烏賀陽弘道氏の冷戦時の保守、右翼と2018年の自称保守、右翼について解説。

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烏賀陽 弘道 @hirougaya

1)ソ連や東欧が「東側」として存在し西側と対立していた「冷戦」時代の「保守」という政治勢力は「反共」あるいは「非共産・社会主義」のことを指した。共産・社会主義的社会改革を信用しない人々だった。「右翼」はそのラジカルな一部だった。

2018-08-02 03:50:52
烏賀陽 弘道 @hirougaya

2)それに対して、2018年昨今の自称「保守」「右翼」の大半は、そうした対立軸を知らない。冷戦期の保守勢力のような共産・社会主義的改革に対抗するにはどうすればいいのかという真剣な思考も価値観もない。ただ歴史や思想・哲学のつまみ食いしてつぎはぎしただけである。

2018-08-02 03:52:24
烏賀陽 弘道 @hirougaya

3)だから昨今の自称「保守」「右翼」になんら価値観の一貫性がないのはむしろ当然である。彼らの態度決定は突き詰めると「好き」か「嫌い」かでしかない。ゆえに同じ人間の発言が相互に矛盾することも珍しくない。

2018-08-02 04:04:27
烏賀陽 弘道 @hirougaya

4)なぜ冷戦期の「保守」「右翼」が一定の知的節度を守っていたのかというと。 ひとつは、社会主義・共産主義陣営=いわゆる左翼と、その後ろ盾として国家総動員で正当化・理論化していたソ連や中国に対抗して切磋琢磨しなければならなかったこと。

2018-08-02 07:45:53
烏賀陽 弘道 @hirougaya

5)なぜ冷戦期の「保守」「右翼」が一定の知的節度を守っていたのかというと。 二つ目は、戦争を経験した世代はソ連や中国(共産党)の暴虐や人権蹂躙をよく知っており、それに対抗するという切迫感があった。

2018-08-02 07:46:55
烏賀陽 弘道 @hirougaya

6)なぜ冷戦期の「保守」「右翼」が一定の知的節度を守っていたのかというと。 3つ目は、ソ連や中国(共産党)の暴虐や人権蹂躙を知る世代の保守政治家・論者と、革新陣営の政治家・論者の間に「人間を人間として尊重する」という最低限の共通理解があった。

2018-08-02 07:48:40
烏賀陽 弘道 @hirougaya

7)ところが、2018年昨今の自称「保守」「右翼」はこうした戦時における両陣営の暴虐と人権蹂躙も知らず、社会主義・共産主義陣営と競って切磋琢磨するという緊張した環境にいない。ゆえに、似たような意見の人間とばかり集団化し、議論しているうちに、どんどん論が現実離れして先鋭化する。

2018-08-02 07:50:38
烏賀陽 弘道 @hirougaya

8)そして2018年昨今の自称「保守」「右翼」は、冷戦期の保守・右翼陣営が革新陣営と共通理解として持っていた「人間を人間として尊重する」という最低限の知識も理解もない。ゆえに、人種差別や排外主義、自国優位といったファナティシズムがあたかも普遍的な了解であるかのように誤解する。

2018-08-02 07:53:35
烏賀陽 弘道 @hirougaya

9)なぜそうした歴史や思想のつまみ食いでつぎはぎしただけの自称「右翼」「保守」が国会議員にまでなれるのかというと、冷戦終了後の自民党は「反共主義」という背骨のアイデンティを失っているので、慢性的な候補者不足に陥っているため。ゆえに議員は過半数を確保する「員数合わせ」でしかない。

2018-08-02 07:55:49
烏賀陽 弘道 @hirougaya

10)つまり現在の自民党そのものが冷戦時代の「反共政党」の残滓にしかすぎない。その解体の過程で、脱党した議員数を埋めるために社会党や公明党と連立してかろうじて命脈を保っている。自民党単独与党だったころに党内にいた優秀な人材は流出したので、その欠員を埋めるためには質を問わなかった。

2018-08-02 07:58:43
烏賀陽 弘道 @hirougaya

11)冷戦時代「反共」というアイデンティで結束してた自民党が、冷戦終了後にその支柱を失って解体していった様子は、旧ユーゴスラビアが社会主義・ソ連陣営・チトーという背骨を失って解体し、血を血で洗う虐殺合戦になったのとよく似ている。

2018-08-02 08:00:33
烏賀陽 弘道 @hirougaya

12)そういう意味では現在の自民党は、解体して内戦状態になってぐちゃぐちゃの旧ユーゴスラビアみたいなもので、知性派よりならず者や武闘派ばかりが力を持つのは自然なのである。

2018-08-02 08:01:45
烏賀陽 弘道 @hirougaya

13)冷戦時代の保守・右翼と2018年の自称「保守・右翼」は何が違うのか、けっこう重要なことを書きました。どなたかまとめておいてくださればうれしい。ではおしまい。

2018-08-02 08:03:16