【Schlacht_Musiker】路地裏【第二話】

山田あーる @R_gurei1639

「本日12時ごろW市市民プール付近にて失踪事件が発生しました。今回で4度目の失踪事件ですが被害者はいずれも2人以上の子供のいる父親で…」

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プツン

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「もう4人目か…」 先程まで見ていた夕方のニュースを消して、青年は椅子から立ち上がり部屋のカーテンを閉め地図を広げた。

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「1人目がスーパーの裏…2人目が教会付近…3人目が住宅街…4人目が市民プールの帰り…ってシュシュ、地図の上に乗っちゃダメじゃないか」

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自分は悪くないと自信ありげな表情でこちらを見てくるシャム猫はなかなか地図の上から退いてくれなかった。が、シュシュがずっと一点を見つめていることに気がついた。

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「もしかすると…！」 地図に記した四つの印とシャム猫が見つめる先を見て青年は何かに気づき、慌てて家を飛び出していった。

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「収穫ゼロか…」 丸一日少女の人形の姿の魔物の情報収集をしていたためくたびれてベンチに座って葡萄色の髪の男は休憩していた。不安げに路地をうろうろしている少年を見つけた。

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「どうしたんだい？」 「あのね…パパがね…プールの帰りに…アイス食べようって約束してたのに…いなくなっちゃったの…」

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ニュースで言っていた連続父親失踪事件の事ではないかと思い、少し探ろうと少年と話すことにした。 「君のおとうさんはどうやっていなくなったんだ？」

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「パパはね、一緒に話してた途中でね、後ろ向いたらね、いなくなっちゃったの…そしたらドレスの女の子のお人形さんがね…」 ドレスを着た少女の人形の話が思いがけないところから出てきて驚いた。

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「その人形はどんな姿だったかい！？」 すると少年は俯き加減に 「ごめんなさいお兄さん…僕そのあと倒れちゃったみたいでよく見てないんだ…パパ大丈夫かな…死んじゃってないかな…」 と申し訳なさげに答えた。

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一度深呼吸をして落ち着かせてから 「だーいじょうぶだってば。君のおとうさんは、ちょっと迷子になっちゃってるだけだから。そんな顔するより、笑ってたほうがいいよ。おとうさん帰ってきた時、にっこり笑顔で迎えられたら、嬉しいと思うんだけどなー？」 と少年の頭を撫でながら言うと、

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少年は元気を取り戻して笑顔で 「ありがとうお兄さん！じゃーねー！！」 と言って走って家路へ向かった。

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「さーて、この辺りでもう一度情報収集してみようかな」 ベンチから立ち上がり路地裏の方へと向かって行った。

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「うむ…うまいな…！」 ホイリゲにて1人ワインを飲む金髪の男性がいた。

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「そこの店員！もう一杯いいか？」 彼はワインのお代わりを要求した。

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そして、辺りをきょろきょろと見渡しながらポツリと 「この店、来たことあるような…」 と呟いた。

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彼は気がつかなかった。周囲の人々の大多数が彼のファンであることに…

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駅からなだらかな坂を20分ほど歩いて立ち止まりまた地図を広げ周囲を見渡した。 「確かこの辺りのはず」

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落ちかけた日の作る長い影と共にワイン居酒屋の先の裏路地へと進んで行った。

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クスクス 近くで少女の笑う声がした。 「後ろか！」 彼は素早く持っていた日傘を広げ反対の手で思い切り殴り飛ばした。

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ドガシャーン 音を立ててドレスを着た少女の人形は路地裏の行き止まりの方へと吹き飛んだ。