被災地に展開する自衛官10.6万人態勢の持続性を心配する
震災から約40日が経過しそろそろ被災地に派遣されている自衛隊員も限界を迎えているのではないかと心配である。3/18に動員人数10.6万人態勢となったが一ヶ月経った4/18でもその態勢は基本的に解除されていない(4/18付けの防衛省発表:http://bit.ly/gIHdKw)。
2011-04-18 20:26:47『軍事研究』五月号p.33によると、この動員態勢は自衛隊の動員力のマックス値を超えたかもしれない強烈な数字であるという。通常、こうした派遣が可能な規模は全部隊規模の約1/3とされている。残りは交代準備と戦力回復に当てられるからだ。しかし今回は全自衛官の約半数の出動である。
2011-04-18 20:28:51自衛隊員約24万の1/3は8万程度だが、10.6万人はそれを2.6万人もオーバーしている。即応予備自衛官を加えても到底足りない。しかも今回は平時の防衛任務とセットになっての任務だということを忘れる訳にいかない。つまり戦力回復の余裕がない動員スタイルなのである。極めて厳しい。
2011-04-18 20:31:45それでも海自は動員人数が相対的に少ないからまだ良いが(4.2万人のうち1.45万人出動で約33%)、空自と陸自はほぼ50%が出動している(陸自は14万人のうち7万、空自は4.3万人のうち2.16万)。空自はそれでも輸送任務が主だろうが、現場に貼り付けの陸自の苦労は大きいはずだ。
2011-04-18 20:36:13というのは現場に貼り付けではローテーションもうまく組めないであろうからだ。遠くから出動してきてそのままずっと現場にいるという人も少なくないであろう。人一倍大変な作業をしても被災者の心情を考えれば大っぴらにリラックスして休養することも難しいだろう。苦しい日々が続いていると思われる。
2011-04-18 20:39:2910.6万人態勢への動員そのものを批判するつもりはない。むしろ災害から一週間でこの規模の動員を完了させたことは、兵力の逐次投入を避けたという意味では評価されてしかるべきと考える。だが問題はそれは即応という意味での評価であって、持続的活動に対する評価ではないという点である。
2011-04-18 20:40:51復興が長期化するにつれて動員のあり方を持続可能なものに変化させてゆくべきということを意味しているのである。正直言えば10.6万人の動員態勢がよく一ヶ月も持っているものだと思う。特に陸自は代替部隊の存在しない中で本当によくやっていると感じる。しかしそれは何時までも持続可能ではない。
2011-04-18 20:43:45早晩動員態勢を縮小させても持続可能な活動のあり方を模索していかねばならないのではと考える。ローテーションを組んで戦力回復を図らねば現場の部隊が潰れてしまう。そういうことも最高司令官の菅首相がなるべく早くやるべきだ。原発だけが日本の抱えている問題ではないことがここでも明らかである。
2011-04-18 20:47:25ちなみに言えば今次震災の動員で陸自定員削減の話は事実上白紙化されたものと考えるが今後はむしろ増員を考えていく必要があろう。特に即応予備自衛官などの即時対応可能な予備自衛官の数を大幅に増員していく必要があるものと考える。日本の予備兵力の異常な乏しさはしばしば批判されるところである。
2011-04-18 20:50:10こういう観点を含め、中国の軍拡などの国際環境の変化に対応するという意味でも、将来の防衛関係費は大幅増額がほぼ避けられない情勢なのではないかと考える(次の中期防がデッドライン)。原発問題で安全にはコストを掛けよというのであれば、防衛関係費の増額という意味でもそうするべきであろう。
2011-04-18 20:52:22