道元禅師による日本仏教界に蔓延っていた女性差別(女人結界)に対する批判(nāgita #antifa @naagita さんのつぶやきまとめ)

私は仏教はまったく素人ですが、仏教の一部の経典の中には「女性は成仏が難しい」といった記述があるとは、よく耳にします。法華経提婆達多品の竜女成仏の逸話などは、物語としては想像力を掻き立てられる一方で、仏教における女性差別性の根拠とされてきたことも事実でしょう。ただし、仏教の場合、絶対的な経典というものなく(この点は私観)、優れた思想家の思惟の結果として注釈書や論書が書かれ、常にその時代の最先端の思想が民衆の中に広がってきたのだと思っています。そんなわけで、Naagita氏がつぶやいてくださった、道元禅師の性差別批判をじっくり読むため、まとめてみました。
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佐藤哲朗(nāgita) @naagita

東京医大の女子受験生への入試差別など、理不尽な性差別があとを絶たない日本ですが、鎌倉時代の名僧で日本曹洞宗の宗祖でもある道元禅師はご自身の著作「礼拝得髄(らいはいとくずい 『正法眼蔵』二十八)」にて、当時の仏教界に蔓延っていた性差別を厳しく批判しています。

2018-08-04 17:44:38
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

どういうわけか、日本仏教のお坊さんで、現代の性差別に際してこの文献を挙げて批判する人は少ないので、ネット上で公開された原文を以下コピペしたいと思います。日本の伝統文化を愛する皆さん、このような先人の自国文化批判もまた、尊ぶべき伝統の一つとして自家薬籠中に入れてください。

2018-08-04 17:44:38
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

第二十八 禮拜得髓 修行阿耨多羅三藐三菩提の時節には、導師をうることもともかたし。その導師は、男女等の相にあらず、大丈夫なるべし、恁麼人なるべし。古今人にあらず、野狐精にして善知識ならん。これ得髓の面目なり、導利なるべし。不昧因果なり、儞我渠なるべし。 (中略)

2018-08-04 17:44:39
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

むかし、唐朝趙州眞際大師、こころをおこして發足行脚せしちなみにいふ、たとひ七歳なりとも、われよりも勝ならば、われ、かれにとふべし。たとひ百歳なりとも、われよりも劣ならば、われ、かれををしふべし。

2018-08-04 17:44:40
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

七歳に問法せんとき、老漢禮拜すべきなり。奇夷の志氣なり、古佛の心術なり。得道得法の比丘尼出世せるとき、求法參學の比丘僧、その會に投じて禮拜問法するは、參學勝躅なり。たとへば、渇に飮にあふがごとくなるべし。 (中略)

2018-08-04 17:44:42
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

見在大宋國の寺院に、比丘尼の掛搭せるが、もし得法の聲あれば、官家より尼寺の住持に補すべき詔をたまふには、即寺にて上堂す。住持以下衆、みな上參して立地聽法するに、問話も比丘僧なり、これ古來の規矩なり。

2018-08-04 17:44:42
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

得法せらんはすなはち一箇の眞箇なる古佛にてあれば、むかしのたれにて相見すべからず。かれわれをみるに、新條の特地に相接す。われかれをみるに、今日須入今日の相待なるべし。

2018-08-04 17:44:43
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

たとへば、正法眼藏を傳持せらん比丘尼は、四果支佛および三賢十聖もきたりて禮拜問法せんに、比丘尼この禮拜をうくべし。男兒なにをもてか貴ならん。虚空は虚空なり、四大は四大なり、五蘊は五蘊なり。女流も又かくのごとし、得道はいづれも得道す。

2018-08-04 17:44:43
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

ただし、いづれも得法を敬重すべし、男女を論ずることなかれ。これ佛道極妙の法則なり。 又、宋朝に居士といふは、未出家の士夫なり。庵居して夫婦そなはれるもあり、又孤獨潔白なるもあり。なほ塵勞稠林といひぬべし。

2018-08-04 17:44:44
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

しかあれども、あきらむるところあるは、雲衲霞袂あつまりて禮拜請益すること、出家の宗匠におなじ。たとひ女人なりとも、畜生なりとも、又しかあるべし。 佛法の道理いまだゆめにもみざらんは、たとひ百歳なる老比丘なりとも、得法の男女におよぶべきにあらず。うやまふべからず。

2018-08-04 17:44:44
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

ただ賓主の禮のみなり。佛法を修行し、佛法を道取せんは、たとひ七歳の女流なりとも、すなはち四衆の導師なり、衆生の慈父なり。たとへば龍女成佛のごとし。供養恭敬せんこと、佛如來にひとしかるべし。これすなはち佛道の古儀なり。しらず、單傳せざらんは、あはれむべし。

