
宮澤賢治に感動して、いつか漫画に描いてみたい、と思ってた私に、担当が書き下ろし三冊という、ぶっ飛んだ企画を提案し、やる気になって打ち合わせをしてると、担当が言った「登場人物は全部、猫でな」。猫でジョバンニ?!。「ああ、お前、人間描くの下手だし、猫ならイケる」。だが、そのとき、②
2018-08-14 07:10:57
米沢生まれ、「銀河鉄道の夜」第四次《2巻目》《風呂猫》刊行で発売中。現在後編作画の日々。「ひかりの素足」「オツベルと象」ミキハウス「アタゴオル博物誌」「ヨネザアド幻想 」ヨネザアド・カタツムリ社・全国書店で注文可能です。連絡→ masumurahiroshi1952@gmail.com

②、そのとき、他の漫画家が私の好きな小説を漫画化したのを思い出した。それは風景も登場人物も、私のイメージから程遠く、ボロボロな代物だった。ジョバンニの顔は?と想像すると、実は賢治は、ほとんど顔の描写をしていない。髪の色も、目が細いのかも。猫か、私が猫でアタゴオルを描く源は賢治だ③
2018-08-14 07:18:13
ジョバンニの顔は、読んだ人のなかに、ぼんやりとあり、それは誰が描いてもイメージを壊す。いっそ猫なら、そうした意味での破壊は起こらない。猫で行くべし。と決めつつ、賢治の初期短文に「猫」というのがあり、そのなかに「猫は嫌です」というフレーズあり、「あとでもめるかも」と編集に言った。③
2018-08-14 07:23:59
④いざ、銀河鉄道を描きだすと、判らない用語や意味、多少の研究書は持ってたが手におえない。ここは賢治研究の先端、天沢教授に会うしかない、と編集に言うと、ずいぶんやる気があるじゃねえか、などと言う。こうして連絡し、教授の住む町の駅の喫茶店で相談に行った。問題は、初期形と最終形。⑤
2018-08-14 07:30:16
天沢さんは、喫茶店に沢山のコピーの束を持って登場、その束の厚さに、「ずいぶん、やる気が」と思いたくなるほど、親切に私の沢山の疑問に答えてくれ、最大の問題、「銀河鉄道の夜」の、初期と最終形。この二つの魅力、ところが私は100枚弱しかページがない。初期の黒い帽子男の絶景も捨てがたい⑥
2018-08-14 07:35:15
⑥結局最終形を描く決心をし、全部猫で描くと言うと、それも問題なしで、天沢さんは「私から宮澤清六さんにお手紙を出すから、お会いしなさい」と言われた。そこで担当編集と賢治の弟清六さんに会いに行った。賢治世界を猫で描くというと、「ほう、猫ですか」と言われ、「急いで描いてはいけません。⑦
2018-08-14 07:43:16
⑦ゆっくり納得するものを描いてください。」と言いながら、参考資料にと数冊の研究書をいただいた。何故猫で漫画を描いたのか、アタゴオルはイーハトーブから産まれたことなど、すっかり話して、そうして9月末に本が発売された。手応えは予想以上で、清六さんも喜ばれてあちこちに差し上げた。⑧
2018-08-14 07:49:20
⑧発売から2ヶ月くらいで、アニメ化する話が起こり、こちらは、そんなことより、「銀河鉄道の夜」を100枚弱で描いて、ますます何も描けてない、もっと謎を描きたい願望が湧き、アニメが決まったところで、編集に初期形を倍の枚数で描きたいと嘆願、受諾してもらった。そしたら、めんどうなことが⑨
2018-08-14 07:54:07
⑨清六さんが、猫でのアニメ化を止めてくれと言ってる。聞けば賢治研究家のなかに、何故猫なんだ、とか、賢治は猫が嫌いとか、清六さんが私の本を差し上げたことに文句言ってる者がいるらしい。へー、やっぱり「賢治は猫が嫌い」や「なぜ猫なんだ」が来たか。しかし、ここまでの時間軸見れば、⑩
2018-08-14 08:02:32
⑩時間軸を見れば、賢治研究の先鋭なる天沢教授も宮澤清六さんも猫で漫画を描くことは了解してくださったし、その後の第二弾、銀河鉄道の夜初期形を描くために、清六さんに再びお会いしても、漫画化は止めてくださいとは、ならなかった。だから私はアニメ化は二の次であり、初期形を描きたいだけなのだ
2018-08-14 08:08:46
⑪賢治研究家はたくさん居て、猫アニメ化を反対する人もいれば、私が是非お会いしたいと思ってた、科学系の斎藤文一教授は「猫のアニメはかまわない、問題は、銀河をどう描くか」と新潟の座敷で語るのを見て、むふむふ、さすがと感服した。猫アニメに反対する人に、説得できるのはお前しかいない、⑫
2018-08-14 08:19:30
⑫そうした研究家の方にお会いして、何故、霧にむせぶ夜を猫で描いたのか、アタゴオルは何故猫なのか、ジョバンニの顔は、カンパネルラの顔は、人で描いてもイメージを壊すことになる、などと私の説と道筋を説明し、研究家もそれなりに納得してもらった。こうして、最終的には猫アニメが公開された。⑬
2018-08-14 08:24:04
⑬、さて、「賢治は猫が嫌い」というのは、どの風説だろうか?。(詳しくはイーハトーブ乱入記)「猫の事務所」の猫たちを見る賢治の視線。なにより竈猫。かまどの中で泣くあの猫を、「嫌い」で書けると思うなら、書いてみればよい。つくづく賢治研究とは、おもしろく、深く、鮮度なことであります。
2018-08-14 08:29:13
⑭、注。反対されてる研究家の方に会ったのはひとりだけで、もちろん私の説明で、猫アニメ化が遂行されたわけではありません。アニメ制作の方々の様々な交渉によるものであります。それにしても、あれが人で描かれていたら、どんなものに成って歳月を味わっていただろう。
2018-08-14 08:34:00
ここから始まる一連のツイートが、宮沢賢治ファンの私には興味深い。 twitter.com/masumurahirosh…
2018-08-14 20:44:09
超読みごたえ… 原作も漫画版もアニメ映画版も、どれもすごく世界があって私は大好き。「霧にむせぶ夜」も強烈な印象で残ってる。 twitter.com/masumurahirosh…
2018-08-14 23:58:50猫で描くことについて

@masumurahiroshi 私は猫漫画&アニメで良かったと思っています。大昔読んだ本はどこか味気なく(宮沢作品がという意味では無く)、今思えばそれはやはり挿絵や自分の頭で思い描いた登場人物の顔がピンと来なかったからなのかと。 後に猫を飼い、アタゴオルに出会い、猫ジョバンニ達を読み、やっとピンと来た感じです。
2018-08-14 23:13:09
ますむら先生の、宮沢賢治作品、すごく好きなんだけど、やっぱり銀河鉄道の夜が一番好きだ。漫画版もアニメ版もどっちも好き。先生のおっしゃるとおり、人間でやると読者の心の中にいる登場人物をぶん殴ることになるだろうね。猫で良かったんだよ……ホント。>>RT
2018-08-15 10:25:27