愛の律法」に昇華する。 pic.twitter.com/j0CeEqm6Vv

2018-07-29 22:54:53
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑧】続いては信仰告白の歌「我ら皆ただひとりの神を信ず」。これは1524年賛美歌便覧(Enchiridion)にある最古の賛美歌の一つ。大編曲のペダルは3度の歩幅で常に上昇してはジグザグで下降して、確信に満ちた信仰の歩みを表すというべきか。正しく重厚な32フィートが相応しい。 pic.twitter.com/PlIdS8nrbL

2018-07-29 23:06:49
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑨】次は「これぞ聖なる十戒」小編曲。テーマは賛美歌に基づくが、付点リズムの連続で小品ながらフランス風序曲の体。オペラの冒頭に来るべき序曲が曲集の真ん中に来るのは「クラフィーア練習曲集」すべてに共通。平均律第2巻、フーガの技法初期稿にも。当然ここからが後半となる pic.twitter.com/Et6tbmGabf

2018-07-30 02:18:20
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑩】次は同じホ短調で主の祈りの賛美歌「天に在す我らの父よ」究極の難解作品。2段の手鍵盤各々に2声、ペダルとあわせて5声構造。手鍵盤の各々一声が引き延ばされた賛美歌のカノン、もう一つが逆付点リズムと三連符の装飾。何が起こっているか、聴いてわかった人は天才です。 pic.twitter.com/i6SDLs8qR5

2018-07-30 18:47:07
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑪】ちなみにこの冒頭部分のテーマには密かにコラール旋律が隠れている(赤丸)。また逆付点(跛行リズム)は流れを止めるので対位法では禁止されるが、それを敢えて重ねて切々とした祈りのため息が、三連符と対比される。バッハの全作品中、最も不気味な曲。 pic.twitter.com/FhZnkntVWi

2018-07-30 19:25:34
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑫】「天に在す我らの父よ」小編曲は打って変わって流麗かつ優美。まるで天使が上り下りするかのような16分音符の流れに乗って、賛美歌がただ1度歌われる。難渋を極めた前作の響きで硬直した心が、氷が溶けるように流れ出す。ああ、この軽やかさ、心地よさ。これもバッハだ。 pic.twitter.com/rUJ61upXpl

2018-07-30 20:55:19
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑬】続いて「我らの主キリスト、ヨルダン川に来たりぬ」川の流れを表す低音16分音符と十字架型の右手音型の下に、ペダルがテノールでコラール担当。これはカンタータ7番と全く同じ発想。イエスの洗礼時に降った聖霊の鳩が全部十字架型、というのはなんだかアニメ的だが見事な編曲 pic.twitter.com/EXHFESsevv

2018-07-31 09:25:51
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑭】同賛美歌小編曲は3声フーゲッタ。賛美歌テーマが、きっちり3度ずつ上行と下降(反行)を繰り返す。洗礼という行為が、自らを捧げるというアナバシス(神への視線)と、神から聖霊を受けるというカタバシス(神からの視線)の交差する所であることがこの小品からもわかる。 pic.twitter.com/qFqjYG2fI4

2018-07-31 09:36:39
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑮】次は悔い改めの歌「我深き淵より叫ばん」カンタータ38番冒頭の如く古様式の超重量級対位法。足が2声手が4声受け持ち、右足が定旋律。何とかこれを聴かせたいのだが、ペダルを強くすると左足も強くなるので悩ましい。シシリーのオルガンのようにペダルに2段鍵盤が欲しいものだ pic.twitter.com/46LWDUnwou

2018-07-31 14:32:52
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑯】同賛美歌小編曲は、Sopに拡大定旋律を置く4声オルガンモテット。下3声は動機の順行と反行が常に交互に現れる。この歌も賛美歌便覧(1524)に収録され、オルガンミサの中では唯一フリギヤ旋法に拠る。ミからミに至るこの旋法は解決感がないので、永遠に天地の間を漂うかのよう pic.twitter.com/PZ6N7Etj4C

2018-07-31 15:09:42
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑰】愈々最終賛美歌「神の怒りを逸らす我らの主イエスキリスト」怒りを宥めるということの象徴なのか、跳びはね続ける手の8分音符が常に10度⇒8度⇒6度と縮小する楔型を描く。この動機は1と4、2と3の音を結ぶと重なり合う十字架が現れる。定旋律はペダルに。なかなかの難曲。 pic.twitter.com/Nrp5f6szDG

2018-07-31 20:58:12
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑱】同賛美歌の小編曲は不思議なフーガ。唯一のヘ短調だが旋法的に♭は4つでなく3つ。フーガは通常転調を重ねるものだが、この曲では一度も正しい転調がない。また4分音符テーマがしばしば弱拍から出るので強⇒弱ではなく弱⇒強というレガートにならざるを得ず、頭が混乱する。 pic.twitter.com/ygbbTxfG0i

2018-07-31 21:14:26
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑲】ここからがこのオルガンミサ最大の謎。続く2声部のみの4つのデュエットは一体何のために作曲されたのか。そもそもオルガン曲なのか?賛美歌でもなく礼拝にも無関係なので、バッハ作品番号をつけたシュミーダーはこれをオルガン曲に含めずチェンバロ作品としての番号をつけた。 pic.twitter.com/P1TCkSlj9W

2018-07-31 21:45:07
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話⑳】もちろん答はわからない。しかし2声部のオルガン作品は17世紀以来の北ドイツコラール変奏の伝統。またフーガの技法に4つの2声カノンがあるように4曲を1組にすることも珍しくない。4とは、神を表す3に対し、東西南北・春夏秋冬など人間の世を表す数として用いられる。 pic.twitter.com/Cu3oW5caBL

2018-08-01 00:47:16
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話㉑】北ドイツオルガン曲のデュエットは必ずや1段鍵盤で演奏される(フランスのデュオは必ず2段)必然的に声部交差は避けなければならない。この4曲では一度も声部交差せず、またオルガンの音域を一度も逸脱しないので、これがオルガン用ではない、ということは考えられない。 pic.twitter.com/O7pmkr7zj3

2018-08-01 00:54:16
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

【オルガンミサのお話㉒】4つのデュエットが作曲の最後の段階で付け加えられたことがわかっているので、2つの理由が想像できる。直前の聖餐を歌う賛美歌「神の怒りを逸らす主・」で教理の内容は尽くしているのでそれ以上賛美歌は不要だが、全体を意味深い27曲にするにはあと4曲が必要だった。そして pic.twitter.com/rSOMruUFwC

2018-08-01 01:29:35
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