2018-08-04 17:44:45
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

(中略 ※以下は諸本で削除されている) 又、和漢の古今に、帝位にして女人あり。その國土、みなこの帝王の所領なり、人みなひの臣となる。これは、人をうやまふにあらず、位をうやまふなり。比丘尼も又その人をうやまふことは、むかしよりなし。ひとへに得法をうやまふなり。

2018-08-04 17:44:45
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

又、阿羅漢となれる比丘尼あるには、四果にしたがふ功徳みなきたる。功徳なほしたがふ、人天たれか四果の功徳よりもすぐれん。三界の諸天みなおよぶところにあらず、しかしながらすつるものとなる。諸天みなうやまふところなり。

2018-08-04 17:44:46
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

況や如來の正法を傳來し、菩薩の大心をおこさん、たれのうやまはざるかあらん。これをうやまはざらんは、おのれがをかしなり。おのれが無上菩提をうやまはざれば、謗法の愚癡なり。

2018-08-04 17:44:47
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

又わが國には、帝者のむすめ或は大臣のむすめの、后宮に準ずるあり、又皇后の院號せるあり。これら、かみをそれるあり、かみをそらざるあり。しかあるに、貪名愛利の比丘僧に似たる僧侶、この家門にわしるに、かうべをはきものにうたずと云ことなし。

2018-08-04 17:44:47
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

なほ主徒よりも劣なり、況やまた奴僕となりてとしをふるもおほし。あはれなるかな、小國邊地にうまれぬるに、如是の邪風ともしらざることは。天竺唐土にはいまだなし、我國にのみあり。悲しむべし、あながちに鬢髪をそりて如來の正法をやぶる、深重の罪業と云べし。

2018-08-04 17:44:47
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

これひとへに夢幻空花の世途をわするるによりて、女人の奴僕と繋縛せられたること、かなしむべし。いたづらなる世途のため、なほかくの如す。無上菩提のため、なんぞ得法のうやまふべきをうやまはざらん。これは法をおもくするこころざしあさく、法をもとむるこころざしあまねからざるゆゑなり。

2018-08-04 17:44:48
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

すでにたからをむさぼるとき、女人のたからにてあればうべからずとおもはず。法をもとめんときは、このこころざしにはすぐるべし。もししかあらば、草木牆壁も正法をほどこし、天地萬法も正法をあたふるなり。かならずしるべき道理なり。

2018-08-04 17:44:49
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

眞善知識にあふといへども、いまだこの志氣をたてて法をもとめざるときは、法水のうるほひかうぶらざるなり。審細に功夫すべし。 又、いま至愚のはなはだしき人おもふことは、女流は貪婬所對の境界にてありとおもふこころをあらためずしてこれをみる。佛子如是あるべからず。

2018-08-04 17:44:49
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

婬所對の境となりぬべしとていむことあらば、一切男子も又いむべきか。染汚の因縁となることは、男も境縁となる、女も境縁となる。非男非女も境縁となる、夢幻空花も境縁となる。あるいは水影を縁として非梵行あることありき、あるいは天日を縁として非梵行ありき。神も境となる、鬼も境となる。

2018-08-04 17:44:50
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

そのかぞへつくすべからず。八萬四千の境界ありと云ふ、これみなすつべきか、みるべからざるか。 律云、男二所、女三所、おなじくこれ波羅夷不共住。

2018-08-04 17:44:51
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

しかあれば、婬所對の境になりぬべしとてきらはば、一切の男子と女人と、たがひにあひきらうて、さらに得度の期あるべからず。この道理、子細に撿點すべし。 (中略 以下、けっこう有名な女人結界批判)

2018-08-04 17:44:51
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

又、日本國にひとつのわらひごとあり。いはゆる或は結界の地と稱じ、あるいは大乘の道場と稱じて、比丘尼女人等を來入せしめず。邪風ひさしくつたはれて、人わきまふることなし。稽古の人あらためず、博達の士もかんがふることなし。

2018-08-04 17:44:52
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

或は權者の所爲と稱じ、あるいは古先の遺風と號して、更に論ずることなき、笑はば人の腸も斷じぬべし。權者とはなに者ぞ。賢人か聖人か、神か鬼か、十聖か三賢か、等覺か妙覺か。又、ふるきをあらためざるべくは、生死流轉をばすつべからざるか。

2018-08-04 17:44:53
佐藤哲朗(nāgita) @naagita

いはんや大師釋尊、これ無上正等覺なり。あきらむべきは、ことごとくあきらむ。おこなふべきは、ことごとくこれをおこなふ。解脱すべきはみな解脱せり。いまのたれか、ほとりにもおよばん。しかあるに、在世の佛會に、みな比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷等の四衆あり。

2018-08-04 17:44:53